「スター・ウォーズ」と「宇宙戦艦ヤマト」の、意外に深い関係について

スター・ウォーズ/フォースの覚醒

(C)2015 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved

「スター・ウォーズ」は、おっさんのもの?

先輩 「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は見た?

後輩 もちろんですよ。

先輩 昨年最後に見た映画が「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」で、今年最初に見たのが「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」のIMAX 3Dバージョンだった(笑)。

後輩 好きですねえ・・・・。

先輩 これまでに3回見たけれど、最初に見た時は、ラスト15分は涙が止まらなくて・・・。

後輩 そういう人ってけっこういるみたいですね。

先輩 僕らはなんたって最初の「スター・ウォーズ」をアメリカ公開から1年待って、ようやく見た世代だからな。思い入れの度合いが違う。筋金入り。

後輩 「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の出来が良いことは認めますよ。でも、巷で言われているように「最初に接した世代に対して、過剰接待」との指摘もうなずける。

先輩 うん。それは感じるよ。手厚く接待をしてくれた、J.J.君には悪いけど。僕らはうれしいけど、若いヤツはどうなんだろう?という疑問は確かに残る。

後輩 僕の周囲では「映画としては面白いけれど、自分たちは今回、観客の対象じゃないように感じる」って意見がありました。

先輩 まあ結局、「スター・ウォーズ」ってシリーズは、おっさんのものだからなあ。

後輩 おっさん・・・だけのものではないでしょう?

先輩 やっぱりエピソードⅣからの初期3部作、「新たなる希望」と「帝国の逆襲」「ジェダイの復讐」は、圧倒的に面白かったもん。ふと気づいたんだけど、今度の「フォースの覚醒」の作り方って、「宇宙戦艦ヤマト2119」に似ているなあ、と。

後輩 ヤマトですか? よりによって、あのヤマト!!

先輩 何というか、リブートに対する姿勢が、とても似ているように感じたんだよ。「ヤマト2199」の場合はリブートと言うよりリメイクと言うのが良いかな。とにかくベースになるストーリーがあって、放射能除去装置を受け取りに、ヤマトが旅をするというあたりは変わらない。

後輩 でも、設定とかキャラクターは、けっこう変えてましたよね。

先輩 そうなんだけど、出渕裕総監督たちメインスタッフは、オリジナルに最高のリスペクトを表しつつ、今の時代に相応しく、今の科学に照らし合わせて、それらを取り入れていった。それはとても緻密な作業だったと思うけど、結果的に大成功だった。

後輩 なるほど。

先輩 「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の場合は、ストーリーこそJ.J.とローレンス・カスダンがオリジナルで作ったけれど、とりわけエピソードⅣ「新たなる希望」から「ジェダイの復讐」を踏襲していたり、明らかにオマージュを捧げているカットもふんだんにあって、それが最初のシリーズを知る世代に受けた。

後輩 「ヤマト2199」の場合はどうだったんですか?

先輩 うん。作っている人たちが、最初のヤマトをリアルタイムで見て多大な影響を受けた人たちだから、オマージュ満載かと思いきや、そうでもない。むしろ冷静にオリジナルの良いところと悪いところを分析して作った感じがしたな。だからか僕の知り合いで「ヤマト2199」を「八方美人的なリメイク」と評した人がいてね。

後輩 ああ、ニュアンスは分かります。特に最初の世代が「今度のは、オレらが愛したヤマトじゃない」って拒否反応を示さないように、細かなとこまで気を使う。そうすると、総花的になりがちですよね、確かに。

先輩 でも、思うんだけど、八方美人で何が悪いんだ?皆が見て楽しめれば、それで良いじゃないか。それは「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」も同じ。おっさんたちへの過剰接待だとしても、それを若い観客やお子ちゃまたちが見て「なんだか分からない」って言うんだったらよくないけれど、多少の違和感こそ感じても、映画として面白い。楽しめたってことだったら、それは成功だと思うんだ。

「『スター・ウォーズ』の新作を作る資格があるのは、
『スター・ウォーズ』を憎むことが出来る人」とは名言!

後輩 J.J.エイブラムスという監督は、「スター・トレック」でもシリーズの再生を果たしたわけで、こっちはまったくのリブートだった。でもこれが実績になって、「スター・ウォーズ」の新シリーズ1発目の監督に起用されたと見て間違いないですよね?

