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【2023GW】ゴールデンウィークに観たい日本映画“6選”


もういくつ寝るとゴールデンウィーク。みなさんは、どのような休暇を過ごす予定だろうか?

今回は、ゴールデンウィークに観たい日本映画6選について紹介していく。

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1本目:『サザエさん』


1969年10月5日より放送が始まった長谷川町子原作の長寿アニメ「サザエさん」。知らぬ者はいないであろう人気番組であるが、アニメ化以前に実写化されていたことをご存知だろうか?

サザエさんの実写版は13本も作られているが、ソフト化されておらず鑑賞が非常に難しい状況となっている。また、公開当時も年間の興行収入ベストテンに入ることはなく、キネマ旬報でも年間ベストに入れる選者は少なかった。唯一『サザエさんの脱線奥様』がキネマ旬報ベスト33位に選ばれる結果となる程に注目されていなかったのだ。

さらには、サザエさんの専門書や日本映画史関連の書籍でも、実写シリーズについて語られることほとんどない。そのため有名なタイトルな割に知名度が低い。しかし実は、ひっそりと各種配信サービスで観られる状態になっており、気軽に楽しめる環境が完成しているのである。

東宝版第1弾『サザエさん』は、今観ても色褪せることのない面白さがある。なんといっても、サザエさん役を演じた江利チエミの歌唱力が素晴らしい。冒頭、メキシコ酒場をモチーフにした舞台で彼女はスペイン語で陽気に歌う。しかし、いつの間にか「響けサンバ、恋の夜」と日本語に切り替わっているのだ。スペイン語のリズムを維持しながら、日本語で情緒豊かに歌うテクニックに魅了される。また、街中で「ビビディ・バビディ・ブー」を熱唱する場面もあり、ミュージカル映画として作られていることがわかる。

ストーリーは、雑誌社に勤めるサザエさんは早弁をしたり、クライアントを怒らせたりとドジを重ねた結果、クビとなり探偵会社へ転職するというもの。転職先では、親戚・ノリスケの行動を調査することになる。サザエさんは、スクリューボールコメディ(ドタバタコメディ)のヒロイン的役割を果たしており、彼女が引き起こす豪快な騒動が面白い。また、名優・仲代達矢がノリスケ役を演じている異色さも興味深い。

今こそ、実写版『サザエさん』再評価の時ではないだろうか。

【配信プラットフォーム】

2本目:『ゴルゴ13』


実写化映画の珍作といえば『ゴルゴ13』もオススメだ。さいとう・たかをの劇画漫画を『新幹線大爆破』の佐藤純彌が高倉健主演に映画化した作品で、最大の特徴は全編イランで撮影されているところにある。高倉健以外の登場人物が外国人俳優で、なおかつ彼らの演技に日本語吹き替えを付けているユニークな演出が特徴的な作品だ。

そしてハリウッド映画でも撮影は難しいだろう、世界遺産になる前のイスファハンのイマーム広場やペルセポリスがロケ地となっており、ここで激しい銃撃戦が行われるのである。

1960年代後半以降『殺しの烙印』『拳銃は俺のパスポート』などといった、スタイリッシュなガンアクション映画が日本で作られていた。『ゴルゴ13』も例外ではない。遺跡の中で義足から隠し銃を取り出す敵との早撃ち対決に光るものがある。ジェームズ・ボンド映画のような邦画に飢えた方、必見の作品だ。

【配信プラットフォーム】

3本目:『東京物語』


小津安二郎の不朽の名作『東京物語』。先日、タイムアウトワールドワイドが選ぶ「人生で観ておくべき、日本映画ベスト50」にて第3位に輝いた。本作は家族ドラマの側面で語られることが多いが、実はホラー映画としても秀逸である。

尾道に暮らす老夫婦は親戚に会うため、東京へ行く。少年たちは、老夫婦のせいで自分の空間が侵食されたことに腹を立てて露骨に嫌悪を示す。親たちは、申し訳ない態度を取りながらも裏では疎ましく思う。ゆったりとした時間の中に漂う不穏な空気が136分続く。少年以外ニコニコした顔の裏側に本心を隠しているところに不気味さを感じるのだが、小津安二郎は触れては欲しくない本心に踏み込む描写を唐突に入れてくる。

例えば、物語中盤。笠智衆演じるおじいさんが「そろそろ、帰ろうか」と語る場面がある。すると妻が「お父さん、もう帰りたいんじゃないんですか」とにこやかに本心を突いてくる。それに対して「お前が帰りたいんじゃろ」と返す。

互いに薄々、家族から疎まれていることに気づき、帰ろうとするが、本心を押しつけ合う。口喧嘩になりそうな場面にもかかわらず、満面の笑みを浮かべながらやり取りする様は、ホラー映画を観ているかのような不気味さを感じる。

そして、妻とみ(東山千栄子)の笑みを浮かべながら触れては欲しくない側面に踏み込んでいく行動は紀子(原節子)に波及していく。紀子は夫を戦争で亡くしてから、未亡人を貫き通している。そんな彼女に対して、執拗にとみは結婚を勧める。「わたし、勝手にこうしているの」とニコニコ返す紀子だが、とみが目線をずらした際に彼女の顔は曇る。この生々しいやり取りがあるからこそ、終盤に彼女が語るある言葉が鋭利なナイフとして、観る者の心に刺さる。

