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2021-12-09

「初めて“泣いてNG”を出しました」見上愛『衝動』インタビュー


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2021年12月10日公開の映画『衝動』で、あるトラウマから声を出せなくなった少女・アイを演じた見上愛。違法薬物の運び屋で生計を立てている訳ありな少年・ハチ(倉悠貴)との交流を通じ、痛みを抱えながらも懸命に生きようとする若者の姿を鮮烈に表現してみせた。

本作の監督を手がけたのは、商業映画では初監督となる土井笑生。若者の街・渋谷を舞台に、ともにつらい過去を持つ孤独な少年少女の出会いと、彼らの”生”への執着を描き出したかったと語る。



見上愛が小野花梨とともに出演した映画『プリテンダーズ』(2021)も、舞台は渋谷だった。「渋谷にご縁があるみたいです」と朗らかに語る彼女は、明るい印象の反面、今回のように一筋縄ではいかない役柄を演じることも多い。「自分のイメージを固定化させないために、いろんな役を演じたい」という見上愛に、話を聞いた。


周囲の支えを得ながら少しずつ膨らませたアイの人物像

——まず、本作への参加を決められた経緯について教えてください。

見上さん(以下、見上):土井監督から出演依頼をいただきました。当時私はデビューまもなく出演作品も少なかった頃。「どうして私にオファーをもらえたんだろう」って不思議に思った記憶があります。

ハチを演じた倉悠貴くんのことは、もともと知ってたんです。池田エライザさん監督の映画『夏、至るころ』(2020)で主演に抜擢されていたこともあり、私の周りにいる映画通の間では名が知れた役者でした。だからこそ、その相手役を私がやるのか……と最初は不安だったのを覚えています。


——本作で見上さんが演じるのは、あるトラウマのせいで声が出せなくなった少女という難しい役どころですね。

見上:はい、失語症を患った女の子の役です。ですが、声を出せない点ばかりに焦点を当てないように気をつけました。声を出せる・出せないに関わらず、言いたいことを口にできずに歯がゆく思うことって誰にでもありますよね。少しでもアイに近づくために、素の私でも想像できる範囲から少しずつ気持ちを作っていきました。

あとは、いま在籍中の大学に、カウンセラー経験のある心理学科の先生がいて、声が出せない病気についてどんな症状があるのか、メールで教えてもらいました。

——具体的には、どんな症状なんでしょうか?

見上:呼吸が浅く、常に胸が詰まっているような感覚があるんだそうです。私が演じたアイのように、過去のトラウマや衝撃によって何年も声が出せなくなることは、現実では可能性が低いんだとか。だけど、そのトラウマに似た状況を体験すると、急にフラッシュバックすることもあるみたいです。

アイに近づくのは簡単なことではなかったけど、周りの助けを借りながら、少しずつ膨らませていきました。


共演者・倉悠貴と足りない点を補い合った撮影

——物語終盤にあるホテルの一室でのシーンは、一日中閉じこもって撮影されたと伺いました。肉体的にも精神的にも、つらかったんじゃないでしょうか?

見上:ふたりである行動を起こそうとしたところ、ハチの仕事仲間に捕まってしまい、ホテルでつらい目に遭わされるシーンですね。アイは過去につらい仕打ちを受けてきたために、精神的な強さや、場を俯瞰的に見る冷静さがある子だと私は解釈していて。その反面、「今まさに酷いことをされている」現在進行形のハチの負担の方が、より大きかったんじゃないかと思います。

——倉さんは「心身ともにボロボロになった、初めて役者を辞めたいと思った」と仰っていたとか。

見上:私の目から見ても、本当につらそうでした。倉くんが役に入り切ってしまったので、私はその寸前のところで、冷静な目を保たなくちゃいけないと思ったんです。主演二人が一気にあの域に入ってしまったら、作品として成立しないんじゃないかって。



あの状態の倉くんを見てしまうと、私も涙が止まらなくなったんですよね。倉くんと見つめ合うシーンで、どうしても我慢しきれなくなって。監督には「アイの涙は見たくないから、泣かないで」と言われていたんですけど、役者になって初めて「泣いてNG」を出しました。

「泣くな」と言われちゃうと余計につらかったんですけど、更なる負荷を感じながら、感情を閉じ込めながら演じたことで、自分の中に新しい引き出しが増えたような気がします。

——共演された倉さんとは、世代も役者としてのキャリアもほぼ一緒ですね。同世代の役者同士、演技に刺激を受ける場面もありましたか?

見上:私が倉くんに刺激を与えられていたかはわからないですが、私はすごく影響を受けました。倉くんは、自分が演じる役にとことん没頭できる面があります。恐れずに自らを役に委ねられる彼の演技、見習いたいです。



——ライバル心を抱いたりも?

見上:倉くんと私では違いすぎて。だからこそ、ライバルというよりは、お互いの得意な面を活かし合っている感覚でしたね。不得意な面を補い合う形が、上手くハマったのかなと思います。今回の撮影でも、アイという役を一人で背負って頑張るというよりは、ハチとアイのふたりで頑張ろうっていう気持ちの方が強かったです。

色々な役に挑戦するために「イメージのない役者」に

——これまでの出演作を振り返って、役者としての自分にどんな表現が求められていると感じますか?

見上:ありがたいことに、いただける役柄が毎回バラバラなんですよね。

お話をいただいた作品によって、どんな演技が求められているのか、ものすごく考えます。他の共演者との関係性について自分なりに分析したり、今回の『衝動』のように監督と話し合ったり。



ただ、役者・見上愛として何が求められているのかは、まだまだわからないです。自分としては、あまりイメージを固定化させたくないと思ってます。強いイメージがない方が、色々な役がやれて楽しんじゃないかな、と。

——今後、どんなジャンルに挑戦してみたいですか?

見上:コメディをやってみたいです!

先日、阿部サダヲさん主演の舞台を観させてもらったんですけど、阿部さんのバランス感覚に憧れます。コメディって、あらゆるジャンルの中で最も難しいと思うんですけど。だからこそ、いつか挑戦してみたいです。


——コメディ作品での見上さんを楽しみにしています!見上さんにとって『衝動』はどんな作品ですか?

見上:世代によって、見ていてつらくなる方もいれば、若い頃を思い出す方もいらっしゃるかもしれません。若いからこその、行き場のないエネルギーが爆発している作品だと思います。ぜひ多くの方にご覧いただいて、自分の「衝動」に思いを馳せてください。

(スタイリスト:大石真未、ヘアメイク:飯塚七瀬、撮影:鎌田瞳、取材・文:北村有)

<衣装クレジット: タートルニットドレス/NAKAGAMI /¥35,000、箔プリントニットスカートNAKAGAMI/¥33,000、beads fringe イヤリング/Lily/¥9,400>
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