ジャッキー・チェン愛をこじらせる私が見てきた「アクションの変遷」

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ジャッキー・チェン。言わずと知れた香港の、いや世界のアクションスターであり、もはや「ジャッキー・チェン」という一ジャンルを築き上げた偉大なる存在だ。ブルース・リー作品に(世代的に)触れなかった筆者を“カンフー映画好きの少年”へと仕立て上げたのは、間違いなくジャッキー映画だった。

■小学生男子、ジャッキーアクションにハマる

正確にはジャッキーの名を一躍有名にした『ドランク・モンキー 酔拳』や『クレイジー・モンキー 笑拳』がヒットした際に、筆者はまだこの世に生まれてすらいない。つまりジャッキーが名を上げていく瞬間をリアルタイムで追っていたわけではないが、筆者が多感な少年期を過ごした時代には『プロジェクトA』に『スパルタンX』、『ポリス・ストーリー 香港国際警察』といったヒット作が繰り返しテレビで放送されていた。

ポリス・ストーリー/香港国際警察(吹替版)

やんちゃ盛りな少年たちがジャッキー映画に触れるとどうなるか。翌日学校の教室で男子たちは“カンフーごっこ”に興じ、見よう見まねでその動きを再現した。子どもながらにジャッキーが映画で見せるコミカルさを取り入れたカンフーは「面白い」と理解していたし、ジャッキーとともに活躍するサモ・ハン・キンポー&ユン・ピョウの存在もしっかりチェックして、「オレ昨日ジャッキーやったから今日ユン・ピョウな!」とそれぞれを演じ分けたものだ(いや本当に)。

とにかく幼少期の筆者にとってジャッキー映画は、とにかく「面白カッコいい」という位置づけであり、ひたすら“カンフーそのもの”に興奮していた。言い換えればストーリーは二の次であり、むしろジャッキー映画とはいえストーリーを理解できるほど作品とは向き合えていなかったと言える。それでもやはり『プロジェクト・イーグル』のような冒険譚に興奮し、あの香港実写版『シティーハンター』すらも「ジャッキー映画として大好き」と受け止めているほどだった。

■ハリウッドで成功を収めた『レッド・ブロンクス』

言うなればジャッキーは筆者にとってカンフーの魅力を教えてくれた伝道師であるが、中学生の時に観た『レッド・ブロンクス』では、ふといつもと違う雰囲気に気づく。

レッド・ブロンクス(字幕版)

もちろんジャッキー映画としてはこれまでと同じ、いやそれ以上にハードアクションに挑んでいるのだが、いつもの空気感とはどこか違う。そこで初めて『レッド・ブロンクス』がハリウッドで大ヒットを記録した作品であり、ジャッキー自身もともとハリウッドを意識していた作品だと後から知ることになった。

振り返ればジャッキーは既にハリウッド作品に出演していたが、筆者がリアルタイムでジャッキーのターニングポイントを垣間見たのは『レッド・ブロンクス』が初めての瞬間だった。折しも筆者は別の作品で映画好きとして覚醒し、「映画は劇場で観るべき」と決意したタイミング。その年に日本で公開された『ファイナル・プロジェクト』で初めてジャッキー映画を劇場で鑑賞しており、名古屋駅前に当時あった「毎日劇場」地下スクリーンが筆者の“ジャッキー映画劇場鑑賞デビュー”の地となった記憶は今でも忘れられない。

その後ジャッキーは『ラッシュ・アワー』で、クリス・タッカーと絶妙なコンビネーションを見せてヒットを記録。

ラッシュアワー (字幕版)

このころには筆者も作品そのもの(ストーリーを含め)と正面から向き合うことを学んでいて、その上で「ジャッキー映画はなんて面白いんだ」と改めて痛感する。ストーリーの中で必要とされるアクションと、実は巧みなまでに計算された上で繰り広げられていたジャッキーのカンフー。それらが軽妙なストーリーと絡み合うことで、ジャッキー映画の魅力は成り立っていると知ったのだ。

■『ドラゴン・キングダム』でジェット・リーとバトル!

そんなジャッキー出演作について、筆者の中で1つの通過地点となった作品がある。ジャッキー世代の後継たるリー・リンチェイことジェット・リーと初共演を果たした、ハリウッド作品の『ドラゴン・キングダム』だ。

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『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズを筆頭にリンチェイファンでもあった筆者からすれば、2人の共演はご褒美以外の何物でもない。それどころか2人のカンフー対決まで用意されていて、感極まるどころの話ではなく一周回って宝物のシーンとなった。

と同時にどこか寂しさというか、「あぁジャッキーも後進に胸を貸す年齢になっていたのだな」としんみりしてしまったのも事実(もちろんそれ以上に作品を楽しんだが)。いつまでも変わらない、変わらないと思っていたジャッキーも、リーと並ぶと相応の年季を感じてしまう。それ以降ジャッキーの新作映画を観るたび「ジャッキーも年を重ねたなぁ」と感じるようになり、ついには『ライジング・ドラゴン』でジャッキー本人から本格アクションからの引退宣言が飛び出す。

