「ちょっくら映画館に行ってきました。」~第1回:アミューあつぎ映画.comシネマ~

■「キネマニア共和国」

今回よりシネマズby松竹の新企画!
全国各地の名物映画館を訪問し、その魅力をご紹介していきます!

「ちょっくら映画館に行ってきました。」 vol.1

第1回:アミューあつぎ映画.comシネマ
(神奈川県厚木市)

アミューあつぎは小田急小田原線本厚木駅東口から歩いておよそ5分、厚木市の新たなランドマークとして作られた複合施設で、その9階が映画館としてふたつのスクリーン(174席&58席)および多目的ホール(112席)を設けている。

今回は、同館を運営する㈱シーズオブウィッシュ代表取締役の青山大蔵さんにお話をうかがった。
青山大蔵支配人(右)青山大蔵支配人(右)

厚木市に再び映画の灯を!

「もともとここは厚木パルコで、東京テアトルさんが経営する《厚木テアトルシネパーク》という映画館が入っていたのですが、2008年に厚木パルコが撤退し、映画館も閉館しました。

そうしたところ、閉館後も多くの厚木市民から『映画館復活』の強い要望が継続的に市に寄せられたことで、厚木市をオーナーとする映画館がオープンすることになったのです。厚木市に映画の灯が再びともることになったのは実に6年ぶりのことで、厚木市民の映画に対する情熱が引き起こした小さな奇跡でした。

もっとも、それでは映画館の運営をどうしようということになり、市がいろいろな興行会社をあたってみたとのことですが、一度閉館した映画館に興味を示すところはどこもなかったようです。
そんなところに、ちょうど渋谷でミニシアター再生運動をやっていた私にお声がかかり、現地を拝見しましたところ、そっくり今のままの状態で綺麗に残されていたものですから、思わず『私がやります!』となったのです(笑)」

ただし、行政の契約相手は法人でなければということで、青山さんが当時取締役を務めていた㈱デジタルプラス(現 ガイエ)で運営するという契約を取り付け、2014年の4月にオープンすることになり、1年過ぎた今は地域に根付いた映画館として定着。
現在は厚木に運営会社を新設したが、館名はそのまま映画.comの名を残している。

「実は東京の事務所はまだガイエさんの一角をお借りしてやっています(笑)」

そんなアミューあつぎ映画.comシネマだが、要するに厚木市がオーナーであるテナントの一角を、市民サービスの一環として、低額で借り受けて青山さんたちが運営している映画館なのである。

「つまりハードウェア一切は行政ですが、ソフトウェアはすべて民間でお願いします、という形ですね。
そして厚木市に賑わいを取り戻してほしい、市民に支持される映画館を運営してほしいという、これが行政から私たちが課せられた使命でもあるのです」

会員は2000人を突破
どんな映画かわからなくても「とりあえず見る!」

この1年のラインナップだが、どちらかといえば良質だが地味なミニシアター作品で占められている。

「実はこれってリクエストの賜物なんですよ。劇場にリクエストカード箱を設置して、それをもとにスタッフで検討して毎回ラインナップを決めています。お客様からは『これで渋谷や日比谷のミニシアターに行かなくて済む』と、喜んでいただいています(笑)。
業界向けプレスシートもご自由にお持ち帰りください!業界向けプレスシートもご自由にお持ち帰りください!

またメジャー作品はお隣の海老名駅にシネコンがあるので、そこでは見られない作品を地元で見たいということで、実はミニシアター需要というものがすごくあったことに私たち自身も驚いているのです。

ですから正直、東京で当たらなかった作品でも、うちでは満杯になって配給会社の方々がびっくりなんてこともしょっちゅうですね」

会員制度を設けていることも、映画館独自の観客を育てるのに有効であったという。

「3つのコースに分かれておりまして、いちばん負担の少ないエントリー・プランは鑑賞料金800円で年会費2400円、厚木市に在住・在勤・在学の方は2000円、そして厚木市在住の65歳以上の方向けの助成となるシルバーチケットをお持ちの方は1000円となっております。
スター・プランは鑑賞料金800円+無料鑑賞券3枚進呈して年会費3400円、厚木市在住の方が3000円、シルバーチケットをお持ちの方が2000円。
セレブプランは鑑賞料金500円、無料鑑賞券3枚進呈して年会費5400円、厚木市在住の方は4860円、シルバーチケットをお持ちの方は3860円。

これによってシニア層のお客様がとても多くなりまして、しかもみなさん、うちでかかる作品はすべて見たいといった気運が芽生えたのか、『どんな映画かわからないけど、とりあえず見る!』と(笑)。

土日になると、朝から夜までずっといらっしゃる方も多いですね。 500円というワンコインで済む割引料金が心理的にもリーズナブルなのかもしれません。『もう病院に行かなくてもいいや』なんておっしゃる方もいらっしゃるくらいで(笑)」

つまり、病院を社交場にしがちなシニア層が、翻して今は映画館へ通うようになっている⁉
会員数2000人を突破!会員数2000人を突破!

「朝、ここに来たら誰かしら知っている人がいたりして、いつのまにかコミュニティの場になっています。

また、うちは高齢者保養施設に認定されていまして、助成金も出るのですよ。ですからその分鑑賞料金を安く提示できるのです。

さらにビルの8階には子育て支援施設がありまして、そこにお子さんを預けて映画をご覧になれるシステムも作り上げております」

また驚くことに、自治会と行政の協力によって不定期ではあるが、無料送迎バスも出ているのだという!

「身体的に外出困難な高齢者や障碍者など映画を見たくても見に行けない方はたくさんいらっしゃいますので、そこで市や自治会、ボランティアが共同で、公民館にマイクロバスを出すことにしたのです。
みなさん、外の華やいだところに出向きたいというお気持ちもおありですし、そこで映画を見ながら気持ちをリフレッシュさせていただいているような気もいたしております。
ですから普通、映画館って平日の朝は入らないものですが、うちは割と満員になったりしています」

こうした努力が実を結び、会員は1年経った現在2000人を突破し、その平均鑑賞本数は何と27本!

「最高で140本という方もいらっしゃいます。時間があるからここに来たとおっしゃる方や、リピーターの方も多いですね。
また見終わって『よかったよ』とか『駄目、全然ダメ!』とか、スタッフに忌憚のない感想を述べて帰っていかれる方もいっぱいいらっしゃいます」

意外なのは、新作ミニシアター作品は定期的に当たるのだが、クラシック作品が当たらないのだとか。

「以前『ローマの休日』をかけたとき、予想より入らなかったのですよ(苦笑)。みなさん実は新しい作品を求めていらっしゃるようで、その意味では感性が若い」

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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