『ラーヤと龍の王国』レビュー:「信じる」ことを訴えるディズニー3DCGアニメの傑作!
■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT
コロナ禍の影響でなかなか新作映画の劇場公開が滞りがちな中、ようやくディズニーが新作を映画館でお披露目(ディズニープラスのプレミアアクセスと同時公開)。
それだけでもありがたいところなのに、さらにこの『ラーヤと龍の王国」は、少なくとも自分がこれまで見てきたディズニーの3DCGアニメーション長編映画の中でも最高傑作ではないか!と叫びたくなるほどの素晴らしい出来栄えを誇っています。
うっかり人を信じてしまったがために龍の石を壊してしまい、世界崩壊の危機を招いてしまったラーヤ。
彼女は“最後の龍”シスーの力を借りて石を元に戻し、世界を平和に戻そうとしていきます。
とにもかくにも今回、脚本の構成が秀逸で、しかもそれを具現化していく演出のストーリーテリングもお見事。
とかく奇跡の安売りが多くなってきている巷のファンタジーものとは一線を画し、ミラクルというものはこういうところで繰り出すのだという、見る側の整理に見合ったテンポや感情などがきちんと配慮されています。
また日本のアニメが自己犠牲を描くことが多いのは、モノクロ版「鉄腕アトム」からの良くも悪くもの伝統でもありますが、海の向こうのディズニーは決してそういった悲壮感に溺れることなく、あくまでも「信じる」というモチーフを核とした前向きな展開もなされています。
(思わずジェームズ・キャメロン監督の『アビス』を彷彿させられました)
この「信じる」、世界中に不信感ばかりがはびこりがちな昨今、改めて大事なことであるかと!
これをおろそかにしたとき、世の中は……?といった切なる願いをもって訴えられているのも、本作の大きな美徳のひとつでしょう。
一見悪役に思えそうなキャラクターにも「実は……」といったエクスキューズを与え、敵にこそ理解を求めようとする姿勢もまた、理想論かもしれませんが今こそ大切な要素ではないかと思えてなりません。
一方でディズニー映画ならではのオモシロ要素にも怠りはなく、シスーはもとよりアルマジロのトゥクトゥクなどキャラクター個々の魅力も特筆もの。
中でも盗っ人ベイビー・ノイ(2歳児!)の造形やキャラ構築、その動かし方などは報復絶倒+可愛らしさの極致で、映画を見ながら黄色い悲鳴が飛び交うこと必至。
ディズニー・アニメとしては『ムーラン』さながらの本格的オリエンタル・テイストへの挑戦となりましたが、今回は特定の国に限定されることなく自由な世界観を創造できたことも成功の一因でしょう。
ジェームズ・ニュートン・ハワードの音楽も久々に映画音楽の醍醐味を堪能できる優れもので、もう一事が万事、至れり尽くせりの傑作、快作、名作として強くお勧めしたい次第です!
(文:増當竜也)
『ラーヤと龍の王国』作品情報
イントロダクションその時代に生きる人々を象徴するかのようなヒロインを描いてきたディズニー映画。<王子様を待つヒロイン>は時代とともに個性と強さを持つようになり、自らの力で立ち上がり、観客一人一人の背中を押してくれる大きな存在となってきた。
世界中に大旋風を巻き起こし新たなるプリンセス像を確立した『アナと雪の女王』のエルサとアナ、ヒロインの心情を歌い上げる楽曲と共に大きな共感と感動を呼んだ『モアナと伝説の海』のモアナ。待望の続編として大ヒットとなった『アナと雪の女王2』に次ぐ最新作となる本作からは、さらに新しいディズニーのヒロイン像を予感させる孤高のヒロイン “ラーヤ”が誕生した。
ラーヤは、聖なる龍の力が宿るという<龍の石>の守護者一族の娘。遠い昔に姿を消した “最後の龍”の力を蘇らせ、再び世界に平和を取り戻すため、一人旅立つ――
“ひとりぼっち”じゃ、世界は変わらない―
彼女の名はラーヤ。
バラバラになった世界の“最後の希望”。
自分だけを信じ、“ひとりぼっち”で生きてきた彼女は、
“伝説の龍”の魔法を蘇らせ、仲間を信じることで、世界を取り戻すことができるのか?
ストーリー
その昔、この王国は聖なる龍たちに守られ人々は平和に暮らしていた。邪悪な魔物に襲われた時龍たちは自らを犠牲にして王国を守ったが残された人々は信じる心を失っていった…。
500年もの時が流れ信じる心を失った王国は、再び魔物に襲われる。聖なる龍の力が宿るという<龍の石>──その守護者の一族の娘、ラーヤの旅が始まる。遠い昔に姿を消した “最後の龍”の力を蘇らせ再び王国に平和を取り戻すために…。
予告編
基本情報
出演:オークワフィナ/ケリー・マリー・トラン 日本語吹替版:吉川愛/高乃麗/森川智之
監督:ドン・ホール/カルロス・ロペス・エストラーダ
製作国:アメリカ
公開日:2021年3月5日
上映時間:108分
配給:ディズニー
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