映画コラム

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2016年10月08日

静のチャラ源への「大きな借り」って何?「SCOOP!」は裏設定が面白い!

静のチャラ源への「大きな借り」って何?「SCOOP!」は裏設定が面白い!

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(C)2016「SCOOP!」製作委員会


福山雅治&二階堂ふみの共演でも話題の映画「SCOOP!」が、先週末から遂に劇場公開された。監督・脚本に「バクマン。」や「モテキ」の大根仁監督を迎え、主演の二人以外にも魅力的な脇役が結集!福山雅治が普段のイメージとはかけ離れたキャラクターを演じることで、公開前からすでに映画ファンの間では期待値が高かった作品だけに、今回はさっそく初日夜の回で鑑賞してきた。
大根監督が高校時代に見て感銘を受けた、1985年製作の原田眞人監督・脚本によるTVドラマ「盗写1/250秒」を原作とする

本作は、監督自身が長年温めていた企画であり、登場人物の名前や基本設定などは、ほぼ原作ドラマに忠実に作られている。
主演の福山雅治は、普段のイメージを完全に覆す、ワイルドでダーティな主人公を演じるため、クランクインの一ヶ月前から映画の衣装のまま生活していたとか。更には撮影期間中も、現場に行く時はもちろん撮影終了後も着替えずに衣装のまま帰るという徹底振りだったそうだ。

映画に対する真剣度が凄すぎるこの二人が、初めて組んだ映画「SCOOP!」!果たしてその出来はどうだったのか?

ストーリー


かつて数々の伝説的スクープをモノにしてきた凄腕カメラマン・都城静(福山雅治)。しかし、過去のある出来事をきっかけに、報道写真への情熱を失ってしまった静は、今では芸能スキャンダル専門の中年パパラッチとして、借金や酒にまみれた自堕落な生活を送っていた。

そんな彼に訪れた運命の出会い。ひょんなことから写真週刊誌「SCOOP!」に配属されたばかりの新人記者・行川野火(二階堂ふみ)とコンビを組まされる羽目になってしまったのである。全く意見が合わずケンカばかりの二人だったが、次第に名コンビ振りを発揮するようになり、数々の独占スクープを連発!「SCOOP!」の部数も飛躍的に伸びることに。そんな中、日本中が注目する連続殺人事件を「SCOOP!」でも追うことになったのだが・・・。

決定的瞬間を逃さない、凄腕盗撮テクニックの数々!


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(C)2016「SCOOP!」製作委員会


主人公が芸能スキャンダル専門のパパラッチなだけに、ターゲットの芸能人への張り込み・追跡などのテクニックや、隠し撮りの裏技など、実生活に役立つ?情報が盛りだくさんの本作。相手が芸能人や有名人とはいえ、その違法行為スレスレの撮影テクニックには、「ああ、本当の写真週刊誌も、こんなに苦労して撮ってるんだろうな」、と感心するやら呆れるやら。

中でもラストに展開する、現場検証に現れた殺人犯の厳重な警備を、いかに突破して犯人の顔写真を撮るか?という奇抜な作戦と、果たして成功するかどうかの緊張感は、本作最大の見所となっているので、お楽しみに。

更にもう一つ、国会議員と人気女子アナの密会現場スクープを抑えて、車で逃げるシーンでのカーチェイスの凄さと言ったら!
昨年の「劇場版/MOZU」のカーチェイスも凄かったが、アクション映画では無い本作で、国会議事堂をバックにこれほどの激しいカーチェイスを見せてくれるとは、正直全く予想していなかったので驚いた!

ただし、さすがに国会議員のSPが乗る車に対して打ち上げ花火を発射するのは、かなり犯罪行為ギリギリだと思うが、ひょっとしたら自分がパパラッチに狙われた時に役に立つかもしれないので、このシーン是非お見逃しなく!

もはや主役?リリーフランキーの存在感!と、描ききれなかった裏設定!


