橋本淳、『スーパー戦隊』に抜擢された当時を振り返る「今思うと本当に恐ろしい」
舞台、ドラマ、映画と数々の作品に出演し、役者として着実に経験を重ねている橋本淳さん。11月9日に開幕する舞台『カリギュラ』、そして来年2月に上演される『泣くロミオと怒るジュリエット』にも出演します。
演劇界で引く手数多の橋本さんの魅力に迫るべく、今後の出演作のお話はもちろん、原点ともいえる『魔法戦隊マジレンジャー』についても、当時を振り返って語っていただきました。
──『カリギュラ』で橋本さんが演じられるのは、菅田将暉さん演じるカリギュラと対峙していくケレアという役ですね。
橋本淳(以下、橋本):そうですね。『カリギュラ』は、アルベール・カミュというフランス文学で有名な作家が描いた作品なのですが、きっとカミュ自身もいろんな迷いがありながらも、自分の転換期のときに生み出した作品なんじゃないかなと思っていて。カリギュラとケレアは、カミュの中で共存していた彼自身のような気がするんです。
ケレアは冷静であり聡明な人。カリギュラとも深い根っこの部分では繋がっているけど、お互いの論理がずれてしまって、戦っていくことになる。カリギュラの殺害を企てるクーデターの首謀者で、革命を促していくという役ですね。
──カリギュラは最愛の妹を亡くしたあとに性格が豹変してしまい、残虐非道な行為に走ってしまいます。
橋本:そうですね。でも、カリギュラの周りにいる、ケレアを含めた4人の人物は、カリギュラが何か意味を持ってそういうことをしているということに気付いてはいるんです。ケレアは論理から彼を理解しようとして、秋山菜津子さん演じるセゾニアは愛で彼を理解しようとする。高杉真宙さん演じるシピオンは、芸術から理解しようとして、谷田歩さん演じるエリコンは、カリギュラに服従することで、それぞれがなぜこうなってしまったのかを理解していくという、大まかにいうとそういうストーリーですね。
──台本を読まれたときの印象はいかがでしたか?
橋本:実は7月に台本はいただいていたのですが、それから毎日、開いていますね。カリギュラの台本の表紙って、真っ赤なんですよ。誰かと話していても、電車に乗っていても、その赤が頭にチラつくんです。夢にまで出てくるぐらい(笑)。今日に至るまでずっとそう。それぐらい、考えることが多い作品ですし、怖くもあるし、楽しみでもあるなと。
──本作はあらすじなどを見るかぎり、哲学的で難解な作品という印象を受けます。
橋本:僕も20代前半で『カリギュラ』を読んだときは、まったく分からなかったですね(笑)。言っていることも分からないし、哲学的だから難しいって突っぱねてしまった部分もあります。でも、今回この作品に出演すると決まってから、改めて、『カリギュラ』と向き合ってみたんです。まだ分からない部分も多いし、「これを本当にやるのか?」「怖いな」と思ったりもしましたが、作品を理解するには、まず作者であるカミュのことを勉強しないといけないなと思ったんです。
──原作者が何を考えてこの作品を作ったか、というところから理解されていったんですね。
橋本:そうですね。そもそもの哲学の成り立ちや、有名な哲学者であるアリストテレス、ニーチェについても調べて、その人たちがどうやって哲学を紡いできたのか。そして、その中でカミュがどの哲学を大切にしてきたのか、と。
そうやってカミュの人生をひとつひとつ辿っていくと、不思議と『カリギュラ』についても理解を深めることができました。確かに哲学的な話ではありますけど、テーマとしては「人はどんな意味があって生を受けて、生きて、死んでいくのか」という、全ての人間が抱えているものがベースになっているんです。変に不条理、哲学という難しい言い方で形容してしまっているから、つかめない感じがするのですが、しっかりと例え話をしながら説明すれば、きっと誰でも理解できる作品なんだと思います。
──公式サイトでのコメントでも「刺激的な稽古になりそう」というお話もされていましたが、キャストの方々とはどんなやりとりを?
橋本:まだ本格的な稽古に入ってはいないのですが、菅田くんや谷田さんと「どうやっていきます?」みたいな感じで話したりはしましたね。みんなやっぱり、僕と同じようにすごく考えて悩んでいるんだなと思いました。
どの役も理解しようとしてすぐ理解できる役ではないし、どこか掴みどころのない役でもあるので、みんな苦戦しているなと。でもこれから、稽古を重ねて、みんなで協力しながら作り上げていけたらと思っています。僕らなりの座組の答えがきっとあるので、ゆっくり見つけていきたいです。
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