『ボストン ストロング』は五月病の特効薬!その3つの魅力はこれだ!



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5月11日より公開される『ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれた』は、2013年にアメリカ・ボストンで発生したテロ事件を題材とした“実話もの”であり、“キレイゴトすぎない”人間ドラマにこそ感動できる、多くの方に観てほしいと心から願える素晴らしい作品でした。

映画批評サイトRotten Tomatoesで96%の評価を獲得するなど、絶賛で迎えられている本作の魅力がどこにあるのか、以下にたっぷりとご紹介します!

1:主人公はダメ人間! 多くの方が感情移入できる物語になっていた!


本作で何よりも重要なこと……それは副題の「ダメな僕だから英雄になれた」が示すように、主人公が(ちょっぴり)ダメ人間であることです。コストコ(倉庫型スーパー)の冴えない店員で、映画の冒頭から仕事で思いっきり失敗し、その後片付けを同僚に無理やり頼みこんで、別れた彼女には未練タラタラで何度もアプローチをしていたりもしています。およそ、“英雄”という呼称には似合わない人物なのです。

そんな彼は、ボストンマラソンのテロに巻き込まれ、両足を失ってしまいます。しかし、犯人の特定に有力な証言をしたために、期せずとしてテロ事件の英雄として“祭り上げられる”ことになるのです。普段の彼はダメ人間で、“たまたま犯人を見かけて証言しただけ”なのに……。

彼にさらなる追い討ちをかけるのは、過酷なリハビリです。車椅子に乗るだけで一苦労、義足の装着時には激痛を伴い、1人でお風呂にも入ることができず、常に誰かのサポートが必要になる……英雄と呼ばれることに相対するように、彼は社会的な弱者になってしまうのです。

切ないのは、彼は自己評価がもともと低いうえに、両足を失ってからさらに自暴自棄になっていくこと。元々がダメ人間なのに、たまたま犯人を見かけて証言しただけで英雄と呼ばれるようになって、過酷なリハビリに挫けそうになっている……つまりは、「ダメ人間がさらに落ちぶれているのに、世間では褒められ続けているまま」という状況になっているのですから。

彼の境遇そのものは非常に稀ではありますが、「自己評価が低いことを褒められて、かえって苦痛に感じてしまう」というのは、誰もが普遍的に持ちうる感情です。テロ事件から生還するという多くの人が体験し得ない出来事を描きながらも、実は世界中の誰にでも当てはまる苦悩を描いているというのが、『ボストン ストロング』の大きな特徴なのです。



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2:不器用で平凡な男性を、ジェイク・ギレンホールが熱演した!


本作の主演俳優が『デイ・アフター・トゥモロー』や『ミッション: 8ミニッツ』のジェイク・ギレンホールということも重要です。前述した通り主人公はダメ人間なのですが、決して全てがダメというわけでもなく、ちゃんと良い面も持つ“人間くささ”があります。ジェイク・ギレンホールは自然な演技で、その平凡で愛すべき人物像を表現していました。

ジェイク・ギレンホールは今回の役作りにおいて、実際に主人公の(モデルとなった)ジェフ・ボーマンと深く話し合うことはもちろん、その一家とも一緒に過ごしただとか。しかも、気持ちをただ話してもらうのではなく、生活のペースや問題への向き合い方など、言葉に頼らない感情表現にも目を向けていたのだそうです。

主人公は「なかなか自分の胸の内を打ち明けない」という不器用さを持ち合わせています。愚痴をなかなか言わず、鬱積した想いを溜めていたからでこそ、大きな決断を迫られた時に“弱さ”を吐き出してしまう……具体的に何が起こるのかはネタバレになるので書きませんが、ダメ人間の自覚がある方こそ、このシーンには共感してしまうでしょう。

また、中盤にアイスホッケーの試合会場で英雄として祭り上げられた彼が、エレベーターの中で、とある“意味不明な言葉”を吐き出すシーンも重要です。その意味が“やっとわかった”時にも、筆者は涙を流してしまいました。まるでミステリーのように、少しずつ主人公の内面を描いていく脚本と演出も、とても良く練られているのです。

ちなみに、ジェイク・ギレンホールは、『ナイトクローラー』で目的のためなら手段を選ばない狂気的なカメラマンを怪演しており、そちらでは「真性のクズ!」「クズすぎてむしろ気持ちいい!」などと絶賛されていました。今回の“普通のちょっとダメなやつ”とのギャップが激しいので、合わせて観ると俳優としての実力をさらに知ることができるでしょう。

さらに余談ですが、本作にはけっこう“笑える”シーンも多いというのもポイントです。特に主人公の家族の態度が良い意味でヒドく、(決して悪人というわけではないのですが)病院に駆けつけてくれたコストコの店長に告げた言葉は強烈ですし、テロ事件の犯人が死亡したことを知った時のリアクションはブラックすぎてギョッとしてしまう方も多いでしょう。要所要所で“キレイすぎない”ことも、『ボストン ストロング』の素敵なところです。



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3:ボストン市民が全面協力! 本物と見紛う映像が圧巻だ!


