映画コラム

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2018年09月13日

『響-HIBIKI-』の平手友梨奈がとんでもない「5つ」の理由

『響-HIBIKI-』の平手友梨奈がとんでもない「5つ」の理由



 Ⓒ2018映画「響 -HIBIKI-」製作委員会 Ⓒ柳本光晴/小学館 



「ちょっと凄いものを見てしまった…。」

それが映画『響-HIBIKI-』を見終わって最初に感じた想いです。

感想や感情を整理するのが追い付かない、そんな中でスクリーンのど真ん中にドーンと立っていたのが欅坂46不動のセンター平手友梨奈でした。

改めて、映画の奇跡ってあるんだな、映画の神様っているんだなとそんなことを思いました。

ただ、それで終わってぼーっと想いにひたって突っ立ているだけではいけません。そこで、この記事では、何がどう凄かったのかを整理しながら進めていきます。

原作者と監督の代わりのない大本命・平手友梨奈一択の単推しだった。


原作者の柳本光春、監督の月川翔。二人がそろって鮎喰響は平手友梨奈しかいないという想いを抱いていました。

月川監督は昨年から約一年間ラブコールを送り続けて“平手響”を実現させました。

原作者の柳本光春にいたっては2年以上前、欅坂46のデビューシングル「サイレントマジョリティー」のPVを見て以来ずっと実写化なら平手一択という想いがあったと語っています。

つまり鮎喰響を現実世界で動かそうとしたときにそれを託す存在がかっちりと決まっていたということになります。



実現した鮮烈すぎるデビュー


少しキャリアがあったりしても映画で主役級に抜擢され、実質的映画で世に出たスターというは長い映画の歴史の中で本当にたくさんいます。

日本で、ちょっと前で言えば『野生の証明』→『セーラー服と機関銃』という流れで一気にアイドルになった薬師丸ひろ子、『時をかける少女』の原田知世がまさにそれ。

最近で言えば何といっても『海街diary』の広瀬すずでしょう。“すず”という名前の役に選ばれた“すず”という名の女優。映画の神様の存在を信じてしまう瞬間です。

先日この広瀬すずと平手友梨奈が対談するという企画があり、目撃された方もいらっしゃるのではないでしょうか?

何と表現したものか難しい境地にいる二人の若き女優の2ショットは強烈な絵でした。



孤高すぎる、唯一無二の天才にシンクロしきった平手友梨奈


ちょっと過激な表現になりますが、鮎喰響というキャラクターは(特に映画では)サイコパス、ソシオパスのようなキャラクターです。

サイコパスなどという言葉を使うと『羊たちの沈黙』のレクター博士のようなイメージにつながるかもしれませんが、あくまでもメンタルの障害であって、そういう人たちが全員怖い人になるわけではありません。

こういう人たちはそのエキセントリックな性質の裏返しでアッと驚く独創性や行動力を見せることもあって、芸術家や企業家として大成することもあります。

この響というキャラクターと、月川監督が語る“繊細さと脆さを見せながら、天才とかカリスマとかいう言葉だけでは表現しきれない魅力を持っている”平手友梨奈という存在が高すぎるシンクロ率を見せました。

平手自身「(今後の女優としての活動は)何でもかんでもやっていくことはない(中略)自分で決めたものは面白くするまで徹底的に納得して追い求めていく」と語っていて、この辺りの性質は天才鮎喰響そのものといっていいでしょう。

身体能力の高さのマッチング具合はおまけと程度です。そのくらい本質部分でシンクロしています。



 Ⓒ2018映画「響 -HIBIKI-」製作委員会 Ⓒ柳本光晴/小学館 




主役級も名バイプレイヤーもまとめて喰った。


とにかく“平手友梨奈”推しな映画『響-HIBIKI-』ですが、彼女を囲むキャストの豪華さ、幅の広さを忘れていけません。

月川監督は『君の膵臓をたべたい』で注目を浴びて、その時も浜辺美波と北村匠海という新星を羽ばたかせましたが、その一方で小栗旬と北川景子という主役級で実績と信頼のある二人を起用して作品に安定感を与えました。

