インタビュー
作曲家本人が魅せる圧巻のステージ!『ティム・バートン&ダニー・エルフマン ハロウィーン・コンサート』レポート!
#Tags
作曲家本人が魅せる圧巻のステージ!『ティム・バートン&ダニー・エルフマン ハロウィーン・コンサート』レポート!
みなさん、こんにちは。
10月22日・23日、東京国際フォーラムにて『ティム・バートン&ダニー・エルフマン ハロウィーン・コンサート』が行われました。
ハリウッド映画界の黄金コンビであるティム・バートン監督と作曲家のダニー・エルフマン。映画好きのみならずその世界観に魅了されるファンは多く、今回のコンサートも2014年夏に催されたコンサートと同様にエルフマンが作曲を担当したバートン監督の各作品から選りすぐりの楽曲が、壮大なオーケストラのもと披露されました(ちなみに昨年は『アリス・イン・ワンダーランド』と『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』の上映コンサートでした)。
そんな映画ファンにはたまらないコンサートを筆者も22日土曜のステージで鑑賞しましたので、ここで『ティム・バートン&ダニー・エルフマン ハロウィーン・コンサート』の模様を駆け足ではありますがセットリストともにレポートしたいと思います。
場所は東京国際フォーラム。思い思いのキャラクターのコスプレをする観客の姿も多く、普段のコンサート会場とは一味も二味も違った雰囲気があって、どこかお祭りのような印象も受けながら会場に入りました。
オープニングベル~M1『アリス・イン・ワンダーランド』
満員の会場。ステージにはスクリーンが吊るされ、オーケストラメンバーが続々と着席。管弦楽は東京フィルハーモニー交響楽団、コーラスには洗足フレッシュマン・シンガーズ。
コンダクターを務めるジョン・マウチェリが指揮台に立ち、いよいよコンサートスタート。
ACT1の幕開けは『アリス・イン・ワンダーランド』で、1曲目からコーラスとテルミンのサンプリングがはっきりとダニー・エルフマンの音楽だと解るプログラム。オープニングに相応しく、スクリーンには今回のコンサートで使用される映画のダイジェストが次々と流れました。スクリーンには以降、各映画本編の名場面やバートン監督による絵コンテ、ステージの演奏が映し出されていきます。
M2『ピーウィーの冒険』
続けて2曲目はバートンとエルフマン記念すべき初のコラボレーション作品となった『ピーウィーの冒険』から。本編同様コミカルで軽快な音楽で、コラボ初期ながらバートンとエルフマンのタッグによる「音の原型」がほぼほぼ確立した作品だということが目と耳を通して伝わってきました。
M3『ビートルジュース』
3曲目はマイケル・キートン主演のホラーコメディ『ビートルジュース』から。導入部のコーラスからブラスに引き継がれていくオーケストレーションで、アレンジに違和感もなく、スクリーンに映し出された本編クリップとリンクしたサウンドデザインはさすがの一言。続編がいよいよ製作決定となり、ここにきて再注目の作品でもあります。
M4『スリーピー・ホロウ』
4曲目はジョニー・デップ主演、首なし騎士の伝説を描いたゴシックホラー『スリーピー・ホロウ』から。映画本編では次々と繰り返される斬首事件が実にバートンらしいダークな持ち味で描かれ、エルフマンの音楽も負けじと不安感を煽るもの。ボーイソプラノが観客をダークファンタジーの世界に誘い、アクションパートではまさにオーケストラの醍醐味を味わえる迫力の演奏が展開されました。
M5『マーズ・アタック!』
5曲目はオールスターキャストで贈る、あえてB級テイストを意識したSFコメディ『マーズ・アタック!』から。エド・ウッドにオマージュを捧げたバートン監督の感性が炸裂した火星人侵略映画に、エルフマンは良い意味で真面目に馬鹿馬鹿しさを突き詰めたSF映画音楽を用意。いかにも、なテルミンサンプリングの音色と火星人襲来のマーチサウンドが逆に心地良いくらいの作品。この音楽をオーケストラで忠実に再現した手腕も見事!