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(C)2016「SCOOP!」製作委員会


その登場シーンから衝撃のラストまで、全編通して観客の眼を引き付けて離さないのが、リリー・フランキー演じる情報屋「チャラ源」の強烈なキャラクターと存在感だ。前半の頼りなさそうな雰囲気を完全に覆す、後半〜ラストに向けての暴走っぷりは、もはや主役と言っていいのではないか。

ただ、本作では登場人物の過去や、その人間関係が深く描かれることがないため、「君の名は。」の様に映画鑑賞後の自己補完が必要なのも事実。実はこの点が、映画全体の乾いた雰囲気と客観的な視点に上手く作用しているのだが、その分「細かい部分が良く判らない」との感想を持つ観客も多かったようだ。実際、ネットなどでのユーザー評価が見事に賛否両論に分かれているのも、その証明と言えるだろう。

福山雅治と吉田羊の過去の関係とか、最後に渡した1万円の意味など、本作の謎は数々あるのだが、中でも最大の疑問は、「チャラ源」と主人公の間に過去に何があったのか、大きな借りとは何か?この部分に尽きる。

では、皆が気になるこの部分を、簡単に説明しておこう。

昔プロボクサーで引退後に情報屋を始めたチャラ源と、ボクシングファンで現役時代から彼を知っていた静。静がまだ定子と組んで取材をしていた時代に出会った二人は、その後コンビを組んで数々のスクープを物にしていった。

ところが、ある大物政治家の犯罪を暴いて「SCOOP!」に掲載した際の二人の違法な監禁行為により、静は解雇、チャラ源は塀の中に入ることに。ところがチャラ源は静のことは一切黙秘したまま、自分一人で罪を被って服役した。これが本編中で静が言っていた、「チャラ源には、大きな借りがある」の理由だ。

本来は映画の中でもこの部分を描く予定があったようだが、残念ながら諸事情により実現しなかったとのこと。

実は、映画の中では描かれなかった、静とチャラ源の過去のエピソードについては、こちらの特集雑誌にもっと詳しく書かれているので、気になった方は是非読んで確かめてみては?

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個性的な脇役たちと、大根監督一流の「遊び心」にも注目!


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(C)2016「SCOOP!」製作委員会


前述したリリー・フランキー以外にも、滝藤賢一や吉田羊をはじめ、様々な個性的脇役が登場する本作。中でもオススメ鑑賞ポイントは、意外な映画監督の登場シーンだ。「シン・ゴジラ」でも見事な演技を見せた塚本晋也監督の出演シーンは、皆さん気が付いたと思うが、個人的にツボだったのが、松居大悟監督の出演シーン。SCOOP編集部の編集者として登場する松居監督は、結構セリフもある役なので目立つのだが、実は今回の役名が「田中」なのだ!これは絶対に松居大悟監督の商業映画デビュー作品「アフロ田中」から取ってるとしか思えない。

そういえば、二階堂ふみの役名である「野火」も、塚本晋也監督の映画から取ったのか?と思ったら、残念ながらこちらは原作ドラマ「盗写1/250秒」でも同じ役名だったと判明。この他にも、大根監督ならではの遊びが随所に散りばめられているので、是非ご自分の眼で探して頂ければと思う。

最後に


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(C)2016「SCOOP!」製作委員会


福山雅治が今までにないキャラクターに挑んだ本作は、ロバート・キャパに憧れてカメラマンになった主人公が、芸能スキャンダル専門のパパラッチという、彼にとっての「戦場」に身を置くことで、己の生きがいを見出していく物語だ。そう考えると、賛否両論の原因となっている本作の衝撃的なラストの展開も、彼の憧れだったキャパと遂に並んだ、遂に主人公にとっての「改心の一枚」を残せた、という意味で理解出来るのではないだろうか。

そうそう、エンドクレジットに流れる、TOKYO No.1 SOUL SET と福山雅治との奇跡のコラボによる主題歌が、更に本作ラストの余韻を高めてくれるので、是非とも最後まで席を立たずに鑑賞することをオススメする。

最後に一つだけ、以前この連載記事でも紹介した短篇映画「チェンジ」の主演女優、梨木まいちゃんが、ターゲットとなる芸能人の一人として出演しているので、そこも是非お見逃しなく。

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(文:滝口アキラ)

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