先輩 そうだと思うよ。「スター・トレック」の時は、パラマウントの上層部が「一切口出しするな。彼にすべて任せろ」との指令を出したそうだし、今度の「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」でも、パンフレットによるとルーカスは「J.J.には電話1本しなかった」と。まあお目付役にカスダンがついていたからな。

後輩 リブートやシリーズ再生がうまい監督だとは思いますよ。たぶん世界で一番のリブート屋かと(笑)。でも、この人って監督として何をやりたいの?って疑問もふつふつと湧いてきますよね。

先輩 でもね、J.J.って単なるリブート屋じゃないぞ。それはルーカスフィルムの社長に就任して、「フォースの覚醒」の製作を指揮したキャスリーン・ケネディがこんなことを言ってるんだよ。「『スター・ウォーズ』サーガの新作を撮る監督に必要なのは、『スター・ウォーズ』を憎むことが出来る人」と。これは名言だと思うよ!

後輩 なるほど。よーく分かります。ファン気質丸出しでやられたら、新しいことが出来なくなるし。

先輩 「憎むことが出来る」というのはいわば比喩だけど、それだけ冷静な視点が必要だということだろうね。だからやっぱりJ.J.の起用は成功だったんだよ。「スター・ウォーズ」の大ファンとしての面も持っているけど、いざ仕事となれば、シリーズの良いとこも悪いとこも把握して、冷静な判断をくだすことが出来る。これもまた「ヤマト2199」のスタッフの姿勢と共通するところだね。

「スター・ウォーズ」のおかげで、ヤマトは得をした。

先輩 ヤマトの話に戻るけど、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を見て「ヤマト2199」を思い出したってぇのは、この2本が、僕の記憶の中では繋がってる。最初の「スター・ウォーズ」を1978年の夏休みに見た、現在のおっさん世代には、そういう人が多いんじゃないかな?

後輩 どういうことですか?

先輩 「スター・ウォーズ」がアメリカで公開されたのが、1977年5月25日。当初日本では12月に「惑星大戦争」との邦題で、正月公開を予定していたんだ。ところがアメリカでの当たり方が凄いというので、日本公開は1978年夏に変更され、邦題も原題カタカナ表記で「スター・ウォーズ」と改められた。

後輩 そのぐらいのことは、僕だって知ってますよ。

先輩 ただ、新聞とか当時のメディアは「スター・ウォーズ」のアメリカでの大ヒットを、早くから報道していたし、雑誌でも扱われていた。それで「これから世界的なSFブームが来るぞ!!」みたいな風潮になったわけだよ、影響されやすい我が国としては。

後輩 でも、「スター・ウォーズ」の公開は1年後なんでしょ?

先輩 だから、それに代わるようなSF映画がないかってことで探したら、1977年8月に公開される、1本のアニメ映画があった。それが「宇宙戦艦ヤマト」。実際、1977年の夏の新聞記事を読んでいると、文化面に「『スター・ウォーズ』全米で大ヒット」って見出しと「『宇宙戦艦ヤマト』、再放送で人気を集める」なんて記事が隣り合わせで載っていたりする。

後輩 なるほど。にわかSFブームに乗ったというか、まだ見られない「スター・ウォーズ」に代わって、ヤマトが代打みたいな感じで新聞に紹介されたんですね。

先輩 そのことが「宇宙戦艦ヤマト」の知名度を全国的に高め、ヒットに結びついた。SFブームを先取りしたかった、メディアのおかげだね。

興収100億円突破。最終的に「ファントム・メナス」を超えるか?

後輩 それはそうと、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の興行はどうなんですか?

先輩 好調だよ。正直、オープニングが予想よりも低かったからどうなるかと思ったけど、正月三が日あたりから、ぐんぐん興行成績が伸びてきて、ついに1月31日には累計興収100億円を突破した。

後輩 ほほお、それは凄い!!