30年以上ジャッキー映画を観続けていた筆者にとって、「なるほど“推しの引退”とはこういうものなのか」とこの上ない寂しさもあった。ところがそんなセンチメンタルな感情を返してくれと訴えたいほど、ジャッキーは現役でバリッバリのカンフーアクションを今なお見せてくれている。もちろん以前に比べてセーブしているのだろうと感じさせるが、それでもジャッキーが築き上げてきたスタイルは不変。とりわけ『カンフー・ヨガ』に至っては実に活き活きとしたカンフーを披露し、インドとの合作映画らしく笑顔でダンスまで見せているのだ。そんなジャッキーの姿は筆者が最も慣れ親しんだ80・90年代のジャッキーと重なるものがあり、懐かしさと嬉しさのあまり劇場でおいおいと涙が溢れていた。

■「シリアスなジャッキーは見たくない」というホンネ

さて、少し話が変わるが筆者にとってジャッキー映画とは、“コメディアクション”という刷り込みが非常に強い。もちろんシリアスな場面もあるが、やはりジャッキーにはコミカルな演技&アクションが似合うと(勝手に)理想像を求めてしまう。ところが90年初頭の出演作『炎の大捜査線』は、明らかに毛色が違った。サモ・ハン・キンポーも出ているしきっと面白いだろうと鑑賞した幼き筆者には、あまりにも“いつもの”ジャッキー作品からは遠いところにあった。刑務所を舞台に特殊工作員に指名される男たちの悲哀が描かれ、ラストシーンに相当のショックを受けたことを今でもはっきり覚えている。

『炎の大捜査線』がトラウマになってしまった結果、シリアス路線のジャッキー映画は避けるようになってしまったというのが本音だ。実を言えば日本を舞台にした『新宿インシデント』も未見のままなのだが、そんな「シリアスなジャッキー映画は観(れ)ない」というルールを科していた中、1つの転機が訪れることに。ジャッキーが笑顔を封印して復讐に燃える男を演じた、『ザ・フォーリナー 復讐者』の公開が始まったのだ。

■ジャッキーアクション健在なり!

『ザ・フォーリナー 復讐者』は中国やアメリカなどでは2017年に公開されており、日本で公開は決まらずともネットニュースなどでたびたび話題になっているのを目にしていた。監督が『007 ゴールデン・アイ』『007 カジノ・ロワイヤル』のマーティン・キャンベルであることや、共演がピアース・ブロスナンであることも上がってくる記事をチェックさせる要因だったのだろう。既に鑑賞を終えた人からはジャッキーの変貌ぶりに驚く声が上がり、正直なところそういった文面を読んでやはりスルーすべきかと考えていた。

ところが日本で公開が始まるとやたら高評価が目に留まり、さらには「ジャッキーアクション健在」との評も見られるではないか。老けメイクもあってこれまでになく年老いて見えるジャッキーだが、それでも“アクション健在”とはこれいかに。その文言に惹かれてついに「完全にシリアスなジャッキー映画」を観たわけだが… なるほどこれは確かに面白い。家族を失い悲観に暮れるジャッキーを見るのは辛いものがあるとはいえ、だからこそ笑顔を封印したジャッキーの演技がより重厚に映える。さらにアメリカ軍特殊部隊出身という過去を持ち、次々に破壊工作を進めていく様はジャッキーという存在感が実に説得力を与えていた。

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そしていざ格闘戦になると、そこには筆者が子どものころから知っているジャッキーがいた。徒手格闘に階段を使った高低差あるアクション、森林内での1対1のファイト…。そこには紛れもなくジャッキー“らしさ”があり、観る者に十分なインパクトを与えるアクションが詰まっているではないか。

しかも作品の魅力はジャッキーのアクションだけではない。冒頭で発生するロンドン市内での爆弾テロを皮切りに、北アイルランドのテロリズムを浮き彫りにさせるリアルな展開。しかもピアース・ブロスナン演じる北アイルランド副首相を中心とした人物関係も、現在と過去の因果が複雑に絡み合う。徐々に明かされていく“キャラクター本来の人物像”も、キャスト陣の好演によって観客に驚きを提供するはず。決して表面的・画一的にはならないサスペンス・スリラーとしてしっかり成立し、リアルなほど冷淡な視点ながらもぐいぐいと物語に引き込まれていくのだ。

ジャッキーアクションに爆弾テロの脅威、二転三転する物語などそれらの要素をまとめ上げたキャンベル監督の手腕は見事で、さすが『007』シリーズの仕切り直しのたびに呼ばれる監督といったところか。『007』シリーズはサスペンスフルでありながらあくまでエンターテインメント性を打ち出しているが、『ザ・フォーリナー 復讐者』では実際に血で血を洗う抗争が頻発していた北アイルランドの背景をなぞっていることからも、ロンドン市内でのテロやイギリスとの緊迫した情勢に迫真性が与えられている。

■まとめ

御年65歳のジャッキー・チェン。作品を追うごとにその表情には老いを感じるものの、アクションや存在感は全く色褪せることがない。ジャッキーアクションに出会ったあのころの日々と、何ら変わることなく「次はどんなアクションを見せてもらえるのだろう」と胸を高鳴らせられるなんて、映画ファンとして実に幸せなことではないか。ジャッキーの若かりしころといえば常に危険と隣り合わせで、恒例化していたエンディングのNG集では大ケガを負った姿も映し出されていた。「無理はしないでほしい」と願いつつ、ジャッキーの新作アクションを楽しみに待ちたい。

(文:葦見川和哉)

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    葦見川和哉

    葦見川和哉 映画が好き。旅が好き。小説が好き。 映画開眼と同時に映画音楽の魅力にも取りつかれたサウンドトラック収集家。

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