シャマラン完全復活!『スプリット』が継承するヒッチコック調ミステリー

■「〜幻影は映画に乗って旅をする〜」

スプリット サブ

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5月12日から公開される、M.ナイト・シャマラン監督の最新作『スプリット』。

もちろんシャマランの作品といえば、その徹底した〝秘密主義〟がおなじみとなっている。だからというわけではないが、この作品はシャマランファンであればあるほど、エンディングはおろか、その内容について語ることも最小限に留めておきたいところだろう。

こちらとしても、できるだけまっさらな状態で観てもらいたいと思うので、鑑賞前の方はこれより下の本文をあまり読まない方がいいと、一応忠告をしたうえで、これだけは最初に言っておく。

「『エアベンダー』と『アフターアース』を除いたシャマラン作品で、見逃しているものがあったら観ておいたほうが良い」

<〜幻影は映画に乗って旅をする〜vol.30:M.ナイト・シャマラン完全復活!『スプリット』が継承するヒッチコック調ミステリー>

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心を閉ざし、孤独な生活を送る女子高生ケイシーは、ある時クラスの人気者クレアの誕生パーティーにお情けで呼ばれ、渋々出席する。迎えが来ないケイシーを、クレアの父親は快く送り届けると言い出し、クレアと友人のマルシアとともに車に乗り込んだ矢先、見知らぬ男がクレアの父親を襲撃する。目を覚ましたケイシーたちは、殺風景な密室に閉じ込められ、そこに神経質そうな一人の男が現れるのだった。

ジェームズ・マカヴォイが、多重人格の男を演じるという前情報は、それほどこの映画の本質に影響はしない。23人格を持つとされる男の、最も危険な24番目の人格が出現するというシチュエーションを聞けば、ダニエル・キイスが記した実在の人物〝ビリー・ミリガン〟を想起する人も少なくないだろう。しかし、あくまでもそれは、シャマラン映画に恒例の〝マクガフィン〟のひとつに他ならない。

これまで、シャマラン作品には徹底された〝ヒッチコック・オマージュ〟が行われてきているように、〝マクガフィン〟を巧妙に扱い、観客を翻弄するというのはシャマランの恒例行事なのである。さらに、自身が作品にカメオ出演したり(今作でも彼の姿を確認することができる)、酷似したストーリーラインを使って独自の解釈を加えたりと、ヒッチコック作品を知っていればその面白みが倍増するものばかりである。

そんな中、今回の『スプリット』では、ヒッチコックの代表作でもある名作『サイコ』に対する強烈なシンパシーを、否が応でも感じてしまうのだ。

サイコ (字幕版)

映画史の伝説ともいえるサスペンス映画の金字塔として、一生耳から離れることのないバーナード・ハーマンの音楽と、映画の表現規制をかいくぐりながらもスリリングに表現されたシャワーシーンなど、語り尽くせぬ同作。

「映画史に残る悪役」として、未だに上位に君臨するアンソニー・パーキンス演じるノーマン・ベイツのキャラクターは、今回のジェームズ・マカヴォイの(デニスだかバリーだかケビンだか)原点になったことは間違いない。

ノーマン・ベイツといえば、稀代のマザコン殺人鬼である。今回のマカヴォイが見せるベティ・バックリー演じるフレッチャー医師に対する執着の強さは、明らかにそれと重なる部分があるといえよう。また、『サイコ』が映画で初めてトイレを映したという逸話に対する敬意の表れか、本作の劇中で少女たちにトイレを掃除させるという場面が登場するというのもコネクションのひとつだろうか。

それにしても、前作『ヴィジット』で復活の兆しを見せたシャマランにしては、かなり正攻法の作品を作ってきた印象を受けた。そのせいで多少油断し、あのラストシーンに尚更驚かされてしまったのである。

先日、来日したシャマラン自身が、彼の代表作のひとつとのリンク、そして次回作の構想を発表したわけだが、その報道は本作の衝撃を半減させてしまうのではなかろうか。正直もう少し待ってくれれば、と、世界からかなり公開が遅い日本の洋画事情を悔しく思うばかりだ。

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(文:久保田和馬)

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    ライタープロフィール

    久保田和馬

    久保田和馬

    久保田 和馬 1989年生まれ。映画評論家/映画ライター/映像作家。フランス映画とアジア圏の映画をこよなく愛する。大学時代からの自主制作の延長で映像制作を行い、2013年から文筆業を開始。「図書新聞」へ映画評の寄稿、「リアルサウンド映画部」への寄稿など。

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