『フロリダ・プロジェクト』ショーン・ベイカー監督インタビュー「ひと夏の冒険を楽しんで観てもらいたい」

(C)2017 Florida Project 2016, LLC. 

2018年5月12日(土)より公開となる『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』。シネマズではショーン・ベイカー監督にインタビューを実施。本作への思いや反響などについて伺いました。

──昨年度(2017年度)の賞レースを大いに賑わせました。反響を振り返ってみていかがでしょうか。

ショーン・ベイカー監督:嬉しく思います。どこの国でも普遍的にみんなが温かく迎い入れてくれたことが嬉しかったす。そしてみなさんが自分には何ができるのか、どういう風に役立てるのか言ってくれることも嬉しかったです。この作品がみんなのモチベーションになったと思うととっても嬉しいし、あまり大きい予算の映画ではないけれど、この作品がエンターテイメントとしてみなさんに響いたということが実感できて嬉しかったです。

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──映画を拝見させて頂いて、子供目線が中心に展開させる設定が(ジャンル故に)非常に斬新でした。その着想はどこからきたのですか。

ショーン・ベイカー監督:僕はもともと『ちびっこギャング』という作品が大好きで以前から子供の映画を作りたいと思っていました。100年も前に作られた作品なのに、ものすごく革新的な内容でした。子供たちが主人公の内容なんですが、実は大恐慌時代が背景の作品なんです。

『ちびっこギャング』は子供自身が感じられる喜びがよく描かれていて、子供たちの冒険やイタズラといったものを良く捉えている作品でした。そして「ちびっこギャング」は子供たちの視点から捉えた事によって登場人物のキャラクターがよく描かれていたんです。自分も子供だった時代があるわけだし、子供をもつ親であれば自分の子供にその姿を教えることができる、誰もが共感できる作品だと思ったので、それを応用したいという気持ちがありました。

アメリカは2008年にリーマンショックが起こりすぐに住宅危機が起こりました。『ちびっこギャング』も大恐慌時代という経済的に打撃を受けた時代に生きる子供たちが主人公なので、同じ様な作品が描けると思いました。子供を描いた非常に娯楽性のある物語でありながら、こういう社会問題に迫れるのではないかと考えたからです。

──本作はフロリダ(ウォルト・ディズニー・ワールド)の周囲が舞台となっています。類似の舞台は様々あったと思いますが、フロリダを選んだ理由を教えてください。また、クライマックスでマジックキングダムを選択した意図も教えてください(ディズニーを選んだという意味&複数あるディズニーパークの中でマジック・キングダムにした意味)

ショーン・ベイカー監督:製作を担当したクリス・バゴーシュが、中央フロリダへ引越すことになった母を手伝っていたんです。その時、ディズニー・ワールドのすぐ隣でモーテルに泊まっているのは観光客ではなく“家族”であることを知ったそうです。その事実を彼から聞いたことがこの映画をつくるきっかけになりました。

ディズニーワールドは子供にとって世界一幸せな場所なのにその真隣で家がなくモーテルで暮らせざるおえない人たちがいて、その対比というのがすごく印象的でした。その皮肉を通して描くことによってみんなの気持ちに刺さると思いました。そしてこの社会的問題をみなさんに知ってもらえるきっかけになると思いました。

──ブリア・ビネイトのキャスティングについて経緯やエピソードを教えてください。

ショーン・ベイカー監督:この作品のキャスティングについては自分でも驚くほどに満足しています。監督なら誰しも、なんでここにこのキャスティングをしてしまったんだ、ということが起こるんです。でも『タンジェリン』と『フロリダ・プロジェクト』では一切ありませんでした。

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この映画では、出資者やプロデューサー、ジューン・ピクチャーズが賭けに乗ってくれました。彼らは必ずしもそうする必要はないんです。彼らはこの作品に出資しています。僕は机に並んでいた全てのハリウッドのAクラスキャストやリストを机から排除してiphoneを取り出してインスタグラムの画面を見せながらこう言いました。「彼女しかいない。人生で一度も演技をしたことはないけどね」って(笑)もちろん彼らは持ち帰ると言いました。実際その場が静かにもなったし、メールでもとても心配だと言っていました。

だから僕は言いました、「僕を信じて。僕の過去の作品でも観てもらえる通り、うまくできると思う。正直まだ確信は持てないけど、とにかくブリアをニューヨークからフロリダに呼び寄せて、他のキャストと会わせてみよう。その代わり、管理人のボビーには顔がわかる役者でこの作品を地に足をつけたものにできる人を起用する。だからヘイリーにはフレッシュな新人をキャスティングすればうまくいく」とね。

──ブレアとブルックリンが初めて一緒に共演したときどうでしたか?

