映画コラム

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2021年03月31日

『Eggs 選ばれたい私たち』レビュー:エッグドナーに志願した女性たちの、これからの人生

『Eggs 選ばれたい私たち』レビュー:エッグドナーに志願した女性たちの、これからの人生



子どものいない夫婦に卵子を提供するエッグドナー(卵子提供者)に志願した独身主義者の純子(寺坂光恵)と、いとこでレズビアンの葵(川井空)。

ふたりは偶然に登録説明会で出会い、同棲していた恋人に家を追い出されて泊まるところのない葵は、純子の部屋に転がり込んでいきます……。



昔も今も女性が独りで生きるには何かと偏見がはびこり続ける日本において、果たして結婚して子どもを産むことだけが幸せなのか? なぜ30歳という年齢を節目として捉えがちなのか? 性別からもたらされる差別に対する認識など、現代女性なら誰でも一度や二度は抱えたことがあるであろう忸怩たる想いが、一見淡々としつつも切実に訴えられていきます。

生理用品が1枚30円として(時にはホカロンも必要になったりします)、1日4回取り換えたら1週間で840円。それが毎月あって、初潮が15歳で閉経が50歳として計算するとトータル352800円。ちょっとした旅行ができてしまうほどの費用が女性だけかかってしまうことの理不尽を、劇中の彼女たちは「無駄」と言い捨てます。



このように一事が万事、男性には理解しづらい女性独自の悩みを感覚&論理の二面的に描出しているのが、本作の秀逸なところともいえるでしょう。

またそのことによって、最初のほうこそ女性だけの問題として本作を捉えてしまいがちであったのが、よくよく見ていくと実はこれが男女も世代も何も問うことのない、誰もが真摯に考えていかなければならないものであることにまで気づかされること必至。

結婚も出産もしたくないけど自分の遺伝子は残しておきたい欲求、エッグドナーの年齢制限が30歳であることの不安、一方では仕事のキャリアは十分ながらも結婚に焦る友人も登場するなど、人が生きている上で誰もが大なり小なり思い悩むことを、本作は慈愛をもって包み込みつつ、彼女らのこれからの人生にエールを贈ってくれているかのようです。



特に「選ばれたい!」と、自分では気づくことなく願い続けている人間臭さを否定することのない姿勢こそは、本作の最大の美徳と言えるかもしれません。

これが初の長編映画となった川崎僚監督の女性としての本音が、人としての普遍性へと変換されながら画面から醸し出されていく奇跡。

寺坂光恵と川合空の好演も特筆的で、監督&キャストもともに今後の飛躍を大いに期待したいものです。

(文:増當竜也)

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(C)「Eggs 選ばれたい私たち」製作委員会

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