イタリアを好きな人必見!世界中で脚光を浴びた監督の目を通じて見るイタリアとは
イタリアが好きな人は、その文化の知識を深めるチャンスを常に求めているでしょう。イタリア語を勉強したり、本を読んだりする人が少なくないと思いますが、映画もイタリアを知るための大きな手段といえます。
そこで、世界中でイタリア映画界を象徴する一人の監督の作品を見逃せない。それは、パオロ・ソレンティーノの映画です。2013年に『グレート・ビューティー/追憶のローマ』でアカデミー外国語映画賞を受賞して以来、ソレンティーノ監督が世界中で
脚光を浴び、現在日本でもその作品を観賞するチャンスが増えています。
では、ソレンティーノ監督の映画を通じてどのようなイタリアを見られるのでしょうか?
1:『もうひとりの男』
ソレンティーノ監督の長編デビュー作である『もうひとりの男』は、それぞれの道を歩んでキャリアの頂点に達した二人の男の物語を描きます。麻薬依存や性犯罪の繰り返しで野放図な生活を送る歌手のトニ(トニ・セルヴィッロ)と、内向的な性格のためなかなか目立たないサッカー選手のアントニオ(アンドレア・レンツィ)が、全く違う人生を歩んできたものの、共通点をもっています。それは、名前(アントニオ・ピザピア)だけではなく、ふたりが抱えている運命とその運命を覆す欲望です。
『グレート・ビューティー/追憶のローマ』以来、ソレンティーノ監督の名前がローマの表象と関連づけることが多くなったが、ナポリ出身である監督が『もうひとりの男』の舞台をナポリで設定したのです。実際に登場人物たちがナポリ語で話すシーンも多い。
このような人におすすめ
・サッカーが好きな人。ひとりの主人公はサッカー選手であるだけあって、サッカーの話題が非常に多いです。タイトルの「もうひとりの男」もサッカー戦術の一種を指しています。
・イタリア音楽が好きな人:トニが歌う全ての歌は、トニ・セルヴィッロの弟かつ有名な歌手であるペッペ・セルヴィッロによって制作され、トニ・セルヴィッロ自身が歌っています。
2:『愛の果てへの旅』
主人公のティッタ・ディ・ジローラモ(トニ・セルヴィッロ)は、8年間スイスのホテルで一人暮らしています。定期的にスーツケースに札束を詰め込んで銀行を訪れるティッタは、あまりしゃべらない謎の男です。彼の仕事や家族などについて誰も知らないし、自分の過去について聞かれてもティッタが曖昧な答えしか返さない。
しかし、ある日ティッタがホテルのバーで働く美しいウェイトレスに愛を告白します。一体彼が何の秘密をもっているのか? 愛することが彼の人生にどのような結果をもたらすのでしょうか?
このような人におすすめ
・マフィアに興味がある人。『愛の果てへの旅』は、典型的な「マフィア映画」ではありませんが、新たな観点からマフィアの組織を描きます。
・きれいな映像が好きな人。非常にきれいな映像と音楽の組み合わせのおかげで『愛の果てへの旅』をアート作品としても楽しむことができます。
3:『イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男』
『イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男』でソレンティーノ監督がはじめてイタリア歴史を描くことに挑戦しました。主人公は、長期間にわたってイタリアの首相を務めたジュリオ・アンドレオッティです。
戦後イタリアの最強政治家としても知られているアンドレオッティは、自分の権力を利用して犯罪に手を染め、マフィアとの関係や汚職の疑惑で首相の座を追われました。また、70年代から80年代にかけてイタリアの平和を脅かした極左武装集団「赤い旅団」やマフィアによる爆発テロ事件にも関わっていたと疑惑されています。
この映画でジュリオ・アンドレオッティ役を演じるトニ・セルヴィッロが新たな高みに到達したと言えるほど最高の演技を見せています。
このような人におすすめ
イタリアの現代史に興味がある人。マフィアは、『ゴッドファーザー』は作り上げたイメージが未だに強くて、漠然とした概念しかもっていない人が多いと思われます。実際政治家がどのようにマフィアと関係を築き、その関係がどのように イタリア政治および社会に影響を及ぼしているかを知るために『イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男』が重要な作品です。
4:『グレート・ビューティー/追憶のローマ』
主人公は、ジャーナリストのジェップ(トニ・セルヴィッロ)です。セレブコミュニティの中でちょっとした有名人で、彼の回りに俳優、アーティスト、実業家、貴族、モデルなどが集まります。
毎夜ローマのあちこちで開催される豪華なパーティーに参加しながら日々を過ごすジェップに、ある日、彼が決して忘れられなかった初恋の女性の訃報が届きます。これが自分の過去を顧みるきっかけとなり、長い間中断していた作家活動を再開する決心と繋がるのです。
このような人におすすめ
・とにかくローマが好きな人。コロッセオをはじめ、ローマの建物がただの背景ではなく、作品の中心にあります。夜中や夜明けにジェップが街を歩くシーンを観ることで今まで見たことのないローマに出会えるはず。
・イタリア社会に興味がある人。ジェップを中心に開催される豪華のパーティーを通じてイタリア社会の退廃を垣間見ることができます。
毎年日本で開催されるイタリア映画祭で注目を浴びた『愛の果てへの旅』や『イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男』は、DVDなどで手に入れることができます。また、従来日本で上映されていなかった『もうひとりの男』も現在「イタリアネオ+クラッシコ映画祭」で観賞することができます。
ぜひパオロ・ソレンティーノの世界に入り込んでイタリアの複数の側面を発見してみてください。
(文:グアリーニ・ レティツィア)
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