ショーン・ベイカー監督:劇中ではお母さんと娘という関係性だけれど、最初ブリアに姉と妹のような気持ちで演じて欲しいと、お願いしました。

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ヘイリーはとっても若い母親だしまだまだ自分が未熟なところがある、からそういうふうにお願いしたんだけど、初めて一緒にテスト撮影をしてもらった時に、彼女がそのことをしっかり頭に入れて、ブルックリンとフィフティ・フィフティな関係で演じてくれました。一緒に楽しい時間を過ごしているような、母と娘よりも姉妹のような関係性を作ってくれて、それに対してブルックリンも答えてくれました。最初のテスト撮影の時はも僕も知らないような流行っている曲を二人で歌いまくっていましたね。

──ブルックリン・キンバリー・プリンスは天才子役と呼ぶにふさわしい熱演でした。キャスティングについて経緯やエピソードを教えてください。

ショーン・ベイカー監督:ブルックリンとジャンシー役のヴァレリアはこの映画で大親友になりました。撮影期間の前に1ヶ月間準備期間がありましたが、いろんなワークショップを経て撮影に挑んでくれました。撮影が始まって1週間半でブルックリンにとって大変なシーンの撮影がありました。彼女は涙を流さなくてはいけなくて、涙を流すきっかけがヴァレリアと別れなければいけなくなってしまったらどうしようと思いながら演技をしてくれたようです。ヴァレリアと築いた友情を上手く演技に反映してくれました。

──ウィリアム・デフォーはアカデミー賞ノミネートにまで至る反響でした。キャスティングについて経緯やエピソードを教えてください。

ショーン・ベイカー監督:ウィレムは驚くべき役者ですね。今現在も現役で活躍している俳優の中でも明らかに最高の俳優の一人だと思います。

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彼は何者にもなれるです。とても高いレベルで。観客は彼の顔は認識できても、数秒後には、彼がウィレム・デフォーだということを忘れてしまうほどに完全に役になりきるんです。この作品で彼は完璧なフロリダ・マンであるボビーになりました。実は彼は前日に姿を現さなかったんです。彼はとても真面目な俳優で、とても早く現場入りし、何人かのモーテル支配人に実際に会って、彼らの特徴や考え方を学んでいました。

モーテルにの前につる訪れるシーンがあるけれども、もともとあのつるは敷地内に住んでいて朝になるとくちばしでガラス窓をバンバンバンと叩いて朝ごはんをくれとやってくるです。そのつるたちに観光客がジャンクフードや餌を与えるのが日課になっていました。

観光客が来る前にウィレムのシーンを撮らなければなりませんでしたが、つるがいたから僕の思いつきで急遽つるとウィレムのシーンを撮影しようとしました。今回は『タンジェリン』よりも規模が大きい作品だったから誰の指示なのかわからないようなこともたくさんあり、インディーズでやってきた僕としてはやりづらかった部分もありました。そのシーンを朝撮影しようとまとまっていたのに急に全員メールが来て、「絶滅に瀕しているつるだから撮るな、触るな、すぐそこから退去しろ」という連絡が来たんです。

「何かがあったら犯罪になる」ということが書かれていたんですけれども、僕はウィレムに「よし、今撮ろう!」と言って撮影しました。「あそこに行って帰って来てくれ」という指示だけをして。ウィレムが劇中で” no foul. No fowl.”(字幕では“鳥だけに命取り”という訳)というセリフも完全にアドリブです。実はカメラの後ろでつるがバタバタしながらもワンテイクで撮ったシーンでした。

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──映画の本筋からずれますが、監督にとって日本はどのような印象ですか。ポジティブな面でも、映画にちなんで貧困的な意味でも構いませんので教えてください。

ショーン・ベイカー監督:僕は2004年に初めて日本に来て以来、日本が大好きです。ただ、日本に来ていたといっても正直東京の中心地しかいないから、その印象になってきてしまうけれど、エネルギーに溢れていて、イキイキしていてすごく清潔だなという印象があります。

──モーテル×貧困というものは、日本ではそこまで馴染みのない構図です。日本人には本作をどう感じてほしいですか。

ショーン・ベイカー監督:僕はこの映画をみてムーニーたちと一緒にちびっこギャングの一人としてひと夏の冒険を楽しんで観てもらいたいと思っています。子供のときのひと夏は、何もかもが新鮮で新しいものを発見し目を見張ってしまうような体験が多く、そのような感覚子供は強く持っています。ムーニーはこのひと夏をとても楽しんでいるので、みなさんも一緒に参加するような感覚で見て欲しいと思います。

『フロリダ・プロジェクト』ストーリー概要

6歳のムーニーと母親ヘイリーは定住する家を失い、世界屈指の観光地であるフロリダ・ディズニー・ワールドのすぐ外側にある安モーテル「マジック・キャッスル」でその日暮らしの生活を送っている。周りの大人たちは厳しい現実に苦しむも、ムーニーはモーテルに住む子供たちと冒険に満ちた毎日を過ごし、そんな子供たちをモーテルの管理人ボビーはいつも厳しくも優しく見守っている。しかし、いつまでも続くと思っていた大好きなママや仲間たちと過ごす楽しくて夢のような日々が、ある出来事がきっかけとなり…。

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