「ちむどんどん」第70回:パンツルックで出社した愛にちむどんどん。「タイム」で先送りする暢子にわじわじするー
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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。
沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。
本記事では、その第70回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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劇伴のチョイスが謎
角力大会は智(前田公輝)の優勝で終了。暢子(黒島結菜)と智は気まずい雰囲気。日射病で病院に運ばれていた和彦(宮沢氷魚)は智の優勝を聞いて落胆するも、翌朝、新聞社で愛(飯豊まりえ)の話をまた遮り、結婚できないととうとう言います。こういうとき、いい感じに新聞社(学芸部)に誰もいません。
愛はいつだって自分の話を聞いてもらえないものだから、手紙を書いていました。
記者らしく要点をまとめてみました話を聞いてもらえないことへの嫌味ですよね。
あなたが想像もできないくらい私はあなたが好きでした手紙のなかのこの一文は渾身の愛情であり、嫌味でもあるように思えます。でも愛は最後まで相手を思いやり平和的な解決をする理性にあふれています。
優しいあなたは随分悩んだことでしょう。自分を責めないでください。和彦の優柔不断かつ不誠実な態度を「優しさ」とするのです。そういうことが可能であったのは、仕事がうまくいって、パリに転勤できることになったからです。もし仕事がうまくいかなかったら和彦にもっと惨めったらしくすがっていたのではないでしょうか。仕事があってほんとうに良かった。
会社にはパンツを履いていけないと言っていた愛がついにパンツスタイルで出社したわけですが、ジャケットとパンツではなく、おそろいのベストとパンツ。ベストの裾のAラインが女性的でやわらかさがあって、ファッションに興味ある者として、女性として差別化してみたセンスが感じられました。
こうして解放された和彦は暢子がプロポーズされたと思っていてうじうじしていましたが、暢子が断ったと聞いて急に鶴見から引っ越さないと言い出します。
引っ越そうとしていたのは「智と結婚するのを見たくなかったから」とまた少年時代ふうな口ぶりをするのです。
なんだかんだで暢子と和彦が結ばれる流れになってきたとき、暢子が「タイム」と言い出して……。「タイム」って……。よくいえば天真爛漫、悪くいえば幼稚。
このときの劇伴が、よくかかる、グングン何かスケールの大きなものが近づいてくるような予感を抱かせる勢いのいいものでした。ですが、ここではなんとなくから騒ぎ感がありました。
第70回は朝ドラ名物「立ち聞き」尽くしであったことも特筆すべき点ですが、劇伴のチョイスが遊んでいる感じにも注目したいです。
まず、賢秀(竜星涼)が養豚所の清美(佐津川愛美)に「好きやんど〜」と酔った勢いで抱きつく場面。やたら場違いな清らかなヴォーカル曲がかかりました。
ふざけて見えても賢秀と清美の関係が運命であるということでしょうか。でも、途中でブツッと切れてしまうのですが……。
次は、愛が和彦に手紙を渡して颯爽と新聞社を出て歩いていく場面。出社したのにどこに行くのか。取材に行くのでしょうか。そこにかかるのは「翼をください」。愛が翼を獲得して羽ばたいたという意味で、美しいチョイスです。
お次はやんばる。優子(仲間由紀恵)と善一(山路和弘)が再婚の話をするも
なんだかお互いの認識がズレている場面。ここでは、賢秀が勝手に熱く燃えあがるようなときにかかるちょっと勇ましい劇伴。善一が本気で優子を想っていることの現れでしょうか。
「ちむどんどん」の劇伴はやたらと大仰なのですが、それが大いなる勘違いの喜劇のように作用しています。それはそれで楽しいんですけどね。
劇伴ではなくSE ですが、暢子と智が気まずいやりとりをした後に鳴る鐘の音のチョイスにも注目です。ウエディングの鐘ではないことに物悲しさが漂いました。「のど自慢」で言ったら高らかに鳴る鐘ではなく、2つ3つ鳴る不合格の鐘のようにも聞こえます。
いろんな工夫のあった第70回。第15週はシリアスになりそうですよ。しんみりできそうですね。
(文:木俣冬)
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