5点満点で評価すると ★★★★☆(4.5) 桐島より断然良かった。(笑)

人間の内面にひそむ飢えや欲望を多面的に描写した一級品のドラマと思う。
本作は『桐島、部活やるってよ』(2012年)で映画ファンの熱い支持をうけた吉田大八監督の作品。
今回の「紙の月」は角田光代のベストセラー小説の映画化。
ドラマ化もされたようだが、私は原作も読んでいないしドラマもみていない。
角田光代原作でNHKのTVドラマ化、そして映画化の作品としては2011年の『八日目の蝉』を思い出す。
どちらも物語の軸は犯罪。
誘拐と横領ではだいぶ違うが、何か事件がないと小説も映画も面白くするのは難しい。

【ストーリー】
バブルがはじけて間もない1994年。
梅澤梨花(宮沢りえ)は、郊外のマイホームでサラリーマンの夫(田辺誠一)と二人暮らし。
銀行の契約社員として働く梨花は綿密な仕事への取り組みや周囲への気配りが好意的に評価され、上司や顧客から信頼されるようになる。
一方私生活では自分を見下す夫との関係にむなしさを募らせていた。
そんなある夜、顧客の独居老人(石橋蓮司)の家で一度顔を合わせた大学生の光太(池松壮亮)と再会し不倫関係に陥っていく。。
外回りの帰り、衝動買いした化粧品の代金が不足して顧客からの預かり金に手を付けてしまう。
それをきかっけに、度々、預り金の横領に手を染めるようになり、学費に困る光太への援助や遊興費に浪費。
使えば使うほど金銭感覚が麻痺した梨花の横領額は歯止めがかからず、増加の一途を辿りやがては露見する運命にあった・・・

良かったのはキャラクターと構成。
もちろん東京国際映画祭で主演女優賞を受賞した宮沢りえの繊細な演技は光っていた。
が、原作には登場しないキャラクターの二人、隅と相川を演じた小林聡美と大島優子がよかった。
隅は厳格に仕事をこなす堅物で粛々と“あるべき道”を進むモラルの使者。
相川は天真爛漫に女の武器を利用して要領よく立ち回るちゃっかり者。
梨花の別人格ともいえる二人が事件を推進する役割をはたす。

原作通り梨花のまわりの人物が語る形で映画版を作成していたらたぶん感心しない作品になっていた。
ばっさりと形式を変え、隅や相川を登場させ銀行内で表現したのは大正解。
梨花に的を絞り銀行内部のディテールが深く掘り下げられていた。
(苦労もあったようだが)
監督らしい思い切った改変が功を奏していたと思う。
男優では、光太役に扮した平成版濡れ場男(笑)池松壮亮がよかった。
光太と梨花の微妙な表情による演技が絶妙。
ともするとリアリティがなくなりそうな芝居に説得力を生み出していた。

構成面では、時折挿入される梨花の学生時代の“寄付”の話と聖歌の使い方に感心。
聖歌一回目は中盤で光太が金を受け取り、梨花の中学時代の回想でキャンドルライトと共に流れる。
喫茶店のシーンで雨の御使いが最後にもう一回流れてオーバーラップする演出効果が抜群。
“寄付”の逸話は人間の偽善が活写され、観るものに問題提起を投げかける。
所詮、人間にとって一番大事なのは“自分の幸せ”であることは言を俟たない。
他人が幸福になろうが、不幸になろうが知ったことではない。
本当のところ世の中の実体は何なのかわからず、唯一、確かなのは自分の幸福感だけ。
そんな難しいことが言いたいわけではなかろうが(笑)ラストの突き抜けた梨花の姿に感動を覚えたのは確かである。

原作読んでないのでわからないが、映画化は大成功ではないかと思った。

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