『T-34』はガルパンファンも必見の、この秋イチ押しの傑作戦車映画!

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現在全国で『ガールズ&パンツァー 最終章4D~第1話+第2話~』が公開中です。

ご存知、茶道や華道と並ぶ乙女のたしなみ戦車道(ンなアホな!)に青春を懸けた女子高校生たちの新たな闘い=試合(そう、戦車道は柔道や剣道、弓道などと同様、あくまでもスポーツ競技であり、決して戦争ではありません!)を描く最終エピソード全6部構想の中の最初の2話(というか、まだここまでしか出来ていないのです……)を4D化(画面に応じて座席が振動したり、煙や水しぶき、光などの物理的効果が加味される)してお届けするもの。

『ガールズ&パンツァー』(通称ガルパン)はアニメ・ファンのみならず戦車をこよなく愛するミリタリー・ファンや戦争映画ファンなどにも熱く支持され、爆音上映に加えて4D上映も大盛況。戦闘シーンに応じて大きく振動する座席のダイナミズムはまさに戦車に乗ってる気分!

しかし、今回ご紹介したいのはガルパンではなく、ガルパンおじさん(ガルパン・ファンは年配層が割と多いことから、よくこの呼称が用いられます)も大満足の本格戦車映画なのです……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街415》

その名も『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』!

そう、ガルパンおじさんならT-34と聞くだけでソ連軍を主体とした本格派の戦争映画であることもすぐに認識できることでしょう!

T-34を駆っての
決死の収容所脱出劇

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー
』は、第二次世界大戦下の1941年ロシア戦線の雪原から始まります。

ソ連軍のニコライ・イヴシュキン(アレクサンドル・ペトロフ)は敵戦車の砲弾を読みながら逃走に成功した実績を買われて、基地に残された最後の戦車T-34を駆る小隊の車長として、ドイツ軍戦車隊の奇襲を命じられます。

ドイツ軍イェーガー大佐(ヴィンツェンツ・キーファー)率いるナチス戦車隊に対し、ニコライは的確な指揮で善戦し、ついにイェーガーのⅢ号戦車と一騎打ちになりますが、死闘の果てにニコライらは捕虜となり、収容所に送られてしまいました。

それからおよそ3年後の1944年、テューリンゲン州の強制収容所を訪れたイェーガーは、かつて自分を戦場で打ち負かしたニコライがそこに囚われていることを知り、鹵獲していたT-34を砲撃演習の動く標的としてヒトラーユーゲント戦車兵の訓練を実施すべく、戦車を操縦できる捕虜を選ぶよう彼に命令します。

希望をなくして生きる屍と化していたニコライでしたが、命令をきかなければ捕虜兼通訳の女性アーニャ(イリーナ・ストラシェンバウム)を殺すと脅され、やむなく3人の仲間を抜擢して戦車小隊を編成。

しかし、その過程で彼らは6発の砲弾を見つけ、訓練を利用してT-34を駆ったままの収容所からの脱走を企てます……。

と、ここまでのあらすじを読んでアレ? と思われた方はツワモノ戦争映画ファン。

そう、1965年のソ連映画『鬼戦車T34』と本作は非常に似たストーリーなのですが、それもそのはず、どちらも同じ実在の事件を基に映画化されたものなのです。

ただし実際の事件および『鬼戦車T34』の時代背景は1942年ですが、本作は1943年と微妙に異なります。

またどちらも実在の事件をベースにしながら、かなりのフィクションを独自に施していることなどから(本作では主人公と通訳ヒロインとのラブストーリーも展開されます)、本作は『鬼戦車T34』そのもののリメイクではなく、あくまでも実在の事件を基にした二度目の映画化作品といったほうがふさわしいようです(まあ、OK牧場の決闘を題材に『荒野の決闘』や『OK牧場の決斗』『ワイアット・アープ』などさまざまな西部劇映画が作られていることと同じ感覚ですかね)。

戦場の恐怖を追体験できる
究極のエンタテインメント

さて、本作の魅力はやはり何といってもソ連軍戦車T-34を用いた壮絶な戦闘描写の数々にあるでしょう。

映画前半の戦いに登場するのはT-34-76、後半の逃走に用いられるのはT-34-85。

ソ連時代から本物の兵器を用いた戦争映画大作を連打し続けてきたロシア映画界ですので、当然今回も本物メインではありますが、さすがに第2次世界大戦終結から75年近い歳月が流れていることもあってか、現在ロシア国内に動かせるドイツ軍戦車はほとんどなく、今回の撮影でも本物そっくりのレプリカに若干CG処理を施したものを使用しているとのこと。

しかし、鉄と鉄が軋みあうかのような戦車戦のリアリティは、それこそ最近は「絶対に人が死ぬことがない」という安全設定の下で繰り広げられるガルパンばかり見慣れていた身としては、改めて恐怖と驚愕の一言!

外観としてのバトルの迫力もさながら、戦車内に小型カメラを複数台取りつけて、狭苦しい中での兵士たちの地獄のような緊張と緊迫をあますところなく捉えた諸描写、特に敵の砲弾がかするだけで車内は衝撃と耳をつんざく金属音で失神しかねないなどの究極の恐怖が、これでもかといわんばかりに描出されています。
(これはガルパンの聖地と呼ばれる東京・立川シネマシティをはじめとする爆音上映で、ぜひとも鑑賞していただきたい! ついでに4D上映もどこかでやってくれないかな)

本作は日本にもファンの多いロシア映画界の名匠ニキータ・ミハルコフが製作に名を連ねています。また監督のアレクセイ・シドロフは当時の戦争を戦った全ての戦車兵に深い敬意の念を表するとともに、彼らが当時どのような過酷な状況下に置かれていたかを観客に実感してもらいたいといった趣旨で演出に臨んでいます。

戦車映画といえば最近ではブラッド・ピット主演の『フューリー』が記憶に新しいところですが、こちらも負けず劣らずのド迫力!(個人的趣味で申せば、本作のほうが断然好みです)

ガルパンの次回作を待ちきれない方はもとより、戦車に興味はないけどダイナミックな映画に飢えている方、ただただ面白い映画を見たい方などへ、この秋イチ押しの傑作エンタテインメント映画が『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』であると断言させていただきます!

(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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