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『劇場版 鬼滅の刃』興収100億確実で記録ずくめ!「コナン」『天気の子』と状況を比較する

 (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable



新型コロナウィルスの影響をもろに受けた映画界の復活のカギを握るだろうとされてきた『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』が公開されました。

映画館の観客入場に関しては、未だ制限が残っている劇場もある中で“時刻表”と評されるほど連続した上映回数を朝7時台からレイトショーまで都心部では一日40回以上の上映回数を確保、地方でも20回前後の上映回数を確保し、IMAXシアターまで稼働させて観客の取りこぼしは一切しない体制を整えてられました。

そして、満を持して公開された『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』。10月16日の初日からの3日間で興行収入46.2億円を突破、観客動員342万人を記録しました。

これは『名探偵コナン 紺青の拳』(最終興行収入93.7億円)と比較して、 興行収入で244% 観客動員で235%になります。

さらに、『天気の子』(最終興行収入141.9億円)と比較した場合、興行収入比280% 観客動員比297%となります。

この数字から見て、まずはこれまでの日本映画界で36本しかない“興行収入100億円映画”への仲間入りが当確となりました。

そこで、ここでは2020年の日本映画界唯一のイベントムービーとなった『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』についてまとめていきます。

コロナ渦という脅威の中で作られたベストタイミング




 (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable




まずは、作品を取り巻くタイミングが、まさに“今ここしかない”という形で合致したこタイミングの良さを強く感じます。

いまさら、言うまでもなく今年はコロナ渦の中で新たな生活様式が急速に確立され、外出自粛、お家時間を過ごすことが多くなりました。

そんな中で、売り上げを伸ばしたのが電子書籍を含む書籍です。これは『鬼滅の刃』に限った話ではなく、出版不況と言われて久しい中で様々なジャンルの書籍の売り上げが昨年同時期比で増加傾向にあります。コミックに限って言えば書籍・電子共に昨年同時期比で130%以上の売り上げを記録しています。
この流れに『鬼滅の刃』がガチっとはまりました。

まず、アニメ第一シーズンの終了時に累計で1200万部を突破した『鬼滅の刃』は、その後、年明け早々に一気に4000万部を突破すると、緊急事態宣言並びに自粛期間となった夏に8000万部、そして10月には累計1億部を突破しました。

ジャンプで1億部を突破しているのは『ワンピース』『ドラゴンボール』『ナルト』『こちら葛飾区亀有公園前派出所』『スラムダンク』『BLEACH』『ジョジョの奇妙な冒険』など巻数も歴史もある作品ばかりです。

そんな中で、『鬼滅の刃』は僅か4年強の短期間でこの大台に乗っけてきました。

大きな転機となったのはやはり、昨年の4月に放映されたアニメ版の第一シーズン。地上波放映に加えて、サブスク系でも続々と配信さ、特別編集版も公開直前直後の週末に放映されました。

さらに、大胆なことに作品の延命を選ばず勢いがある中の2020年5月にはジャンプ誌上での連載を終了させ、『鬼滅の刃』と言う作品の鮮烈さだけを残して物語に幕を下ろします。

新しい生活様式の最初の課題図書と化した『鬼滅の刃』。最終巻が年末の12月4日に発売されますが、映画公開から1カ月半が経っている頃になりますが、映画との相乗効果で、こちらもの方も記録的な売り上げとなるでしょう。

さらに重なる合う巡り合わせ




『鬼滅の刃』というコンテンツの盛り上がりが2020年10月16日にピタリとはまったということとは別の視点で、『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』にはさらに多くの巡りあわせ(タイミング)が重なり合いました。

例えば、アニメの第一シーズンを受ける形で映画するのに最適な『無限列車編』を迎えることができたことです。

もちろん、アニメシリーズ化の時からの逆算があったとは思いますが、コミックス約2巻に納まる『無限列車編』のエピソードは原作の大きな枠組みごとに見ていくと、唯一120分前後の作品としてまとめることのできるエピソードと言えます。

これ以降の原作エピソードとなると、120分でまとめるのは難しくなります。

アニメ2クールを経た後に劇場版を製作するという流れを見たときに『無限列車編』は最適な順番で登場しました。

アニメ版の時には計算が合ったかもしれませんが、まさか原作連載時にはそこまでメディアミックスを想定していたとも思えず、ここで『無限列車編』を迎えられた巡り合わせは運命的なものを感じます。

また『無限列車編』は大画面・大音響の映画館いう場で見ると言うことにもピッタリな作品でもあります。

“鉄道映画にハズレ無し”というは映画ファンの中にある程度お馴染みの意見だと思いますが、映画館という限定空間と鉄道と言う限定空間がシンクロして、唯一無二の劇場体験を観客に与えます。(似たような傾向として“潜水艦映画にハズレ無し”というものがあります)