先輩 プレスリリースによると「1月31日(日)までで累計動員数647万453人、興行収入101億314万7400円。ここまでにかかった日数は僅か 45 日と、公開 52 日で 100 億円を超えた『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』 (最終興収 109 億円)を上回るペース。日本において洋画と邦画で 100 億円を突破したのは『アナと雪の女王』以来約3年ぶり、実写作品では『アリス・イン・ワンダーランド』以来約6年ぶりとなる」とのことだよ。

後輩 最終的にはいくら行きますかね?

先輩 うーん・・・100億円突破してから、さてどこまで数字が伸びるかといえば、読みづらい時期ではあるんだよ。これまでの「スター・ウォーズ」は、すべて夏休みに公開されているから、その点有利だったしね。

後輩 確かに、この種の映画は夏休みのほうが有利ですよね。

先輩 でもまあ、120億円ぐらいは行くかな? あくまで僕の野性のカンだけどね。

後輩 過去のシリーズ作品は、どのくらいの成績だったんですか?

先輩 シリーズで一番ヒットしたのは「エピソード1/ファントム・メナス」で、これが126.7億円。1999年7月の公開だから、シネコンが各地に出始めた頃だな。2002年7月公開の「エピソード2/クローンの攻撃」は興収93.5億円、2005年7月公開の「エピソード3/シスの復讐」は興収91.7億円と。

後輩 すると「フォースの覚醒」が仮に興収120億円あげたとしても、「ファントム・メナス」にはかなわないってことになりますね。

先輩 そうだね。なんとか「ファントム・メナス」を破って、シリーズ新記録を樹立して欲しいけど、こればかりは様子を見てみないと分からない。1月23日から公開された「信長協奏曲」が、予想以上の強さを見せていることからも、今後の推移には注意が必要だろうね。

後輩 ロングラン興行を目ざすとなると、リピーターが出てくれないと。

先輩 それもけっこういるんじゃないかな? 僕の周囲では、1回目は2Dバージョン、2回目はIMAX 3D、3回目は4DXって、全バージョン制覇を狙うように、繰り返し見ている人がいるよ(笑)。

後輩 それはまあ、最初から見ている世代ですから・・・。

先輩 だからさあ、繰り返し言うけれど、「スター・ウォーズ」はおっさんのものなんだから、いーんだよ、これで!!!

後輩 はいはい、分かりましたよ!

「役に立たない映画の話」関連記事

「スター・ウォーズ」と「宇宙戦艦ヤマト」の、意外に深い関係について

「ジョーのあした」の辰吉丈一郎が「クリード」を見たら、どんな感想をもらすだろう?

タランティーノの「ヘイトフル・エイト」を70ミリ・フィルムで見ると、どこがどう違うの?



 

(企画・文:斉藤守彦)


    ライタープロフィール

    斉藤守彦

    斉藤守彦

    斉藤守彦(さいとうもりひこ) Morihiko Saitoh 静岡県浜松市出身。映画館、ビデオ会社でのアルバイトを経て、映画業界紙「東京通信」記者 (後に編集長)に。1996年からフリーの映画ジャーナリスト/アナリストとなり、以後多数の劇場用パンフレット、「キネマ旬報」「HiVi」「ザテレビジョン」「日経エンタテインメント!」「宇宙船」「スターログ日本版」「INVITATION」「東京カレンダー」「アニメ!アニメ!」「フィナンシャル・ジャパン」「Pen」などの雑誌・ウェブメディアに寄稿。2007年秋に「日本映画、崩壊 -邦画バブルはこうして終わる-」を、08 年「宮崎アニメは、なぜ当たる -スピルバーグを超えた理由-」、09 年「映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?」、 10 年に「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか」(共著) を上梓。 他の著書に「図解でわかるコンテンツ・ビジネス」1〜4(共著)、「ソノラマ MOOK/ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(構成・執筆) 、電子書籍「日本映画、飛躍と困惑の過去・現在・未来」等があり、ここ数年は「映画宣伝ミラクルワールド」「80年代映画館物語」と、独自の視点による書籍を執筆。2016年3月には新作「映画を知るための教科書 1912−1979」が世に出る。現在、水道橋博士編集長のメールマガジン「メルマ旬報」で「2016年映画館物語」を連載中。また「BOOKSTAND映画部!」で、「映画を待つ間に読んだ、映画の本」と「映画惹句は、言葉のサラダ」の2つの連載を行っている。

    ピックアップ

    関連記事

    新着記事