本作ではボストンマラソンのテロ現場を、本物の映像と見紛うほど、見事に再現しています。マラソンのゴール地点を120フィート(約36メートル)に及ぶ通りや脇の歩道や店まで作り上げ、エキストラの80%はボストンの現地の人を起用するなど、とことんリアリズムに拘っているのです。

ボストンの市民には、もちろんテロの記憶が鮮明に残っており、トラウマになっていた方、一生背負わなければならない心の傷を負った方も少なくはなかったでしょう。事実、主人公であるジェフ・ボーマンは映画の撮影時には身体的に大きな回復を見せていたものの、依然としてPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しんでいたそうです。

それでも、市を挙げて彼らは映画の撮影に協力しました。中盤のアイスホッケーの試合会場のシーンでは5000人のファンが公式戦後に残ってエキストラとして参加していますし、クライマックスの大スケールの感動的なシーンをも作り上げたのです。その事実にもまた、テロ事件に真摯に向き合い、映画の力を信じている人々の想いを感じられて、胸が熱くなりました。『ハドソン川の奇跡』や『15時17分、パリ行き』も同様ですが、実際の事件に遭遇した方が、映画でも重要な役割を果たしているということも、念頭に置いて観てほしいです。



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まとめ:5月病に“効く”映画だ!


この『ボストン ストロング』が日本ではゴールデンウィーク明け、“五月病”が蔓延する時期に公開されることにも、とてつもない優しさを感じました。間違いなく、本作は五月病で無気力になっている時に、“効く”映画なのですから。

その理由は、前述してきた通り、自己評価がさらに低くなってしまった人間の葛藤と戦いを描いていることと、「それほど気を張らなくても、どこかで誰かを救うことができているのかも」などと、焦ることなく“自分ができること”を探すヒントがもらえることからです。

新しい生活や環境に馴染めない、仕事や勉強で自分の無力さを感じてしまった、という時には、ぜひ『ボストン ストロング』をお勧めします。きっと、観終わった時には「ダメな僕だから英雄になれた」という副題の意味を理解でき、現実で生きていく希望がもらえることでしょう。

おまけその1:「ボストン ストロング」の意味とは?


邦題にある“ボストン ストロング”(原題は「Stronger」)とは、テロ事件から数時間後にツイッターで急速に普及した、ボストン市民を勇気付けていたスローガンです。テロ後に初めてボストン・レッドソックスの試合が行われた時には、“BSTRONG”のロゴが入ったキャップとTシャツが販売され、寄付金などを合わせて約2億2千万円が集まり、テロの被害者への生活サポートや遺族の心のケアに使われたのだそうです。

映画の主人公であるジェフ・ボーマンは、そのボストン ストロングという言葉を象徴する存在でもあったのでしょう。彼がどのように、そのスローガンに近い“強い”人間へと成長していくか……そのドラマにも注目してみてください。

おまけその2:合わせて観てほしい3つの映画はこれだ!


最後に、『ボストン ストロング』と合わせて観るとより楽しめる、3つの映画を紹介します。

1.『パトリオット・デイ』




『ボストン ストロング』と同じく、ボストンマラソンのテロ事件を題材とした映画です。こちらは犯人を追い詰めていくサスペンス・アクションとなっており、『バトルシップ』や『バーニング・オーシャン』のピーター・バーグ監督の演出が冴え渡った、鋭い金属音が響く銃撃戦が恐ろしくも迫力満点、リアリズムに徹した力作に仕上がっていました。「『ボストン ストロング』の“裏”で何が起こっていたかを知る」という意味でも、ぜひ鑑賞してほしい一作です。

2.『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』




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こちらは現在公開中の映画です。実在のフィギュアスケーターが関係した襲撃事件が、時には切実に、時にはコミカルに描かれていました。大成功をしたかもしれない人物が、周りのバカな人物のバカな行いによって、坂道を転がり落ちるように落ちぶれていく……という物語でもあり、芸能人のゴシップを“楽しんでしまう”人間の浅ましさが描かれているようでもあり、良い意味でイヤな気持ちにさせてくれます(それは同時に痛快でもあります)。『ボストン ストロング』と同じく、“美談だけじゃない”実話ものの面白さが、きっとわかることでしょう。

ちなみに、現在は5月11日より公開の『モリーズ・ゲーム』のほか、『ホース・ソルジャー』や『タクシー運転手 約束は海を越えて』や『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』や『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』や『ダンガル きっと、つよくなる』などなど、実話をベースとした高評価の映画がたくさん公開されています。映画ファンとしては「全部観るのも大変だよ!」とうれしい悲鳴をあげたくもなりますね。

3.『素晴らしき哉、人生!』(1946年)




映画史上に残る、不朽の名作と称されている作品です。投身自殺をしようとしていた男性のところに、天使がやってきて、“彼が生まれなかった世界”を見せるというファンタジーであり、そのメッセージの優しさには今もなお世界中の人を勇気付けています。

『ボストン ストロング』の物語に根底にある精神は、この『素晴らしき哉、人生!』と一致しています。どちらの作品も、自分が生きていることを肯定できなくなるのは何よりも悲しいことであることと、生きることの尊さを教えてくれるのですから。合わせて観ると、五月病をさっぱりと完治できるのかもしれませんよ!

(文:ヒナタカ)

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