映画ファンならずとも要注目のインディーズ映画 『みちていく』
20代の女性監督ならではの
同性同世代に注ぐ繊細な感性と眼差し
また、映画作りに性別など関係ないのは百も承知の上で、あえて言わせていただくと、こういった思春期を扱った作品で、特に身体を噛むといった設定があるにもかかわらず、とかく男性監督が描きがちなエロティシズムがこの作品には皆無といってもよく、すべてが少女たちの心の痛みへと純粋に集約されていくあたりは、やはり同性の監督の眼差しゆえかとも思われます。
『みちていく』というタイトルも、月の満ち欠けと彼女たちの心の動きをだぶらせたものですが、こういった要素も男性監督なら自然とエロティックに描きたがることでしょう。しかしこの映画は月が満ちていく軌跡をプラス、欠けていく軌跡をマイナスと、人生は永遠にその繰り返しであることのみを、ストレートに示唆していきます。
さらにはこういった少女たちを気負うことなく同世代的感覚で自然に捉えているあたりも、20代前半という監督の若さの賜物かもしれませんが、もともと映画はその草創期、20代から30代にかけての若いエネルギーによって切り開かれていったことは、映画史を紐解いていけば明らかな事実であり、特にデジタル技術が導入され、今やプロもアマチュアも同じ機材を使って映画を撮影している時代、今後も竹内監督のような逸材は続々と登場してくることでしょう。あとは彼女たちがいかにその独自の感性を磨きつつ、継続して映画と対峙していくか、映画ファンなら見守っていかない手はないでしょう。
この夏、刺激的に心を涼ませてくれる作品
現在、『みちていく』は上映後にゲストを迎えてのトークショーなども定期的に行っています。タイミングが合えば、監督やキャストに会えるかもしれません。また東京での上映は17日(金)までの予定ですが、9月には名古屋シネマテーク、その後も大坂シアターセブンなど、徐々に全国展開されていく予定とのこと。
この夏、『マッドマックス 怒りのデスロード』や『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』などド派手で熱い大作でエキサイトした後、こういったピュアな作品でひと息心を涼ませつつ、日本映画界の新星を応援してみてはいかがでしょうか。映画作りを目指す人、今作っている人たちにもなにがしかの刺激を与えてくれることでしょう。
ちなみに私は、現在のところ邦洋あわせて今年のベスト1は、この『みちていく』です。あと半年、これを越える作品が現れるかどうか、大いにドキドキしています。
■「キネマニア共和国」の連載をもっと読みたい方は、こちら
(文:増當竜也)
©「みちていく」
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。