映画コラム

REGULAR

2016年11月06日

映画とティファニーは永遠に輝き続ける。『ティファニー ニューヨーク五番街の秘密』とオードリー・ヘプバーン

映画とティファニーは永遠に輝き続ける。『ティファニー ニューヨーク五番街の秘密』とオードリー・ヘプバーン

■「〜幻影は映画に乗って旅をする〜」

ティファニー ニューヨーク五番街の秘密


(C) 2016 DOCFILM4TIFFCO LLC a subsidiary of QUIXOTIC ENDEAVORS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.


11月5日から全国順次公開された、世界的ジュエリーブランド・ティファニー初の公式ドキュメンタリー映画『ティファニー ニューヨーク五番街の秘密』は、ジュエリーへの興味の有無や年齢や男女差も関係なく、必見の一本だ。美しさと物作りへのこだわりを余すところなく感じさせる徹底的なブランドイメージが、この公式映画にまで落とし込められているのだから、これは今年のドキュメンタリー映画ではナンバーワンの出来栄えと言っても何ら差し障りはない。

〜幻影は映画に乗って旅をする〜vol.5:映画とティファニーは永遠に輝き続ける。『ティファニー ニューヨーク五番街の秘密』とオードリー・ヘプバーン>

劇中ではティファニーの歴史はもちろんのこと、有名なブランドカラーにまつわる逸話や、多くのティファニー愛好家たちのインタビューが登場する。さらにはニューヨークという街におけるティファニーの存在(これは本作の監督であるマシュー・ミレーが以前手がけた『ニューヨーク・バーグドルフ 魔法のデパート』と同じようなアプローチである)から、これが劇場用ドキュメンタリー映画であることを意識してか、映画とティファニーの関係までも描かれていくのだから魅力的な場面が尽きることがない。

登場する映画としては、『ブライダル・ウォーズ』の中でティファニーボックスを見つけたケイト・ハドソンとアン・ハサウェイがはしゃぐ場面や、インタビューでも登場するバズ・ラーマンが手がけた『華麗なるギャツビー』でキャリー・マリガンがティファニーを身につけている場面、はたまた紙袋だけが映される『フレンズ』の1エピソードなど数多く。

しかし最も印象的に登場するのは、映画におけるティファニーのイメージを最初に作り出した、ブレイク・エドワーズの『ティファニーで朝食を』だ。

ティファニーで朝食を (字幕版)



早朝のニューヨーク、タクシーから降りてきたオードリー・ヘプバーンが、ジーン・ムーアのデザインしたウインドウを眺めながら朝食を食べる伝説的なオープニングシーン。トルーマン・カポーティの原作を基に、安アパートに暮らす若い女性ホリーと、作家志望の青年との恋模様がユーモラスかつ小洒落た演出で描かれる本作は、オードリー・ヘプバーンの代表作のひとつとして今でも人気を集めている。

当時、原作者のカポーティはマリリン・モンローの主演を条件に映画化を許可したという話もあり、ミスキャストと言われたこともあるが、大きな脚色によって作り出されたホリーの奔放なキャラクターや、同作でスターダムにのし上がったジョージ・ペパードとのコンビネーションを考えればオードリー・ヘプバーンで何ら問題ない。

結果的に、永遠の名女優オードリー・ヘプバーンの存在を思い返す時に、もちろん『ローマの休日』は忘れがたい素晴らしさを持っているが、頭の中に蘇るのは映画史上最も有名なドレスと言われる、ジバンシィのデザインしたイブニングドレスを身にまとった彼女の姿である。

ティファニー ニューヨーク五番街の秘密


(C) 2016 DOCFILM4TIFFCO LLC a subsidiary of QUIXOTIC ENDEAVORS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.


この『ティファニーで朝食を』の中では、オープニング以外にもティファニーが登場する。ペパードが原稿料を手にして、ヘプバーンを誘う先がティファニーの店舗なのだ。持ち合わせのない彼らはウインドウを見て回り、10ドルの金で買えるものはないかと訊ねる。そこで勧められるのが電話のダイヤル回しという茶目っ気もさることながら、キャンディーの景品の指輪に字を刻んでくれないかと頼むと、引き受けてくれるティファニーの懐の深さを感じる場面だ。

店に入った二人のショットから、次のカットでカメラが引き、店の全景を映し出すという場面は、のちにリース・ウィザースプーン主演の『メラニーは行く!』でもオマージュされた、ティファニーの店内を映し出す最高のショット構成だろう。(今回のドキュメンタリー映画では、同作を手がけたアンディ・テナントのインタビューも登場しているので、それも見逃せない。)

映画とジュエリーは、芸術と娯楽の両方の要素で成り立っている点で共通している。あらゆるプロの技が重なり合って生み出された思い入れの集合体であり、それと同時にひとつのファッションとして身につけるだけの一時の享楽でもある。それでも、一度世に送り出されたものはすべて、永遠に残り、輝き続けるものだ。こうしてドキュメンタリー映画として記録されたティファニーの崇高なマインドもまた、永遠に輝き続けることだろう。

■「〜幻影は映画に乗って旅をする〜」の連載をもっと読みたい方は、こちら

(文:久保田和馬)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

RANKING

SPONSORD

PICK UP!