可憐、奔放、そして美しい——昭和映画を彩った由美かおるの軌跡

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映画女優・由美かおるの軌跡──スクリーンに刻まれた多彩な表情

1966年、映画『夜のバラを消せ』でスクリーン・デビューを飾った由美かおる。

以来、彼女はアイドル的存在から体当たりの演技で知られる女優へと、時代とともに変化しながら映画界に足跡を残してきた。

ここでは、彼女の代表的な出演作を4作品を取り上げ、その演技と作品の魅力を振り返る。

■『海はふりむかない』(1969年9月17日公開/松竹)

(C)1969 松竹株式会社

主演は西郷輝彦と尾崎奈々。

由美かおるは“ゴーゴークラブの歌手”として特別出演ながら、スクリーンに華を添える存在感を見せています。

シーンに登場する彼女の姿は、物語の中の若者たちの自由や欲望、刹那的な空気感を象徴するような“都市の幻想”そのもの。

台詞が少なくとも、眼差しや佇まいで観客の視線を釘付けにするその存在感は、若き日の由美かおるの“映画的な資質”を明確に示していました。

(C)1969 松竹株式会社


■『コント55号とミーコの絶体絶命』(1971年8月7日公開/松竹)

(C)1971 松竹株式会社

コント55号の萩本欽一・坂上二郎の軽妙な掛け合いの中、由美かおるはヒロイン・中川秀子役として、作品の“心”を担います。

病身の母と妹を支えるため昼も夜も働く女性――その健気さと芯の強さは、観客の胸を打たずにいられません。

彼女を巡って兄弟が揺れ動き、時に滑稽で、時に切実な人間模様を生み出す中、由美かおるのナチュラルな芝居と美しさが、物語を優しく、けれど確かな存在感で包み込んでいます。

■『同棲時代-今日子と次郎-』(1973年4月14日公開/松竹)

(C)1973 松竹株式会社

“同棲”という言葉に時代の息吹が宿っていた1970年代、上村一夫の人気劇画を原作とする本作で、由美かおるはヒロイン・今日子を体当たりで演じています。

自由に生きたい、でも愛を求めたい。そんな矛盾を抱える女性の繊細な心情を、由美かおるは静かなまなざしと深い情感で表現。

美しいだけでなく、切実な“生”の重みを背負った今日子像は、観る者に強く焼きつきます。

女性の欲望と孤独を等身大で演じ切った、代表作のひとつ。

(C)1973 松竹株式会社

■『しなの川』(1973年11月3日公開/松竹)

(C)1973 松竹株式会社

雪国・新潟を舞台に、由美かおるが演じるのは良家の令嬢・雪絵。

昭和初期の封建的な社会において、自由と愛を求めてもがく女性の姿を、凛とした気品と哀しみに満ちた演技で魅せました。

川面を背景にたたずむ彼女の姿は、まるで一幅の日本画のよう。

艶やかでありながら芯の強さを併せ持つ雪絵の人物像を、由美かおるは全身で表現しています。

文学性の高い作品世界においても、彼女の美と演技力は一際輝いています。

(C)1973 松竹株式会社

“由美かおる”という名の美意識

どの作品にも共通して感じられるのは、由美かおるという女優の“美”の奥にある「強さ」と「品格」です。
単なるアイドルやマドンナでは終わらない。スクリーンの中で生きる彼女は、常に時代と真っ向から向き合い、女性として、人間としての誠実さを映し出してきました。

あの頃の映画を振り返ることで、今の時代にも通じる“女性の生き方”が見えてくる。由美かおるのフィルモグラフィーは、そのきらめきを今も私たちに教えてくれます。

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『海はふりむかない』
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『コント55号とミーコの絶体絶命』
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『同棲時代-今日子と次郎-』
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『しなの川』
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