大泉洋主演・映画『駆込み女と駆出し男』鑑賞前に読みたい書籍4冊
『東慶寺花だより』(著・井上ひさし/文春文庫)
映画『駆込み女と駆出し男』の原作です。原作者・井上ひさしさんが10年以上の時をかけて紡いだ遺作です。女性から離婚を申し出ることが江戸時代にできた数少ない駆込み寺である鎌倉・東慶寺を舞台に、東慶寺に駆込む女性と、東慶寺門前に立つ御用宿・柏屋の居候・で離婚調停人の中村信次郎(大泉洋さんが演ずる役です)を描いた人情味溢れる小説です。
映画の中で、大泉洋さんは圧巻のセリフ回しを見せます。まさに『立て板に水』といった感じで、本作の魅力の一つとなっています。ただこのセリフ、原作を読んでおいて言葉の意味を知っておくだけでさらに楽しめるのではないかなと思いました。
例えば江戸時代に結核を意味した『労咳(ろうがい)』という言葉、あまりなじみのない現代で「ろうがい」と聞くと『老害』を思ってしまいませんか?
そういったことが映画鑑賞中に起こると脳内で補正しているうちにストーリーは進んでしまい…という悪循環になってしまいます。
短編集だった原作を1本の映画にしているのでストーリーが読めてしまう、ということは無いのではないかと思っています。ですので、大泉洋さん演ずる中村信次郎のセリフをあらかじめ目にすることが出来る本書を読まれることはぜひお勧めしたいです。
『お江戸離婚ものがたり』(著・川嶋すず/主婦の友インフォス情報社)
日本の縁切寺研究の第一人者・高木 侃さんを監修に迎え、柔らかい線が美しい漫画化・川嶋すずさんが縁切寺にまつわる7つの実話を漫画にしたものです。
『お江戸離婚ものがたり』と書いて『おえど みくだりはん ものがたり』と読みます。江戸時代の離縁状は3行半の文書で済み、『三行半』を『みくだりはん』と読んだのですね。
1つ1つのストーリーが要点を捉えて展開され、ストーリーに関係する縁切寺のルール(寺法)や当時の江戸文化、漫画のもとになった実話が解説されるようになっています。縁切寺やそれにまつわる人々の動きが分かるため、映画のシーンや人々が何を考えて動いているか、などの気持ちが理解できるようになるでしょう。
本書は映画のストーリーとは何も関係なく、縁切寺に駆込む男女に関する知識を得ることが出来ます。漫画仕立てなので読むことも難しくなく、庶民の暮らしと時代背景を知るにはとても適した資料と言えるでしょう。
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