映像作家クロストーク
【対談】鈴木健太 ✕ 岡本太玖斗┃20代映像作家が語り合う、僕らが好きな映像とクリエイティブ
【対談】鈴木健太 ✕ 岡本太玖斗┃20代映像作家が語り合う、僕らが好きな映像とクリエイティブ
映像ディレクターとしてKIRINJIや羊文学などのMVを監督する一方で、ポカリスエットやHonda、森ビルなど大手企業の広告コミュニケーションを手がける鈴木健太さん。そして、アートディレクター・グラフィックデザイナーとして、細野晴臣やフジファブリック、Nikeなどのアートワークを手がけながら、フォトグラファーやトラックメイカーとしても活動、最近では小林私や浦上想起などのMVディレクションも行う岡本太玖斗さん。
二人は様々な仕事をともにして、最近ではラフォーレ原宿のビジュアルも担当。若手クリエイターたちがどこで出会い、どうやって仕事をしているのか。本音で語り合ってもらった。
卒業制作のテーマに衝撃を受けた
左が鈴木健太さん、右が岡本太玖斗さん──今回は「映像作家クロストーク」で鈴木健太さんにお声がけしたところ、岡本太玖斗さんと話したいと要望があり、この対談をセッティングしました。
岡本太玖斗(以下、岡本):声をかけてもらえて嬉しいです。
鈴木健太(以下、鈴木):岡本くんは普段、グラフィックデザインやアートディレクション、音楽制作など幅広く活動しているクリエイターです。世代も近くてよく一緒に仕事しているんですけど、最近MVを監督したり映像の仕事も本格的にはじめたので、そのあたりの話もできればと思ってます。
岡本:名刺の肩書も多くなってしまいました。
鈴木:めっちゃ多いよね(笑)。
岡本さんの名刺
──そもそもの出会いから教えてもらえますか?
岡本:もともと大学時代からスズケンさんがプランナーやディレクターとして関わっていたアバンティーズの映像や微電影レーベル「37.1」、Maison book girlのMVなどを観ていました。この監督、誰だろうって調べたら「鈴木健太」って名前に出会い、しかも年齢が2つしか違わなくて。そんなに年が変わらないのに凄いなと思ってSNSをフォローしたんです。
音楽と映画の祭典「MOOSIC LAB」。当時19歳の鈴木さんがポスターなどメインビジュアルや、オープニング映像の監修した
YouTubeクリエイター「アバンティーズ」の一枚のサムネイル画像から動画の企画構成まで監修し、YouTubeチャンネルのなかでも早くからアートディレクションの概念を取り入れた
鈴木:それで僕も気になってフォローバックしたら、ある時、岡本くんが大学の卒業制作を投稿したのを見かけて。日本の省庁のロゴをアートディレクションする作品で、規模が大きいなと思いつつ、めっちゃ格好良くて。
岡本:13ある省庁のロゴマークを自分でデザインし直すという作品でした。日本の省庁にはそれぞれのマークがあるのですが、場当たり的なデザインで統一感がないし、全体で見たときに全然美しくないんです。海外では行政にまつわるデザインにデザイナーが計画的に介入する例があったりするのですが、日本ではあまり見られない。そういった部分を美しく設計することの価値が、そもそも社会に認められていない感じがして。そういう問題意識のもと制作しました。
岡本さんの卒業制作《グラフィズム》(2020年)
鈴木:この作品が気になってDMを送ったのが始まりかな。ちょうどその頃、僕が「POLARIS」(2021)という、マーダーミステリーを軸にした新しいボードゲームを考えていたところ、アートディレクターを探していたんです。それで「これ、もしかしたら岡本くんかも」と思い声をかけて、一緒に仕事をしてみたのが最初です。世代も近くて、好きなデザインやカルチャーについても話しやすいし、すごく楽しかった。
ボードゲーム「POLARIS」のパッケージ
鈴木:僕らの共通する原体験に00年代周辺のデザインや音楽があるんです。例えばCorneliusの辻川幸一郎さんのMVとか、KIRINJIや□□□とかネオ渋谷系のアーティストや、あの当時のSMAPのアートワークとか。今流行ってるY2Kともまた違う感じの質感で。打ち合わせしていても、好きなデザインが一緒だから盛り上がりましたね。
岡本:たしかに。groovisionsとかラーメンズとか、関口現さん(*1)とかね。
グラフィックデザイナーで映像作家の辻川幸一郎はCorneliusのMVを現在に至るまで数多く手掛けている。また最近では無印良品の「くらしのかたすみDAY7 - かたすみの、(2023)」などを制作
写真左から二人が好きな00年代周辺の音楽アートワークで、□□□『ファンファーレ』(2005年)、Chappie『Welcoming Morning』(1999年)、SMAP『SMAP 015 / Drink! Smap!』 (2002年)
*1…….groovisionsはグラフィック、ムービー、プロダクトなどを手掛けるデザイン集団。90年代はピチカート・ファイヴのステージビジュアルやキャラクター「Chappie(チャッピー)」などで話題になり、現在に至るまでデザインの最前線を走っている。ラーメンズは小林賢太郎 と片桐仁によるお笑いユニット。それぞれにアートや劇作家としても活躍しており2020年に解散。関口現はCMディレクターで映画監督。長編映画『SURVIVE STYLE5+』(2004年)、CM作品に『DoCoMo2.0』(2007年)などがある。
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