M6『ビッグ・フィッシュ』
6曲目はバートン監督が亡くなった自身の父親に物語を重ね合わせた感動ファンタジー『ビッグ・フィッシュ』。ヴァイオリンなどストリングスを中心に情感豊かに奏でられるメロディは優しさに満ちていて、時に軽快に、時に壮大に響く音楽は胸に迫るものがありました。この曲で思わず涙する観客の姿もあり、本編なくして感情を揺さぶる音楽の力を実感する作品です。
M7・M8『バットマン』『バットマン リターンズ』
7曲目、8曲目はバートン版バットマンシリーズを組曲で。現在のアメコミ映画の先駆けであるバートン版バットマン。同じくエルフマンが作曲したヒロイックなテーマ曲も、今のヒーロー映画の礎となっている作品の一つではないでしょうか。
リターンズではダークヒーローから打って変わって、キャットウーマン、ペンギンのキャラクターを表現するどことなく哀愁を漂わせたスローテンポへと曲調が転換。悪役に比重を置きながらその出自に悲しみを持たせた曲に仕上がっていました。
幕間~M9『PLANET OF THE APES/猿の惑星』
20分の休憩を挟み、ACT2は古典的名作をリメイクした『PLANET OF THE APES/猿の惑星』から。今までストリングス、ブラス主体だったオーケストラもこの曲では打楽器が前面に出る形となりました。知能を得た猿たちと人類の闘いにエルフマンは真正面から荒々しいパーカッションを用意。不気味なシンセリズムに乗せて力強いサウンドがホールに響き渡りました。今回のステージで最も異質だった一曲かもしれません。
M10『コープスブライド』
10曲目はストップモーション映画『ティム・バートンのコープスブライド』から。ここではピアノソロにスポットライトが当たり、その調べに観客の誰もが聞き入っていました。やがてオーケストラへと引き継がれ、華やかな曲調へと転換。生者と死者の差。その愛の形という、本編と同様に悲しみと悦びを切なく詰め込んだ一曲に仕上がっていました。
M11『ダーク・シャドウ』
11曲目はジョニー・デップがお得意の白塗りでヴァンパイアを演じた『ダーク・シャドウ』から。こちらも『スリーピー・ホロウ』と同じくゴシックタイプのホラーファンタジー。映画はコメディ要素も含まれていますが、曲は低音域、高音域それぞれの特性を活かしたオーケストラ全体で盛り上げるようなサスペンスフルなものに。
M12『フランケンウィニー』
12曲目はバートン監督が手掛けたオリジナル短編を、バートン監督自身が長編としてリメイクした白黒ストップモーション映画『フランケンウィニー』から。こちらの曲ではピアノに加えて高音域のストリングス、コーラスを活かして「死んだペットの犬を蘇らせたい」と願うヴィクター少年の思いに沿った、切なさをにじませた楽曲。『ビッグ・フィッシュ』同様ヴァイオリンの高音部に感情面を託した手法で、エルフマンの繊細な作曲スタイルが光ります。
M13『シザーハンズ』
13曲目はバートン監督とジョニー・デップが初めてタッグを組み、今も多くの支持を集める映画『シザーハンズ』から。この楽曲ではチェロとコーラスでもの悲しい立ち上がりを見せながら、やがてオケ全体でファンタジーへと昇華していきます。そして、エルフマンコンサートには欠かせなくなったサンディ・キャメロンがソロ・ヴァイオリニストとして登場。エドワードを思わせる黒の衣装に身を包み演奏する彼女の姿は圧巻! ハープの音も優しく加わり、涙を誘う美しい旋律に盛大な拍手が送られました。
M14‐1~3『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』
14曲目はバートンが原案と脚本を務めたヘンリー・セリック監督のミュージカル・ストップモーションアニメ『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』から。ブラスを主体にした立ち上がりから、いよいよ満を持してダニー・エルフマンがステージに登場。感情たっぷりに歌い上げるその姿はまさしくパンプキン・キング、ジャック・スケリントンそのもの! ステージを所狭しと移動しながら熱唱するエルフマンに会場は拍手喝采。
続けて、本作の日本語吹き替え版でサリーの吹き替えを担当した土井裕子さんがエルフマンの熱望によりスペシャルゲストとしてステージに登場。艶と伸びのある美しい声で[サリーの歌]を披露、盛大な拍手に包まれました。再びエルフマンがステージに立ち、会場の興奮はさらに上がっていきます。
M15『アリス・イン・ワンダーランド』
いよいよステージも大詰め。15曲目は『アリス・イン・ワンダーランド』から。ここでステージセンターに一人の少年が。NHK東京児童合唱団でボーイソプラノを担当する勝俣祥くん、大観衆に見守られる中オーケストラをバックにテーマ曲の英語歌詞を披露! ジョン・マウチェリのコンダクトをしっかりと見てリズムを取りながら歌う姿に観客は釘付け。見事無事にテーマ曲を歌い上げると会場からはエルフマンの歌唱に引けを取らない賞賛の拍手が勝俣祥くんに贈られました。いや本当にあの小さな体であの大きなステージに立ち歌唱をする姿は素晴らしかった!
盛大な拍手はそのままエルフマン、マウチェリ、オーケストラへと向けられ、エルフマンとマウチェリが手を取りながら袖へと退場し、ステージ終了。
アンコール・M16『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』~フィナーレ
再びエルフマンとマウチェリがステージに登場。この二人、なぜか入退場とも手を繋ぎながらという仲の良さ。会場からも笑いが。いよいよ本当の最後の一曲、16曲目は『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』から[ウギー・ブギ―の歌]! 三度ジャックが憑依したエルフマンのパワフルな歌唱、そして指揮者マウチェリさん、何やらごそごそ不審な動きを見せたかと思うとサンタクロースキャップを被りエルフマンとデュエット! コンダクターの枠を超えた演出に、まさにエンターテイメントというステージで観客も手拍子で加わって会場のボルテージは最高潮に。
フィナーレでは観客から会場を揺らすほどの惜しみないスタンディングオベーションがステージに贈られ、ダニー・エルフマン、ジョン・マウチェリ、オーケストラのメンバーが満面の笑みを浮かべて、コンサートは華やかに終幕を迎えました。
まとめ
映画音楽を体感する。以前そんな記事をご紹介しましたが、今回のステージはまさにその醍醐味を味わえる貴重な機会でした。しかもこのコンサートは作曲家であるダニー・エルフマン本人が毎年来日してパフォーマンスを披露するという、最高の舞台でもあります。その
感動は終幕のスタンディングオベーションに結果として如実に表れていたのではないでしょうか。一人でも多くの方が圧巻のステージを前にしてこの感動を味わって頂けたら。映画音楽の楽しみ方が、また一つ増えるのではないでしょうか。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
■「映画音楽の世界」の連載をもっと読みたい方は、こちら
(文:葦見川和哉)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。