映像作家クロストーク

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2023年09月21日

【対談】鈴木健太 ✕ 岡本太玖斗┃20代映像作家が語り合う、僕らが好きな映像とクリエイティブ

【対談】鈴木健太 ✕ 岡本太玖斗┃20代映像作家が語り合う、僕らが好きな映像とクリエイティブ


二人が手がけた「Laforet Grand Bazar」の広告

鈴木さんがクリエイティブディレクターを、岡本さんがアートディレクターを担当した2023年のラフォーレ原宿「LAFORET GRAND BAZAR 2023」。館内全体のグラフィックと告知の映像を手掛けた

──お二人の最近の仕事にラフォーレ原宿「Laforet Grand Bazar 2023」のアートワークがあります。この仕事がどんなふうにコンセプトからデザインまで進んでいったのか教えてもらえますか?

鈴木:ラフォーレ原宿のグランバザールって、まさに自分にとってやりたかった仕事どまんなかで。本当にワクワクしました。原宿って現在進行形で小さなカルチャーが生まれて、そのカオスの中心にラフォーレがあるんじゃないかと。過去の文献なども漁っていると、ラフォーレ原宿って「インキュベーション」の意識がものすごく強い。つまり、街とともに、自らが才能を見つける場を提供し、カルチャーを育てつづける循環装置であるということ。この強烈な事実を、チャーミングなコンセプトで描けないかと思い、「メルティング・ポット」(渦中)というコンセプトを立てました。これは1920年代のアメリカで色々な人種が混ざった場所を指す言葉。原宿という場所で、クリエイター同士が影響を受け合ったり、サンプリングして新しいカルチャーを作ったり。その「溶け合い」をビジュアルにしようと話し合っていたとき、アーティストの陳文亮さんが「地球アイス」のアイデアをすぐに形にしてくれました。ふつうだったら思いつかない圧倒的なビジュアル、溶け合うということをこんな軽快な気分でアウトプットできるんだと感動し、すぐにこれでいきましょうとなりました。


岡本:ラフォーレ原宿の広告ってこれまで錚々たるアートディレクター(*2)の方々が携わられてきた仕事なので、ある意味ひとつの目標でした。どうしようと考えているときに、アーティストの陳文亮さんが浮かびました。陳さんの作るビジュアルは、すごく奇妙な感じもあるし、だけどポップにまとまっていて、変わったバランス感覚があります。都会の真ん中で、広告の歴史においても真ん中にある建物に少しズレを含んだ異質なビジュアルをインストールすることが、ちょうど今マッチしそうだなと。

*2……これまでに大貫卓也、吉田ユニ、長嶋りかこなど名だたるアートディレクターが担当しており、広告史の観点でも重要な場所である。

ラフォーレ外観
告知用のビジュアル


告知用のティザー動画。音楽をhirihiri 、Kabanagu 、phritz 、quoree 、ウ山あまね 、yuigotのそれぞれソロでも活動する6人が集まったユニット・PAS TASTAが担当

鈴木:ラフォーレってたぶん、完成することのない建物ですよね。それはカルチャーと一緒で、街とともにそのときどきで形作られていく。だから、本当に現在進行形で生きているひとたちを起用したいと思ったんです。今回の音楽を作ってくださったPAS TASTAもまさにそんな存在でした。

岡本:若いチームでラフォーレの仕事ができて、すごく嬉しかったですね。


鈴木:広告のクリエイティブって、強いタレントや人気のある人を起用することが多いんです、どうしても。けど、僕はブランドの力を信じてこれからの人を押し上げていくことがもっとないとだめだなって思ってます。広告がそういうステージになることが、永続的な文化として広告を育てていくために必要不可欠。今回のラフォーレはまさにボトムアップなディレクション。ブランドが未来のクリエイターの跳び箱になり、それがブランドのオーセンティックな価値の証明にもなる。

岡本:今回のPAS TASTAもそうですけど、ポカリスエットのCM「羽はいらない」篇(2022年)のPUNPEE、imase、Toby Foxとか、スズケンさんの音楽のディレクションは痺れるものがあります。

鈴木:広告のキャスティングってどんどん似通っていくんです。広告クリエイターには人気タレントリストの紙が渡されて、今回はこの中から選んでください、とか。でもそれって考えてなさすぎだと思うんです。必然性のある人をちゃんと選ばなきゃいけないと思います。車のCMだったら、本当にその車やブランドが好きな人を。未来にとって意味がないものは生みださない。それが作り手の責任だと思います。


2022年のポカリスエットのCM「羽はいらない」篇(2022年)のプランナーを鈴木さんが担当、柳沢翔が監督。音楽を人気アーティストのPUNPEE、インディーゲームデザイナー/作曲家のToby Fox、当時TikTokで楽曲を発表したばかりのimaseの3人が制作

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