他にもアメリカ本国で上映できないためにハリウッド映画の日本公開が止まっていること、唯一のハリウッド大作『TENETテネット』の公開からも一ヶ月が経ち競合する作品がないというのも、コロナ渦でなければ巡ってこなかった環境です。

劇場側も大規模劇場、IMAXシアターを用意してさらなる没入感のある環境を整えています。競合する作品がないということで言えば、これから公開されるいわゆる“お正月映画”にまで拡げて見ても、目玉になるような(対抗作品になりそうな大画面向きな)ハリウッド大作は不在で、このことは座席数の多い劇場を確保にもつながります。

これだけの期間、競合するイベントムービーがいないというのも、普通ならないことです。最大のライバルは年明け2021年1月23日に公開が決定した『シン・エヴァンゲリオン劇場版』になるかと思いますが、その時には『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』はすでに驚異的な数字を積み重ねていることでしょう。

イベントムービーがないと書きましたが、その一方で、実は自粛期間が明けてからの映画館がにぎわっているということもまた事実です。

自粛期間後『今日から俺は!劇場版』が興行収入52億円を突破、『コンフィデンスマンJPプリンセス編』は前作の『ロマンス編』(29.7億円)を上回る33億円を記録しています。以下、『事故物件恐い間取り』が22億円、『糸』が20億円、リバイバル上映されたスタジオジブリ作品4作品合計で20億円を超え、あの『ダークナイト』が16億円止まりだったクリストファー・ノーラン監督の『TENETテネット』が20億円を突破しています。

また、中小規模作品でも『ミッドナイトスワン』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』『Fate/stay night』が好稼働して映画館を盛り上げています。
インターネットでも使える前売り券“ムビチケ”の全体の売り上げが前年比30%増を記録していることからも、“実は今、ヒトは映画を見たがっている”と言うのは確かなようです。

日本人は平均して年に一回は映画館で映画を見ているのですが、映画館で映画を見たいと思っている人達にとって“年に一回見るべき作品”として『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』が登場したこともまた『鬼滅の刃』の成功に関する巡り合わせの一つと言えるでしょう。

不安材料はあるのか?




公開前までは興行収入90億円台の『名探偵コナン』クラスで留まるのか、それとも100億円を大きく超えた『天気の子』の域まで達するのかと言う見立てをしていたのですが、ふたを開けてみれば、100億円の壁はやすやすと超えてしまいそうですね。

興行収入150億円を超えてくると『アバター』や『崖の上のポニョ』を超えることになり、国内興行収入歴代TOP10が見えてきます。

『天気の子』が一声足りない141.9億円で終わったのはその1週間前に公開され、結果的にこちらも興行収入100億円を超えた『トイ・ストーリー4』が最後まで併走していたことが大きかったのではないかと思います。

今回の『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』にはこういうライバルが全く不在なので、超拡大公開を長期間にわたって確保することができるでしょう。

敢えて、不安材料を挙げるなら、『無限列車編』のストーリーがいわゆる特別編的なものではなく、原作のエピソードを映画化したものなので“一見さんお断り”な作りになっているぐらいのことでしょうか。

ただ、初週のこのすさまじい勢いから見て、それこそ、今からアニメシリーズをゆっくり見始めたうえで映画館に向かっても間に合うくらいのロングランが見込めます。

1週目の勢いが2週目になってガタっと落ちるとも思えませんし、底上げに欠かせない熱心なリピーターも多数発生するでしょう。もはや100億円に届くかどうかではなく、何処まで数字を伸ばすか?に焦点が集まりつつあります。

残念なのは『無限列車編』以降の原作エピソードが120分前後にまとめるには長すぎるということでしょう。思い切った前後編などの方法もなくはないでしょうが、こと映画と言うフォーマットとマッチングの度合いで見ると『無限列車編』しかないのが実情です。

本来であれば映画のシリーズ化を狙いたいところですが、映画の『鬼滅の刃』は今回限りになる可能性が高く、そこがもったいないなと思うところです。

一つの劇場で一日40回以上の上映などということはコロナ渦の影響でハリウッド大作がなどの競合作品がないからこそなりえた、二度とない公開体制であり、それゆえに生まれた公開3日間での興行収入46億円という記録もまた、二度と塗り替えられない記録と言えるでしょう。

『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の大ヒットは映画だけなく国内エンターテイメント全体の起爆剤になってくれそうです。

(文:村松健太郎)