『ちはやふる 下の句』はロジカルに“個”と“全”の力を描いた変化球バトル映画!

ちはやふる -下の句-
(C)2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社

かるた競技に賭ける青春の瑞々しさ、卓越された演出、戦いのロジックがうまく構築された脚本、キャラクターの魅力、出演者たちの熱演などで、絶賛を浴びた日本映画『ちはやふる 上の句』。その2部作の完結編となる『下の句』が公開されました。

世間的には『上の句』のほうが評価は高いようですが、自分はこちらも大好きな作品となりました。その理由を、以下に記します。

1. ロジカルに“個”と“全”を描いた物語になっている。

『上の句』は、仲間を集め、お互いに高めあいながら勝利を目指すという王道の“スポ根”ものの映画として完成されていました。
では『下の句』はどうかというと、“競技での勝利”そのものではなく、“個”と“全”の強さについて、あらゆる面からロジカルに描いた作品になっていたのです。

たとえば、本作のラスボスとして君臨する詩暢(しのぶ)は、たったひとりで練習してきたことにより強くなった、かたくなに“個”の力を信じてきたキャラクターでした。

これに対して主人公たちは“全”のチームとして団体競技に挑む……と思いきや、簡単にはそうならない。それどころか、“ひとり(個)で戦おうとする”展開までもがあるのです。
それが具体的にどういうものかはネタバレになるので書けないのですが、『上の句』から物語を観ていた人であれば、登場人物の行動を“勝手”と思う反面、その気持ちも理解できるはずです。

そして、『下の句』の全編において “個” と“全”がぶつかり合うシーンが幾度となく描かれます。
『上の句』が競技かるたを直球で描いた作品であるなら、『下の句』は“個” と“全”が戦い合う、変化球のバトル映画と言えるでしょう。

それでいて、みんなで仲良くしたほうが強い、“全”は“個”の強さにも勝る、という安易な帰結にもなっていません。
あらゆる面がロジカルに構築され、説得力がありつつも、最終的な判断は観客に任せる、という卓越した脚本には感服しました。

ちはやふる -下の句-
(C)2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社

2.全2部作であってこその構成になっている。

『ちはやふる』の原作マンガは、“小学生編”から時系列通りに描いていましたが、映画では小学生のころの出来事を“回想”として描いています。
映画は “過去”と“現在”を同時に描きながら、登場人物の謎を解き明かしていくという内容。そのため、『上の句』での新(あらた)というキャラクターが抱えた想いは、『下の句』にて理解できるようになっているのです。

それだけでなく、『上の句』では描かれなかった登場人物の活躍とさらなる成長も、『下の句』でわかるようになっています。
一見してぶっきらぼうな肉まんくんの気持ち、『上の句』で多くの人の共感を呼んだ机くんのさらなる成長、かなちゃんの古典オタクっぷりが生かされる場面があり、キャラクターのことがより好きになれました。

ところで、百人一首には、“上の句の決まり字(そこまで読まれれば、その札だと確定できるという部分)を見ると、残りの上の句と下の句がわかるようになる”という要素があります(これは、『上の句』で原田先生が告げていたことでもありました)。
かるた競技において上の句と下の句がセットであるように、映画『ちはやふる』も『上の句』があってこその『下の句』が存在しうるという内容になっているのです。

本作を観て、いかに“前後篇(2部作)”として完成された作品で世にあるか、ということを思い知らされました。

(1)前編だけでしっかり満足できるカタルシス(高揚感)がある
(2)前編と後編で違うテーマを用意している
(3)前編だけでは描ききれなかった、さらなるキャラクターの魅力が後編でわかる
(4)前編で描かれた登場人物の想いは、後編でしっかりと明かされる
(5)題材である百人一首の“上の句があってこそ下の句が決まる”という要素を、そのまま2部作という構成に生かしている。

“前後篇”という構成に、ここまで見事に作品の魅力を落としこんだ映画は、類を観ないのではないでしょうか。
決して“上映時間が足りなかった”“より多く稼ぐため”といった製作上の都合だけではありません。そこには、確かな作品への敬意を感じるのです。

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(文:ヒナタカ

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    ヒナタカ 映画ブログ「カゲヒナタのレビュー」運営中。All Aboutでも映画ガイドとして執筆中。映画に対しては毒舌コメントをしながら愛することをモットーとしています。

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