アニメ『チェンソーマン』OPのパロディから映画に「さあおいで」と全力でお迎えする特集
藤本タツキが大好きな映画と被ってた
そもそも、なぜ映画のパロディを?と思われる方も多いだろうが、「原作者の藤本タツキの差し金」という説が唱えられていたりもする。なぜなら、いくつかの映画はマンガ『チェンソーマン』単行本の折り返し部分で、藤本タツキが「大好き!」と宣言している作品といくつか一致しているのだ。リストアップしておこう。1巻:チェンソー
2巻:『悪魔のいけにえ』
3巻:『ヘレディタリー/継承』
4巻:『貞子vs伽椰子』
5巻:『デス・プルーフ in グラインドハウス』
6巻:『コララインとボタンの魔女』
7巻:『女優霊』
8巻:『降霊〜KOUREI〜』
9巻:『ゲット・アウト』
10巻:『ジェイコブス・ラダー』
11巻:『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』
12巻:Netflix配信の『呪怨:呪いの家』
お分かりいただけただろうか。こちらにもクエンティン・タランティーノ監督作『デス・プルーフ in グラインドハウス』、『貞子vs伽椰子』の白石晃士監督作『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』が入っているので、それぞれがどんだけ好きなのかがよく分かる。それぞれの作品で、『チェンソーマン』がどのように影響を受けたのかも、観たら分かるかもしれない。また、アニメの第2シーズンのオープニングなどでこれらの作品もパロられる可能性がある。
「田中脊髄剣」の元ネタがあった!?
ところで、マンガ『チェンソーマン』の第2部の第1話が公開された時、Twitterのトレンドに「田中脊髄剣」というパワーワードがあがったことがある。どういうことか、何を意味しているのかは、百聞は一見にしかず、ぜひ本編を読んでいただきたい。[第98話]チェンソーマン 第二部
言ってしまえば、人間(クズ教師)の脊髄を引っこ抜いて剣にするというものなのだが、それを「田中脊髄剣」と呼称するセンスが凄すぎる。筆者の子どもの頃に『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』の「アバンストラッシュ」という技のマネが流行っていたが、今の小中学生は田中脊髄剣を休み時間に披露しているに違いない(たぶん)。
そして、その元ネタなのかもしれない映画がある。2021年に日本で公開され、藤本タツキ本人がイラストとコメントを送っている『サイコ・ゴアマン』である。
なんと!#チェンソーマン や #ルックバック の#藤本タツキ 先生より
— 映画『サイコ・ゴアマン』2022.1.12💿発売🧠 (@pgjp2021) July 21, 2021
描き下ろしイラストが到着☄️
“今年一番面白かった映画でした!
最高最悪のラストでした!”
との絶賛コメントも!
予想だにしないまさかの展開に
日本サイコ・ゴアマン宣伝支部も
大興奮👾👾
7.30(金)より全国順次”襲来” pic.twitter.com/iWLNuX8pER
『サイコ・ゴアマン』は『スーパー戦隊』や『仮面ライダー』など日本の特撮へリスペクトを捧げている、しかもの宇宙怪人たちとのPG12指定ギリギリな血しぶき飛び散るバトルがてんこ盛りというアナーキーな作品である。
女子小学生の性格が傍若無人で最悪というのも特徴で、大学生の頃に女の子に自転車をひっくり返されて「お前の自転車をひっくり返してやったぞハハハ!」と言われて幸せを感じた逸話が有名な藤本タツキであれば、それは気に入るだろうなと納得できる内容である。
で、この『サイコ・ゴアマン』に田中(じゃないけど)脊髄剣があるわけだが、そこに至るまでの経緯が実にひどい(褒めてる)ので、田中脊髄剣ファンにぜひ観ていただきたい。
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映画パロディは『リコリス・リコイル』にもあった!
余談だが、この『チェンソーマン』の前にも、オープニングでの映画パロディが話題になったアニメがある。それは、原作のないオリジナル企画ながら、かわいいキャラクターが織りなす関係性(特に百合)、設定は過酷ながらギャグ多めな作風などが愛された『リコリス・リコイル』だ。このオープニングで、主人公2人が歩きながら蹴り合うというシーンは、あの『スタンド・バイ・ミー』のパロディであり、動きがめちゃくちゃ精密に再現されていた。
あと、次回予告では、かわいい女の子が好きな映画を聞かれて『死霊のはらわた』『ゼイリブ』と答えるという、なかなかに趣味の良い一幕もあった。
いずれにせよ、こうした若者にも人気のアニメで映画がパロられたり名前が出ることで、少しでも興味を持ってくれれば、なんなら観てくれれば、映画ファンの1人としてこんなに嬉しいことはない。いいぞもっとやれ。
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『チェンソーマン』の劇中にある映画へのリスペクト
さらに余談だが、『チェンソーマン』5巻収録の39話にて、デンジがマキマにデートに誘われ、夜の12時まで映画をハシゴして映画館で観るという場面がある。そして「オレ映画とか、わかんないのかも」と言うデンジに対して、マキマはこう言うのだ。
「私も十本に一本くらいしか面白い映画には出会えないよ、でもその一本に人生を変えられた事があるんだ」
わかる、わかるよマキマさん……!本当に面白い映画は十本に一本くらいしかないかもしれない、だけど、その十本の一本が人生を変えるくらいの大きな力を持つのであれば、それはけっこう高い確率だし、なんと映画は素晴らしい娯楽であり芸術なのではないか。
つまんない映画を観てしまった時でさえも、そう肯定的な考えを巡らせてくれる、このマキマさんの言葉が大好きだ。何より、映画はそのくらいの力を持っているというのは、事実だ。筆者も実際に人生が変わったよ、現在各種配信サービスでレンタル中の、十万本に一本レベルの、アニメ映画史上最高の大傑作とかで!
そして、こうして『チェンソーマン』のオープニングや、マキマさんの映画への尊い言及や、単行本折り返しの藤本タツキが大好きだと公言している映画から、若者たちが映画に興味を持ってくれることを、心から願っている。そして、それらの映画を観た後に、影響を受けている『チェンソーマン』にまた戻って映画の豊かさを知り、また映画を観る。そんな「永久機関が完成しちまったなアア~!!」になればいいと思う。
(文:ヒナタカ)
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