『響-HIBIKI-』でも小栗旬と北川景子という“キミスイ”組に重要な役どころを任せています。北川景子には響の担当者花井ふみ役を、小栗旬には響と対極にいる作家山本春平役を託しました。

これに村上春樹を彷彿とさせる大ベストセラー作家祖父江秋人に吉田栄作、ふみの上司に高嶋政伸。響と出会う作家陣に柳楽優弥、北村有起哉が並びます。

また祖父江の娘で響に友情と嫉妬の入り混じった感情を持つ凛夏に映像作品としては、久しぶりのアヤカ・ウィルソンが登場します。これに野間口徹や笠松将、板垣瑞生などのベテランから若手まで質の高い陣容が並びました。

この質・量ともに素晴らしい面々を平手友梨奈は響としてどんどん喰っていきます。もちろん周りが助演モードになっているのは確かですが、本当に清々しいほどにさらっていきます。

基本的に平手友梨奈のワンサイドゲームの中で意外な善戦しているのが、“昔売れていた作家”鬼島を演じた北村有起哉です。



 Ⓒ2018映画「響 -HIBIKI-」製作委員会 Ⓒ柳本光晴/小学館 




響からいきなり飛び蹴りを喰らうのですが(これが平手のクランクインシーン!)その後、自身の中にあった認めたくない感情を響によって引き出されてを素直に認め、作家を生業にする者の宿命をさらりと響に示して見せます。

双方の即興アドリブが入ったこのシーン、短い時間のやり取りですが見逃し厳禁ですよ。

|『響-HIBIKI-』という映画について


映画『響-HIBIKI-』はクールでシュールな映画です。映画はキミスイと同じように二つの世界を物語が行き来します。

片方は響や凛夏の過ごす高校生活パート、もう一つがふみや作家陣が生きる出版の世界。子供の世界と大人の世界といっていいかもしれません。この二つを繋ぐのが孤高の天才鮎喰響とベストセラー作家を父に持つ凛夏です。

ただ、この二つの世界は最後まで交じり合いません。響と凛夏が作家としてデビューしたり、ふみが引率役で動物園ではしゃいだりもしますが、それも“接点どまり”です。

普通の映画だとどちらかの世界がもう片方に寄り添っていくように作りがちです。例えば響の窮地の場に高校の仲間が駆け付けるというような展開もなくはないのですが、この映画はではそれはありません。

そして、クライマックスでは芥川賞・直木賞をW受賞した響と4度目の正直ならずの春平が激突します。ここもウェットにしようと思えばいくらでもウェットになりそうなところですが、響は「他人が面白いと思った小説に、作者の分際でなにケチつけてんの?」とドライに突き放します。そこから続く物語はブラックな笑いともいえるようなシュールでクール終わり方をむかえます。まるで鮎喰響その人のような…。



 Ⓒ2018映画「響 -HIBIKI-」製作委員会 Ⓒ柳本光晴/小学館 




薬師丸ひろ子はデビュー作『野生の証明』で高倉健・松方弘樹・夏八木勲・三國連太郎といったビッグスターに囲まれていたのですが、存在は翳むどころか輝くばかりでした。

広瀬すずも『海街diary』で四姉妹の三人の姉が綾瀬はるか・長澤まさみ・夏帆という並びでしたが『海街diary』が誰の映画かといえば間違いなく広瀬すずの映画でした。

映画『響-HIBIKI-』もまた問答無用で平手友梨奈の映画です。彼女そのものが映画になったという感じです。アイドル映画・ベストセラーコミックの実写化という枠組みはもちろん、話題作、注目作という枠組みからもはみ出るような映画、それが『響-HIBIKI-』です。

この映画、必見です。

(文:村松健太郎)

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