『東京物語』はシンプルでハートウォーミングな作品に見えて、実は人間のズルさをチクチクと刺してくる作品であり、自分の心を見透かされたかのような恐怖を与える作品となっているのだ。

このゴールデンウィークに「人生で観ておくべき、日本映画ベスト50」掲載作品を追いたい方にオススメのホラー映画である。

【配信プラットフォーム】

4本目:『座頭市喧嘩太鼓』



2023年9月に公開される『ジョン・ウィック:コンセクエンス』。本作はキアヌ・リーヴス演じるジョン・ウィックが様々な敵と戦う人気シリーズであるが、今回の敵は座頭市のような存在である。

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』で盲目のチアルートを演じたドニー・イェンが、本作でも盲目の剣豪として刺客を切り裂いていく。そんな彼の動きは『座頭市』シリーズの勝新太郎そのものであった。


『座頭市』シリーズは26作品作られており、海外でもリメイクされている。『ジョン・ウィック:コンセクエンス』公開に併せて、観るのであれば『座頭市喧嘩太鼓』がオススメだ。

三隅研次によるユーモアとユニークな演出が『ジョン・ウィック:コンセクエンス』に通じる。座頭市軍団が夜な夜な、目的地へ向かう場面がある。最初は、味方の方に杖を置き小走りで突き進んでいた座頭市。しかし、雲で月が隠れたことで真っ暗となり、困惑する味方たち。ここで、座頭市が「わたくしが役に立ちそうですよ」と、感覚だけで目的地へと導く。もはや目が見えているのではと思う程の軽快さで、ムカデ競争のような群れ運動を生み出す滑稽さがある。

終盤では暗闇の中、扉や柱、死角を使いながら、銃や剣による攻撃を交わして倒していくスタイリッシュなアクションが観られる。この塩梅が、まさしく『ジョン・ウィック:コンセクエンス』のドニー・イェンに継承されていたのである。

三隅研次監督は、障害物を使ったアクションやユーモラスなアクションを得意としており、他にも『子連れ狼 三途の川の乳母車』や『眠狂四郎 勝負』などで楽しむことができる。

5本目:『男はつらいよ 拝啓車寅次郎様』



1969年から50作品も作られている長寿シリーズ『男はつらいよ』。実は、第1作を観ると、渥美清演じる車寅次郎の自分勝手さに共感できず、苦手意識を持つ可能性がある。筆者自身、中学時代に1作目を観て苦手意識を持っていたものの、後にシリーズ全作品に触れて良さに気づいた過去がある。

そこで今回は、社会人1年目にオススメしたい『男はつらいよ』として第47作『男はつらいよ 拝啓車寅次郎様』を取り上げる。本作は、車寅次郎の親戚である満男(吉岡秀隆)が社会人になり挫折する物語。満男は靴会社の営業職になるが、仕事に行き詰まり愚痴を言う。すると、車寅次郎は「このペンを俺に売ってみろ」と勝負を仕掛け、仕事論を語ろうとするのだ。

この展開にピンと来る方は少なくないだろう。



『ウルフ・オブ・ウォールストリート』にてレオナルド・ディカプリオ演じるジョーダン・ベルフォートが「このペンを俺に売れ」と語る場面を思い浮かべたであろう。その約20年前に渥美清が同じことをしていた点が面白い。

社会という大海原へ飛び出し、右も左も分からぬまま失敗を繰り返し、気分が落ち込みそうになるこの季節。五月病の季節に本作を観ると元気になること間違いなしだ。

【配信プラットフォーム】

6本目:『自由学校(松竹版)』


ところで、「ゴールデンウィーク」が映画業界用語であることをご存知だろうか?

1951年5月に松竹と大映が、獅子文六原作の『自由学校』を映画化し公開した。どちらも映画化を譲らず、同じ時期に公開する状況となったが、両作とも興行成績が良かった。映画業界は宣伝もかねて5月を“ゴールデンウィーク”と呼び始め、定着していった言葉である。

松竹版は『ゴジラ』のテーマで知られている伊福部昭が音楽を手がけている。東京通信社で働いていた南村五百助は自由を求めて会社を辞め、家出してしまう。その過程で戸籍を失った元軍人と出会い、変わりゆく戦後日本と向き合うことになる。

「風船爆弾のように主体性がない」といった独特な台詞回しが特徴的なコメディ作品であるが、ダークな皮肉が込められている。実際に、元軍人は賭博場が立ち並び、不良に溢れる街に対して苦言を呈する場面がある。彼は戸籍を失い自由になったと言うが、社会に適応できず過去に囚われた存在であることが明らかになる皮肉がピリッと辛い。

黒澤明『生きる』と一緒に観ると、戦争を生き抜いた者が社会の変化についていけず亡霊のように彷徨いながらアイデンティティを求めていく戦後日本における燃え尽き症候群の様子が垣間見える作品といえる。

【関連記事】<考察>『生きる LIVING』を読み解く“3つ”の視点

(文:CHE BUNBUN)

参考資料

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