あと20年はホラーをやりたい―映画『劇場霊』ティーチインイベントレポ
中田秀夫韓屋「あと20年はホラーをやりたい」
ティーチインの終盤では、会場に集った観客のみなさんから質問を受け付けることに。率直な質問に、ここからさらにトークが白熱する展開になりました。中でも、中田秀夫監督作品は女優霊からずっとみているというファンの方からの質問では、中田秀夫監督、そして三宅隆太さんの本作にかけた挑戦と情熱が語られました。
質問者:
少し失礼な質問かもしれませんが、リングなどと比較して、中田監督の演出方法が変わったかなと思うんです。最近向けというか、ちょっと怖さを抑えた見やすいホラーになったのかなと思うのですが。以前、ホラー監督が本気でお客さんを怖がらさせようとして作品を作ると、怖すぎて公開できないと聞いたことがあって、そういった理由なんでしょうか。
監督:
やっぱりホラー映画の最大の目標は「怖い」と言われることなんです。『女優霊』から20年ということで、比べる人も多いんですが、『女優霊』は公開した直後は注目されていなくて「怖い」とも言われなかったんですよね。作り手の努力を分かってくれというのもいけないと思うのですが、作る側としては、同じことを繰り返すのはお客さんに失礼じゃないかなと思っちゃうんです。でも、お客さんは『リング』のような作品を観たいとも言う。『リング』と同じじゃないかと言われるのも悔しいし、比べて怖くないと言われるのも悔しい。そこをどう開拓していくか、それがある意味チャレンジだったんです。
実態のある人形がいかに怖くみせられるか、人形を動かしたりするなかで、女優さんに演じてもらったところなんかは、敢えてチャレンジでやったことでした。僕、今回『劇場霊』をやって、あと20年はホラーをやりたいなと思ったので、もっと新しい怖いを見つけて、またお届けできるように頑張りたいと思います。
三宅:
この映画のスピンオフドラマを今やっていて、僕も1作品監督をさせていただいんたんです。それを観終わった監督から「超怖かった」と可愛いメールが送られてきたんですね。これを言える人ってあんまりいないんです。
映画って人が作っているんですよね。で、人っていい意味でも悪い意味でも変わるんです。その時のその人がいかに届けられるかが大事だと思っています。僕は『女優霊』の中田さんと仕事をするのじゃなくて、今の中田さんと向き合いたいと思うんです。監督と脚本家の関係って、夫婦だとか宿敵だとか例えられますが、僕は中田さんとの関係を、潜水艦の艦長と副長だと思っています。監督の作戦に絶対ついていいく、周りの人が何を言おうと全面的に中田さんの味方だと。
Jホラーのくくりを外してみましょうと言ったのは僕です。なのでJホラー的なものを期待して責められるとしたら、責められるべきは僕だと思います。でも、中田さんが今作りたいものを作りましょうと言って、作りました。当然迷う時は迷っていいと思うんです。僕はそれにとことん付き合う。一緒に今の2015年の中田監督の新作ホラーを出しましょうといって完成したのがこれでした。
女優霊を観た時は学生でした。中田秀夫のファンでした。その監督が「超怖い」って言ってくれる。こんなに嬉しいことは無かったですね。僕は、中田さんが呼んでくれるんだったら、これからもずっと一緒にホラー映画を作っていきたいと思います。そしてそれが、その年のお客さんの感情とリンクするといいなと思っています。
しっかりと記憶してもらいたい
監督のサインが欲しいとの質問にも「この後ロビーでサインします」と快諾してくれた中田監督。最後にそれぞれから締めくくりの挨拶が行われました。
三宅:
『劇場霊』という作品は、いわゆるJホラーとは異なる作品に仕上がっていると思います。しかしながら、2015年にこういう作品を我々チームが届けたいとの思いがつまっています。作り手の都合かもしれませんが、何か少しでも同調していただけるものがあれば、楽しんでいただきたいなと思います。
監督:
先ほど、楳図かずおさんのホラー漫画を思い出したと言ってくださった方がいましたが、すごい嬉しかった。三宅さんとは、ずっと前に脚本作りをするときにもそういう話をしていたんです。『呪怨』の清水崇さんもそう言ってくれたし、小中千昭さんも怪奇映画で『血を吸う人形』を思い出したと言ってくれた。クラッシックな匂いが強い映画だと思います。またこんなの放り込んできたぞっていうのもお見せすることがあると思うので、この映画もしっかりと記憶してもらって、そしてもしよければご家族や友人に薦めてくださればありがたいです。
今もなお、挑戦を続ける中田秀夫監督の最新作『劇場霊』は、現在大ヒット公開中。
(C)2015『劇場霊』製作委員会
(取材・文/黒宮丈治)
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