「ラストマンー全盲の捜査官ー」最終回:バディになるべくしてなった二人の、知って“後悔”する過去
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福山雅治・大泉洋W主演の日曜劇場「ラストマンー全盲の捜査官ー」が2023年4月23日放送スタート。本作は、福山雅治演じる全盲のFBI特別捜査官・皆実広見が、大泉洋演じる人事課室長・護道心太朗とバディを組み、難事件を解決していくストーリー。永瀬廉、今田美桜、吉田羊らが共演。
本記事では、最終回をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
「ラストマンー全盲の捜査官ー」最終回レビュー
泉(永瀬廉)が生死の淵をさまようこととなった前回。なんとか一命をとりとめ、意識を回復させた彼の姿を見て、安心した視聴者も多いことだろう。最近は、主要人物だからといって生き残るとは限らないドラマも多いので、随分と肝を冷やしてしまった。さて、皆実(福山雅治)と護道(大泉洋)がバディを組むきっかけになったと言っても過言ではない“41年前の事件"。とうとう最終回にて、その全貌が明かされた。
なぜ護道の実父・鎌田(津田健次郎)は皆実の両親を殺してしまったのか。彼は、黒幕である弓塚(石橋蓮司)の手によって嵌められ、冤罪を着せられているだけなのではないか。だとしたら、皆実の両親を手にかけた真犯人は誰なのか?
まさに謎が謎を呼ぶなかで、皆実は吾妻(今田美桜)に頼み事をする。皆実の父・誠(要潤)と、鎌田(津田健次郎)の戸籍謄本を用意してほしい、と。その二人の戸籍謄本から、41年前の謎がすべて詳らかにされた。あまりにも悲しく、どこまでも切ない、一人の男が生涯をかけて貫いた信念と愛の結果だった。
もしかしたら、視聴者のうち何割かは、皆実と護道は“異父兄弟”ではないか、とあたりをつけていたかもしれない。しかし、両親が同じの、正真正銘の兄弟だという事実は予想外だったのではないだろうか。彼らは鎌田國士と妻・勢津子(相武紗季)から生まれた。将来、バディになるべくしてなる存在だったといえば、少々感傷的すぎるだろうか。
鎌田は勢津子を愛していた。それは、勢津子が働いていた旅館で誠に見初められ、嫁ぐことになっても尚変わらなかった。本妻ではなく妾として軽んじられていた勢津子は、産んだばかりの息子を連れて鎌田の元へ戻る。それが、悲しい事件の始まりだった。
広見は自分の子ではないかもしれない……。そう気付いたのは誠だった。その疑惑はどんどん大きくなっていき、やがて偏執めいた思いは妻と子への殺意へと繋がっていく。勢津子をペティナイフで殺してしまったのは誠で、その誠自身を手にかけたのは、彼に呼ばれて駆けつけていた若き護道清二(奥野瑛太)だった。
誠が拡げた事業は、もはや法スレスレでもなんでもなく立派に違法で、清二の力でさまざまな悪行を帳消しにしてもらわなければ立ち行かないレベルになっていた。清二を呼んだのも、勢津子を殺してしまった事実を隠蔽してもらうため。またもや脅され我慢ならなくなった清二は、誠を背後から殴打し、殺してしまう。
そのときすでに鎌田は、幼い広見とともに気を失ってリビングに倒れていた。清二は二人を玄関に避難させ、証拠書類を隠滅するために家に火を放つ。たまたま通りかかって鎌田と広見を助け出すよう指示を受けたのが、山藤(金田明夫)だ。
ここで大きな疑問がわく。なぜ鎌田は、自ら無実を主張しなかったのか?
それは、清二に脅しを受けたからだった。両親を亡くし、かつ事故により盲目となってしまった広見の将来のため、そして、心太朗を護道家で引き取って面倒を見てもらうため。鎌田自身が罪を被って、真実を胸に秘めていれば、少なくとも二人の息子の将来は保たれると獄内で説得されたのだ。
41年前、放火殺人の罪を着せられ、沈黙を保ったまま命を引き取ろうとした男。彼の根底にあったのは、どこまでも途切れることのない、家族への愛情だったのだ。
かつて、鎌田と勢津子、そして幼い兄弟という家族で食卓を囲んだ過去があった……。衝撃的な事実は大いに皆実たちの心を揺さぶる。命を閉じる間際に意識を取り戻した鎌田は、皆実と護道に向かって一言「腹、減ってないか?」とつぶやいた。お父さん、ごめんね、と涙とともに謝罪する大泉洋の演技に、泣かされた視聴者も多いのではないだろうか。
後半33分、CMなしのノンストップ放送は、没入感をもたらしてくれた。先日おこなわれた最終回試写のトークイベントにおいて、皆実を演じた福山雅治が「今の現代日本のドラマで、エンターテイメントの世界から何が届けられるのか、チャレンジと発明があった作品だと思います」と語っていたが、まさにその通りだった。
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いつか、皆実が護道に肉じゃがの味を教える、そして、護道が皆実にオムライスの味を教える……。そんな日がやってくるのだろうか。良いドラマを見届けたあとは、ついつい続編を希望してしまう。この「ラストマン」なら、仮に今年の秋クールあたりにシーズン2が決まったとしても驚かない。それほど、視聴者を魅了するドラマだったから。
(文:北村有)
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