不倫はゲスじゃない?ふつうのあなたが一線を越えてしまう瞬間
(C)2014「紙の月」製作委員会
不倫は単純な裏切り行為なのか?
今年の芸能界はいつになく不倫騒動が続いていますが、映画やドラマにおいても、不倫は時代や形を変えながら描かれ続ける普遍的な恋愛テーマでもあります。
そもそも人は、なぜ不倫をするのでしょう?
パートナーへの愛が消えたから?肉欲が強いから?ゲスいから?そんな単純な裏切り行為だけなんでしょうか?
宮沢りえが不倫から巨額横領をしてしまう銀行員を演じた『紙の月』を見ていると、とてもそれだけとは思えなくなってきます。
そこで今回は、不倫に走ってしまいやすい女性について迫ってみます。
竜さんの「大切なことは全部映画が教えてくれた」
美しいが地味で平凡な女性銀行員(宮沢りえ)が不倫に手を出してしまったのは、ほんのちょっとしたきっかけ。
イケメンでやさしい旦那さん(田辺誠一)は、仕事を優先することが多かったけど、ときには高価で素敵なプレゼントをしてくれるような、平凡で幸せな夫婦のはずだったんです。
小さな偶然やタイミングが重なった結果、彼女は年下の純朴な青年に惹かれ、ホテルに行ってしまいます。そこでやめておけばよかったのに、彼女はなぜ何度も逢瀬を重ね、恋人のために巨額の横領を重ねたのか。
いつもガマンしている女性が壊れていく瞬間
不倫に走ってしまう女性の多くは、世間の常識やルールをきちんと守る「がんばり屋」だと言われています。
性に奔放でゲスい女性ではなく、むしろいつも他人のために一生懸命がんばって、ガマンを重ねている女性が、あるきっかけで壊れてしまう。
人に甘えられず、自分だけでがんばろうとしてしまう。
他人の期待に答えなければいけないという気持ちが強い。
旦那さんや家族、職場の同僚など、いつも自分より他人を優先してしまう。
そういう、一見よくできた女性のほうが危ないんですね。
たしかに本当にゲスい女性だったら、不倫なんてリスキーで面倒なことはせず、もっとワガママに自由に生きて、とっくに離婚してるかもしれません。
また本作の彼女は、誰かに与えられるより、誰かに与えることにのみ真の喜びを感じる女性でした。だから稼ぎもよくやさしい旦那さんよりも、自分を頼ってくれる年下の青年に執着してしまった。
そこにも、肉欲的な衝動ではなく、「本当に必要としてくれる」「愛されたい」という強い想いが色濃く見えます。
もちろん不倫は道徳的にも褒められた行為ではありません。常に誰かが傷つく哀しい結末につながっています。
けれど本作を見ていると、壊れてしまったあげくに、他人を傷つけてでも自分に正直に生きようとする女性の、清々しいまでのしたたかさに、思わず考えこんでしまうのです。
本当の幸せって何だろう?……と。傷つかないように自分を抑えてガマンして生きていくのか、傷つけ傷ついても正直に生きていくのか。
週刊誌やワイドショーのように「不倫はゲスい!」と糾弾するのはたやすいけれど、インモラル(不道徳)から大切なことを学べることも映画の魅力の一つです。
いつもの毎日に疲れたら、あるいはちょっと魔が差しそうになったら、『紙の月』を見て、自分がガマンしすぎてやいないか考えてみるのもいいかもしれませんね。
(文:茅ヶ崎の竜さん)
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