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2016年01月29日

4DX全国上映も決定 盛り上がり続けるガルパン旋風!

4DX全国上映も決定 盛り上がり続けるガルパン旋風!



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(C)GIRLS und PANZER Film Projekt



映画ファン垂涎!
過去の映画群へのオマージュ


また、映画ファンに強く訴えておきたいのは、本シリーズが映画的オマージュがたっぷり詰め込まれた作品になっていることです。

TVシリーズの段階で、既にウィリアム・フリードキン監督によるリメイク版『恐怖の報酬』(77)や『戦略大作戦』(70)『八甲田山』(77)『レマゲン鉄橋』(69)などなどを用いた仕掛けがあちこち見られましたが、単に作り手の映画ヲタク的自己満足で終わってしまうことが往々にしてある映画オマージュの罠に落ちることなく、すべてがドラマにきちんと機能し得ているのは驚くばかり。

劇場版も『西部戦線異状なし』(30)『戦争と人間』(70~73)『ビルマの竪琴』(56or85)『ヨーロッパの解放』(70~72)『バルジ大作戦』(65)『二百三高地』(80)などの戦争映画はもとより、『ジェット・ローラー・コースター』(77)『シャイニング』(81)などの要素も見つけられますし、さらには時代劇や西部劇、マカロニウエスタンなどジャンルとしてのオマージュも多数。SFテレビ・シリーズ『ミステリー・ゾーン』(59~64)もどきのロゴも登場します。

そしてなんといっても劇場版の白眉は、スティーヴン・スピルバーグ監督の『1941』(79)からの映画的引用で、それが何であるかは実際に見ていただくとして、『1941』こそはスピルバーグやジョン・ミリアス、ロバート・ゼメキスなどそうそうたる映画人たちが、ただ単に戦争ごっこをやりたいがためにおよそ70億円もの巨費を投じた戦争コメディ超大作で、当時は評論家から袋叩きにあった作品でしたが(おそらくスピルバーグとしても黒歴史かも⁉)、よくよく見ると『1941』は登場人物が誰も死なないという、戦争映画として画期的内容で、それは戦車試合で誰も死なないガルパン・ワールドとも大いに呼応しあうものがあるのです。

つまりガルパンは『1941』魂に裏付けられたシリーズでもあり、劇場版はその事実を露にしてくれているのです。実はスピルバーグ作品で『1941』が一番好きな私としましては、そのオマージュによってクライマックスの画期的シーンのひとつを構築した劇場版に涙せずにはいられませんでした。

それ以外にも、劇場版初登場の継続高校(ネーミングは継続戦争から採用)の隊長ミカの飄々とした哲学的キャラクターは、フィンランドが生んだ『ムーミン』のスナフキンであることは一目瞭然で、一方で知波単学園が完全に日本軍の欠点を露にしているあたりも妙味(要は突撃することしか考えていない!)
劇場版初登場の生真面目ユニーク美女・西隊長が「吶喊」と叫ぶたび、岡本喜八監督の同名名作映画(75)が脳裏をよぎります。

およそ2時間の上映時間の中で何と1時間半が試合シーン(前半30分と後半1時間)という大胆な構成もさながら、戦車の機能性をフルに生かしながら次々と見せ場を構築していく手腕は、エンタメに未だ不得手な実写畑の映画人こそ見倣っていただきたいほど優れたものがあります。

特に後半のめくるめく展開は、巷でずっとファンの間で囁かれ続けている「ガルパンはいいぞ」としか言えなくなるほどに(いや、そうとしか言いようのない)、秀逸な仕上がりとなっています。

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(C)GIRLS und PANZER Film Projekt



才人・水島努監督の
並々ならぬ力量!


監督の水島努についても記しておきます。1965年生まれの彼は、86年にシンエイ動画に入社し、91年のTV『美味しんぼ』第120話で初演出。94年以降は『クレヨンしんちゃん』シリーズに参加するようになり、99年の短編『クレしんパラダイス!メイドイン埼玉』で映画初監督。そして『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』(01)『同 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』(02)などの絵コンテ&演出を担当し、シリーズ一狂っていると評判の『嵐を呼ぶ 栄光のヤキニクロード』(03)や西部劇のオマージュたっぷりの『嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』(04)を監督&脚本。

TVシリーズでは『×××HOLiC』(06)『おおきくふりかぶって』(07)『侵略!イカ娘』(10)『よんでますよ、アザゼルさん』(11)『SHIROBAKO』(14~15)『監獄学園』(15)などなど明朗なものからミステリにコメディ、エロ&グロなものまで多彩な作品群を担当する才人で、13年には第18回アニメーション神戸賞・個人賞を受賞しています。

学生時代は山崎貴などとともに自主映画を手掛けていたとのことで、映画に関する知識も相当なものであることはガルパンを見ればおわかりかと思いますが、こういった才能の持ち主はアニメ業界だけでなく映画業界ももっと注目してしかるべきでしょう。

最後に、ガルパンの舞台のモデルとなった茨城県大洗町は、いわゆる聖地巡礼効果で現在大変な賑わいを見せていますが、東日本大震災で大きな被害を受け、復興に苦労していた折、ガルパンとのタイアップが町の活性化につながったことも特筆すべき事象です。

まだまだ書き足りないところは多々ありますが、とりあえず今回はこんなところで。

でも、要は一言でよいのです。

「ガルパンはいいぞ」

■「キネマニア共和国」の連載をもっと読みたい方は、こちら

(文:増當竜也)

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