2021年12月16日

映画『偽りのないhappy end』河合優実が推察する、“ユウ”が上京した理由とは?

映画『偽りのないhappy end』河合優実が推察する、“ユウ”が上京した理由とは?


姉妹の在り方に焦点をあてた映画『偽りのないhappy end』が12月17日(金)に公開される。母親が亡くなって以来、地元に残ったままの妹・ユウ(河合優実)を心配し、東京へ呼び寄せる姉のエイミ(鳴海唯)。ギリギリまで上京することを渋っていたユウだが、ある日突然エイミの元へやってきた理由とは?

謎多きユウを演じたのは、映画『サマーフィルムにのって』『由宇子の天秤』(ともに2021年)など話題作への出演が続く河合優実。本人も「つかみどころのない存在」と称する女性・ユウを、どのような思いで演じたのか。

「置いていかれた寂しさ」がユウの原動力



——ラストシーン含め、見る人によって解釈が分かれやすい作品だと感じました。河合さん自身、本作の脚本にどのような第一印象を持ちましたか?

最初はエイミとユウの姉妹が主軸となる作品だと思いましたが、少しずつ巻き込まれる人が増えていって、それぞれの運命が変わっていく。目まぐるしく影響し合う渦みたいな様子が面白いな、とも感じました。

——河合さんが演じる妹・ユウは、物語の前半で姿を消してしまいます。ユウをどんな子だと捉えながら演じられましたか?

ユウの心の根本にあるのは「お姉ちゃんが東京へ行っちゃった」「置いていかれちゃった」っていう気持ちだと思います。地元と東京で、お互いに離れて暮らしている”寂しさ”が、彼女の行動原理だと思うので。だからこそ、エイミと一緒に東京にいかず地元に残ることで、ユウはエイミを責めていたんじゃないでしょうか。


——姉のエイミが言う「新しい人生を始めようよ、東京で」という誘いに、YESもNOも示さないユウの様子も印象的でした。河合さんにとっての「新しい人生」とは、どんなものですか。

当たり前に人生は一人にひとつしかないじゃないですか。あえて「新しい人生」と口にするのは、過去に何かあった人だけ。これまでの人生に、いったん区切りをつけている人の言葉なんじゃないかと思います。

それで言うと、エイミは「過去は過去、未来は未来」と割り切って考えられる人。だけど、ユウにはそれができなかった。「東京に行かないで私といればよかったじゃん」って素直に姉に伝えられたらいいのに、そこまで面倒な存在になりきれない。でも、何も思ってないわけじゃないからねって、わざと匂わせることしかできない子なんだと思います。

ただ、これはあくまで私の解釈です。余白のある作品なので、ご覧になった方それぞれで自由に解釈してほしいと思います。

姉妹間で大切なのは、お互いに素直になること


——河合さん自身、妹さんがお二人いらっしゃるそうですね。作品内では逆の立場となりますが、ご自身の姉妹の関係性と照らし合わせて思うところはありますか?

私の二番目の妹が、ユウに似てるんです。自分の世界が明確で、それを他人と共有するのが苦手なところが似ています。

人って無意識に、相手へ提供する情報量を調整するような面があるじゃないですか。この人には言えないけど、あの人にだったら言える、みたいな。そういった線引きが激しい点も、似ているなと感じました。

ユウも他人への壁が高い子で、繰り返し「この人とは理解し合えなくていい」と他人を切り捨ててきた。でも、姉に対しては線を引けなくて、だから姉妹関係が破綻してしまったのかな、と思います。

実際に姉である私としては、エイミに同情する気持ちもあって……。お互いに、素直になれればいいんですけどね。


——エイミへの気持ちを、他の誰かにこぼせれば楽になれたのかもしれません。それで言うと、見上愛さんが演じているユウの友人・マイは、彼女の心の拠り所になっていたのではないでしょうか。見上さんとは撮影前から友達だったそうですね。

本作は明るいシーンが少ないので、見上と「初めて一緒になったね!」と言いながら作品作りをするのは、すごく楽しかったです。でも、当時はまだ知り合ったばかりだったから無邪気に喜べましたが、もしも今あらためて親友役をやれと言われたら……恥ずかしくて、できないかも(笑)。

演じながら感じた「この作品、唯一の異質感」


——これまでの河合さんの出演作を見てみると、どの役にも”溶け込んでいる”様が感じられます。演じる上で強く意識されていることはありますか?

正直、自分ではどうやって演技をしているのかわからなくて……。ただ、答えを出し切ってから撮影現場に臨むことは少ないです。監督や共演者の方と作品を作り上げながら、無意識下で、または意識下で、色々試しながら到達した点がその役のゴールだったというような感じです。もちろん、この役にこのセリフを言わせるためには、こう振る舞わなきゃいけないな……といった流れは事前に考えるんですけど。

自分が演じる役と出会って、監督や共演者の方と撮影を重ねていく中で、最終的に”役が仕上がっていく”ような気がします。


——松尾大輔監督とは、今回どのような話をしたのでしょうか?

ユウを演じる上で私も相当悩みましたが、松尾監督も悩んでいるのが伝わりました。感情やキャラクターについて言葉で説明するのではなく、役者の考えてきたことを大切にして盛り上げていく演出をされる方なので、一緒に悩みながら、ユウというキャラクターを作り上げていった感じです。

作り手である私の悩みそのものが、少し浮世離れしたユウの雰囲気となって、画面に表れているようにも思えました。映像で見た時に、すごく違和感があったんです。どうしてこういう表情をしているのか、どうしてこういう座り方をしているんだろうか……って。

それが結果的に、ユウの持ち味になっている気がしました。自分目線だと、他の出演作には無い映り方をしているというか、異質でした。


——また一味違った河合さんの演技が見られる作品になっているんですね。今後、やってみたい役や興味のあるジャンルはありますか?

ずっとやりたいなと思っているのは、何かに夢中で打ち込んで、すごく汗をかくような題材です。スポーツで友人と競い合ったり、文化祭でバンドを結成したり。もともとダンスを長く続けているので、思いっきり身体を使うような作品は定期的にやりたくなります。舞台も挑戦してみたいです。


(撮影:Marco Perboni、取材・文:北村有、ヘアメイク:渡邊夏生、スタイリスト:李靖華<インナートップス=MSSHEEP ¥27,500 問い合わせ先info@mssheep.com>)

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(C)2020 daisuke matsuo

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