ジョン・ギラーミン監督追悼 70年代ハリウッド大作監督の真実


『ナイル殺人事件』での面目躍如と
遺作映画となった『キングコング2』


ギラーミンの面目躍如となったのは、次の『ナイル殺人事件』(78)でしょう。
アガサ・クリスティの『ナイルに死す』を原作に、ナイル川を下る豪華客船内で起きた殺人事件を名探偵エルキュール・ポアロが解決するという、これまたオールスター・キャストのミステリ大作です。
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ここでのギラーミン演出は、故郷イギリスが生んだ大作家の原作を映画化するという名誉を胸に、映画監督としてのプライドをかけて撮りあげたかのごとき気迫がみなぎっています。
ジャック・カーディフ撮影監督による映像美や、ニーノ・ロータの荘厳豪華な音楽も忘れられません。

なお、クリスティ原作ものではこれ以前にシドニー・ルメット監督の『オリエント急行殺人事件』(74)が多大な評価を得ていましたが、このときのエルキュール・ポアロ役のアルバート・フィニーの凝ったメイクと芝居がファンの間で賛否真っ二つに分かれてしまったのに対し、ここでのポアロを演じた巨漢の名優ピーター・ユスティノフは、実はフィニーよりも原作と若干イメージが違うにも関わらず、映画版ポアロとして広く認知され、その後も『地中海殺人事件』(82)『死海殺人事件』(88)、さらにはTVムービーでも幾度かポアロを演じ、彼の当たり役としました。

もっとも86年、ギラーミンは(よせばいいのに⁉)『キングコング2』を撮ってしまいます。
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世界貿易センタービルから落下して死んだはずのコングが実は人工心臓で生き長らえていて、やがてメスのコングと愛し合い、最後にはベビーが生まれるという、いやはやなんとものお話ではありましたが、クライマックスの山中での軍隊との攻防戦など、やはりギラーミン映画ならではのダイナミズムは健在で、巷の評価はかなり低いのですが、個人的にはB級怪獣映画的なノリで大いに楽しんだものでした。
ジョン・スコットの爽快な音楽も、前作の巨匠ジョン・バリーの楽曲より好みではあります。

しかし、何と、これを最後の劇映画演出として(この後87年にTVムービー西部劇『デッド・オア・アライブ』を演出)、彼はこの世を去ってしまったようです……。

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