映画コラム

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2016年04月29日

圧倒的なサウンドの世界、『レヴェナント 蘇りし者』坂本龍一の存在感

圧倒的なサウンドの世界、『レヴェナント 蘇りし者』坂本龍一の存在感

■「映画音楽の世界」

みなさん、こんにちは。

先週末より映画『レヴェナント 蘇りし者』の公開が始まりました。

レヴェナント:蘇えりし者


(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation.  All Rights Reserved.


今年2月に発表された米アカデミー賞では、主演のレオナルド・ディカプリオが悲願の主演男優賞を受賞し、監督のアレハンドロ・G・イニャリトゥが前年の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)に続き二年連続で監督賞を、撮影のエマニュエル・ルベツキは『ゼロ・グラビティ』、バードマン、そして本作と、史上初となる三年連続での撮影賞を受賞し大きな話題となりました。

そんな評価の高い映画ですが、その音楽を坂本龍一氏が担当したことも日本では大きく取り上げられました。

今回の「映画音楽の世界」は、『レヴェナント 蘇りし者』の音楽に迫ってみたいと思います。

映画音楽作曲家としての坂本龍一


YMO時代からいくつものアルバムを発表し、また、他アーティストへの楽曲提供を行ってきた坂本龍一氏には、映画音楽作曲家としての顔もあります。以前にも紹介したように、大島渚監督作品の『戦場のメリー・クリスマス』を皮切りに邦画・海外作品まで幅広く手掛け、ベルナルド・ベルトルッチ監督の『ラスト・エンペラー』では日本人作曲家として初めて、そして現在もただ一人のアカデミー作曲賞を受賞したアーティストでもあります。

そもそも、ハリウッドの大作・話題作に日本人作曲家が起用されるのは非常に稀で、なおかつその作品がアカデミー賞に多くノミネートされるような映画となるとそれだけでも名誉なこと。イニャリトゥ監督は坂本龍一ファンを公言していて、以前にも自身が手掛けた『バベル』でも坂本龍一氏の楽曲を作品内で使用していましたが、今回『レヴェナント 蘇りし者』で完全なる初タッグが実現したことになります。

映像美とともに魅せる、目くるめく坂本ワールド


イニャリトゥ監督にとってはアカデミー監督賞受賞後の初作品であり、坂本龍一氏にとっても咽頭がん治療の休養から復帰しての初作品となった本作。前述のように記録づくめのオスカー獲得という評価を携えて、日本でもいよいよ公開が始まりました。

西部開拓時代を背景に、グリズリーの襲撃を受け瀕死の重傷を負った上に仲間の裏切りに遭い息子を殺害されたヒュー・グラスの伝記を、圧倒的な映像美とともに描き、同じように音楽も叙情的に、あるいは詩的に全編を覆っています。

極力メロディを排して、風景に溶け込むような効果音に近い側面もありますが、それでも随所に坂本龍一氏らしいストリングスの響きがあり、同時に電子楽器のノイジーな表情も見せ、坂本龍一氏の本作における映画の見方、主人公ヒュー・グラスとの向き合い方が垣間見えるような作りになっています。

ハリウッド作品ともなると日本とは桁の違う予算が映画に充てられますが、坂本龍一氏は大掛かりなオーケストレーションは采配せず、あえてシンプルな編成で挑みながらも音楽そのものが見せる世界観を強みに、ファイナルバトルではタップを取り込むなど実験的とも思えるような作曲を披露して見せました。本作の魅力の一つに音楽があることは間違いありません。

まとめ


サウンドトラックは現在、輸入盤、国内盤ともに発売中。ジャケットを開くと撮影監督のエマニュエル・ルベツキが収めたフォトが各面に使用され、映画の静謐感をそのまま切り取ったようなショットが実に印象的なパッケージデザインとなっています。

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映画同様、音楽も評価の高い『レヴェナント 蘇りし者』。坂本龍一氏は最新のインタビューでタイトルはまだ公表できないもののこのあと新作映画を二本手掛けることが既に決定しているとのこと。精力的な展開を見せる坂本龍一ワールド。この先の到達点が楽しみでもあります。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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(文:葦見川和哉)

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