長年親しまれる時代劇づくりの現場、京都の松竹撮影所はこんなところ
必殺シリーズや、『鬼平犯科帳』、『剣客商売』など、長く親しまれている時代劇。時代劇に馴染みがなくても、「タイトルなら聞いたことがある!」と感じる人は多いのではないでしょうか。これらは京都の松竹撮影所で撮影された作品です。
ぜひ、その裏側を知りたい!と思い、京都にある松竹撮影所へお伺いしてきました。
今回は、撮影所内にあるオープンセットを中心に、どんな場所で撮影が行われているのか、どんな工夫がなされているのかご紹介します。
東京にも多数のスタジオがありますが、京都は寺社が豊富でロケが敢行しやすいこともあり、時代劇を中心に映像作品を製作します。
映像では、ずーっと続いている家や街並みの一角での出来事のように感じられるのですが、実際のオープンセットは、映像でイメージするよりずっと限られた範囲のもので、しかも何気なく存在していたので驚きました。
オープンセットは、スタジオのように室内にあるわけではないのでそれぞれのシーンに合わせた時間に撮影する必要があります。そのため、雨が降ると、急に撮影がおやすみになったり、予定が入れ替わることも少なくないそうです。
お伺いした日にも、オープンセットでの撮影が予定されていたのですが、お昼から雨予報だったため、スタジオ撮影に切り替わっていました。
多くは基本的に固定されていて、取り壊したり動かしたりできない家も多いのですが、作品に合わせて、街並みや雰囲気を変えるために、車輪がついているものがいくつかありました。
移動させることで通りを変えたり、道幅を変えることでその時代や世情に合った場面がつくりだせるようになっています。
戦国時代から江戸時代にかけておもに町人が住んでいたとされている、壁で仕切って多くの人が住める「長屋(ながや)」も再現されています。
すぐそばにあった井戸は、底がすぐ見える状態です。
実際に深いところから水をくんでいるように見えるのは、役者さんの演技!
欄干を走ったり、飛び越えて川に飛び込んだりするシーンがイメージできる橋も、映像で見るより小さく、狭いものでした。
実際にここで殺陣をやったり、川に飛び込んだりするそうです。
橋の奥にある建物は、実際には奥行きがなく、壁一枚のものもあります。合間を埋めるようにして植えられている木は、撮影所の外が見えないように隠すための工夫でもあるのだとか。
松竹撮影所を一歩出ると、住宅やコンビニが立ち並ぶ現代の街なので、それらが見えて映像の情景が崩れてしまわないようにしているようです。
すぐそばにはスタジオ(No3と書いてある建物です)もあって、いかにも撮影所らしいですね!
他にも、メイク室や衣装室も見せていただきました。
ビニールで覆われているところにはカツラがずらーっと並べられています。
武士や町人など階層によって髪型が変わるので、長さや結ったときの髪のふくらみなどが違うカツラが置いてありました。
作品ごとに使用する衣装が並べられており、それぞれ色合いや柄も豊富です。作品の場面によって汚れた服を着る場合には、端切れを継ぎ接ぎしたり、醤油で汚れをつけたりするのだそうです。
さらに、生効果音室というのがあります。
ここは効果音を作成したり録音するための場所で下駄や草履によって違う足音を再現しています。
足音の違いを出すために、地面の素材や履き物にもこだわって効果音を作ります。
他にも、道具がズラリ。
普段、効果音を意識して作品を見ていなかったので、どれがどこに当てはまる音なのかさっぱりわかりませんでしたが、刀の種類、皮やヒモまで種類が豊富にあるようでした。
そして、京都の松竹撮影所では、俳優養成の一貫として、主に時代劇の所作や演技を教わる「K.Sアクターズスクール」が開講されています。生徒の約半数が10代、20代で、時代劇を学びたい、俳優になりたいと考えている若者が学んでいるようです。
歩きかただけでも、プロとアマチュアでは大きな違いが出るそうで、小さな動作からその時代らしさを出すためにも訓練や鍛錬が必要だと言います。
これからもより多くの時代劇を製作し、それらが長く受け継がれるために、技術の継承は欠かせません。
実際に撮影所を訪れてみて、一見、現代的な建物のなかに、「昔っぽい!」と感じるオープンセットやスタジオがあったのは不思議な感覚でした。
とはいえ、私がオープンセットを歩いてみても戦国時代にも江戸時代にもタイムスリップした気分にはなれなかったので(笑)、映像で見る世界観は、役者の方をはじめ細部にまでこだわることによって創り出された賜物だと実感しました。
歴史に苦手意識があったり、昔の話だからと敬遠している部分がある方も、「このシーンは松竹撮影所のあの場所で撮ったのかも、こんな工夫がされていたのかも!」と思いながら見ると楽しいかもしれません!
時代劇と一口に言っても、史実に沿って作られた作品からエンターテイメント性の強いものまでさまざまなので、ぜひこの機会に時代劇に触れてみてはいかがでしょうか。
(取材:kamito努)
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