映画コラム

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2018年09月28日

豊洲移転のカウントダウンが始まった今こそ『築地ワンダーランド』を見てほしい!

豊洲移転のカウントダウンが始まった今こそ『築地ワンダーランド』を見てほしい!

TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド) BD メイン


(C)2016松竹 



2018年10月6日、東京・中央区築地にある公設の卸売市場・築地市場が卸売市場としての営業を終了し、同月11日より開場される豊洲市場へ移転、解体工事が着工される予定です。

もともとは江戸時代から日本橋魚河岸などにあった市場が関東大震災で壊滅し、築地の海軍省所有地に臨時の東京市魚市場を設けたのがきっかけで、1935年(昭和10年)には現在の場所に正式に開設された築地市場。

この一大移転が今後の食品流通などにどういう結果をもたらすのかはまだわかりませんが、いずれにしましても古くから独自の昭和的雰囲気に親しんできた身としては、やはり寂しいというのが正直なところでしょう。

そんな中、2016年に築地の魅力を捉えたドキュメンタリー映画『築地ワンダーランド』が公開され、世界中で喝采を浴びました。

カウントダウンを直前に控えた今、改めてこの作品に注目してみたいと思います

築地市場の魅力を
食文化の視点から長期取材!



『築地ワンダーランド』は、その名のごとく80年の歴史を有する築地市場をさまざまな角度から捉えたものです。

「築地はただ単に魚を売っているだけではなく、仲卸をはじめとする食のプロフェッショナルが多数介在し、豊富な情報や商品知識を取り扱っている」

という視点に基づき、2014年3月から15年6月までの長期(総撮影時間602時間)にわたってセリの現場や料理人の仕事ぶりなどを取材。

築地市場の関係者はもちろんのこと、都内の有名寿司職人や鮮魚店店主、食文化に精通したジャーナリストなど、多彩なジャンルの人々およそ150名に取材を敢行しています。

また1935年に市場が開場したときの模様を撮影した秘蔵フィルムも、貴重な映像資料として収められています。

TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド) BD サブ2


(C)2016松竹 




海外で大絶賛された
日本独自の食文化映像


監督は1978年生まれの遠藤尚太郎。

自主映画を経てテレビやDVDのドキュメンタリー映像を撮り続けてきた遠藤監督にとって、本作は初の劇場用映画となりました。

彼は1日およそ45万トンもの水産物が分刻みで流通していく築地のエネルギッシュな空間に魅せられ、魚を分けていく作業=分荷を担う仲卸の人々の姿を中心に、高度に専門化された日本の食文化の豊かさや素晴らしさを映像に定着させるべく腐心しています。

実は撮影をスタートさせた時期、既に豊洲移転は決定していましたが、本作はあえてその問題には触れていません。そこに踏み込むと別のメッセージ性が醸し出されてしまい、日本の豊かな食文化を語るという本来の趣旨が埋もれてしまいかねない危惧があったからです。

本作はあくまでも集合体としての築地の魅力とその役割を“ワンダーランド”として魅せてくれます。

もともと築地は海外からの観光客が多いことでも知られていますが、本作はアメリカのシアトル国際映画祭やスペインのサン・セバスティアン国際映画祭で上映され、それぞれ喝采を浴びました。

また香港で公開されたときは2週連続で興行成績トップ10入り、タイでは初週の興行収益がドキュメンタリー映画の新記録を打ち立てています。

世界中の人々から愛されている築地の魅力を見事に活写し得た映画『築地ワンダーランド』、運命のカウントダウンが始まった今こそぜひ鑑賞していただき、日本の食と文化と歴史のありようについてそれぞれ想いを馳せていただければ幸いです。

[2018年9月28日現在、配信中のサービス]
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(文:増當竜也)

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