「星降る夜に」第8話:泣く伴を抱きしめる一星。深夜の”復讐”とは……?

吉高由里子主演、北村匠海が共演するドラマ「星降る夜に」が2023年1月17日スタート。

本作は、恋愛ドラマの名手・大石静が紡ぐ大人のピュア・ラブストーリー。人に本音を吐けない孤独な産婦人科医・鈴(吉高)と、音のない世界で自由に生きる遺品整理士・一星(北村)。10歳差の2人が既成概念をひっくり返し、新たな価値観を見せる物語から目が離せない。

本記事では、第8話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「星降る夜に」第8話レビュー

一星(北村匠海)と深夜(ディーン・フジオカ)と3人でキャンプに行き、星空を見上げながら「あの人もここにいたらよかったのかな」となぜか思う鈴(吉高由里子)。「あの人」とは、5年前に自分の妻を救えなかった鈴を逆恨みし、嫌がらせを続ける伴(ムロツヨシ)だ。

花火のあたたかい光の中で一星と深夜に囲まれた鈴とは対照的に、伴は真っ暗で寒そうな中、娘につられて星空を見上げる。その顔が、なんともさみしげだった。

伴の表情が気になる

鈴と北斗(水野美紀)が2人でいるところにも現れた伴。例のごとくこの女は人殺しで二股かけてる最低な女なんですよ、という内容をわめく伴に、北斗は怒って言い返した。

「逆恨みしてんじゃないよ!」「同じような境遇でも頑張ってる人もいるんだ」「そんなんだから、いつまでも幸せになれないんだよ!」

伴から離れ、すぐに言い過ぎたと反省する北斗だったが、視聴者としてはよくぞ言ってくれましたという気持ち。ただ危険な目に遭ってほしくはないので、ヒヤヒヤはした。

今度は深夜の家の近くで待ち伏せた伴。深夜が自分と似た境遇で、同じように妻を失い、子も助からなかったと知る。「あんたは医者だろ、一緒にするな」と憤る伴だったが、さらに深夜が妻子を失った後に医者になったことも聞かされる。気持ちがわかる気がするという深夜に怒る伴だが、深夜の話を聞いたときはショックを受けたような顔をしていた。

伴を気遣う鈴

伴のことを「あの人、私のことを殺そうとか傷つけようというのとは違う気がする」と慮る鈴。彼の中にも葛藤があるのではと感じている。
あれだけのことをされたら恐怖心や怒りが先行してしまいそうなので、なんてすごい人なんだ。

鈴の話を聞いて「俺が鈴もあの男のことも抱きしめてやる」と言う一星も、器が広すぎる。
「来い」と鈴に腕を広げるのがたまらん。

2人とも優しすぎるというか、自分に攻撃してくる人に対してそこまで考えてあげられるなんて。

深夜の”復讐”とは

鈴は深夜のことも心配していた。伴が現れてから、彼もちょっと変だという。

妻・彩子(安達祐実)とお腹の子を亡くしてから泣けていない深夜。彼女と住んでいた東京の家は、赤ちゃんを迎える準備をした状態のままになっていた。以前から食べ物を多めに買ってきてしまうのは、彩子のぶんを買ってしまうからだった。

「あの人(伴)は僕なんです。僕が暴れなくてすんだのは、鈴先生がいてくれたから」という深夜に「暴れてもいいのに」と言う鈴。深夜は驚いた様子だった。

伴に、医者になったのは復讐のためだと言った深夜。”復讐”とは、どういう意味だろうか。
少なくとも、伴のしているようなことではなさそうだ。

院長(光石研)が深夜に話しかけたシーンも印象的だった。マロニエが、スタッフにとっても帰る家であってほしいというあたたかさ。家に帰りたくない日は病院に泊まったっていいし、院長の家にきてもいいんだよ? と言う。院長の一人称が院長なの、かわいい。

一星の涙、伴の涙

一星の祖母・カネ(五十嵐由美子)がスーパーで倒れる。たまたま居合わせた深夜が救急車に付き添い、一命をとりとめた。深夜から連絡がきて駆け付けた一星。カネの派手な髪色はウィッグで、病室で眠るカネは黒髪だった。両親の葬式の際の祖母の後ろ姿を思い出す一星。

その後駆け付けた鈴に抱き着き、泣く一星。一星が座り、鈴が立っている状態のため、鈴が聖母のように見えた。その様子を病室の外から見つめる深夜。彼が泣ける日はくるのだろうか。

春(千葉雄大)から「伴の子供が一人でいるが、夕方になっても伴が迎えに来ない」という連絡を受け、向かおうとする鈴と深夜。途中で伴と会うが「今まで申し訳ありませんでした」と謝り、歩いていく。一度は別れたものの、伴の様子がおかしいとあせる鈴。もしかしたら彼が死のうとしているのではと思った2人は、伴を追うのだった。

今回も出てきた伴の回想。裁判中疲れ切った伴は、声を出して遊ぶ娘に「静かにしろ」と怒鳴り、娘は泣き出した。弁護士から電話がかかってきて「裁判で勝つのは難しい」と言っている。そのうち伴は、弁護士に返事をしなくなってしまった。奥さんのとおぼしきお墓の前で、持ってきた花束を地面に叩きつけて泣くシーンもあった。

ある夜歩いていた伴は、一星と2人でいる鈴を見かける。「なんでお前が幸せなんだよ」と怒り、嫌がらせにおよんだのだった。鈴だって決していいことばかりだったわけではないが、すべてが見えるわけではないものだしなぁ。でも、鈴の家にレンガを投げ込んだ伴は、泣いていた。泣きながら娘に「お父さん、大丈夫?」と言われて娘を抱きしめていたのだ。

伴のしたことはもちろんいけないことだが、彼もつらかったのだなと思う。誰かを憎むことでしか、自分を保てなかったのだろう。

伴は鈴の心配通り、海に向かっていた。鈴や深夜の制止も聞かず、おそらく飛び降りるつもりだ。
「あなたがいい人じゃ困るんです。嫌な人でいてください」
という鈴へのセリフが印象的だった。

もう止められないのか……と思ったとき、「お父さん!」と呼ぶ声が聞こえた。
春と一星が、娘を連れてきたのだ。

その瞬間、伴は「あああああ」と、声を上げて泣きはじめた。
一星は伴のもとに駆け寄って抱きしめ、伴は一星の腕の中で泣き続けた。

伴はずっと、誰かに抱きしめられて泣いたり、つらいね、悲しいねと声をかけてほしかっただけなのかもしれない。
誰か一人でも気持ちに寄り添ってくれる人がいたら違ったのかもしれない。

しかし、一星はすごいな。彼だけでなく、散々嫌なことをした伴に、こんなあたたかい気持ちを寄せられる他のみんなも優しい。
そして、ムロツヨシのさまざまな心の揺れを表現する演技がすさまじかった。

次回は最終回。残るは深夜の問題だろうか。
一人ひとりにとって、幸せな結末になってほしい。

(文:ぐみ)


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