モントリオール映画祭が分断?幕末なのにプリクラ? 『合葬』小林達夫監督独占インタビュー
映画のなかで息づく“あの3人”を見せたい
―― キャストについてですが、原作のビジュアルに寄せてるような気もしましたが、いかがでしょうか?
小林監督「人物に関しても、もちろんフレームに関しても原作から多大な影響は受けていると思います。ただ絵を再現することに捕われていては、原作の持つ良さが出ないと思いました。映画の考え方のなかで、人物を活かす方法を模索しないと。やはり役者の顔があって、声や表情、感情や動きなどトータルで生まれるのが芝居であり、映画表現だと思いますので」
―― そうですね。似てる似てないは、観る側の感性によっても違ってくるし、演じる側の雰囲気や瞬間の表情にもよりますからね。
小林監督「あとはアンサンブルですね。例えば悌二郎が突っ込んで行った時に、極がそれをかわしたりとか、柾之助が周りで起こってることを飄々と見ているときのバランスでしょうか。漫画でもコマの外にいる人を感じることはできますが、映画の場合、演じる人はその空間にいる相手の影響を直接受けるものですし」
―― なるほど。俳優さん同士の化学反応は、映画ならではの醍醐味かもしれません。他に、キャストに関してのエピソードや、思い入れなどはありますか?
小林監督「そうですね。(観客に)せっかく映画館に足を運んでいただくのですから、この映画の中でしかありえない組み合わせを見せたいじゃないですか。この映画のなかで息づいている“あの3人”というのを見せられたらいいなという想いで、出演をお願いしました」
―― 確かに、テレビや他のメディアでは見られない“あの3人”になっていましたね。
意外?衝撃?ラストシーンに秘められた視点
―― スタートのシーンも原作とまったく違いましたが、ラストもこれまた全然違いましたよね。ラストの展開は、完全にオリジナルでしたが、あの着想はどこから湧いてきたのですか?
小林監督「原作でもそうなんですが、人がたくさん死んでるのに、女の人は死なないんですよね。こういうこと言っちゃうと極端なんですけど、ひとつの寓意として、女性の視点というのがあると思うんです」
―― と言いますと?
小林監督「たくさんの人が犠牲になり、時代が変わった…という物の見方が、そこに生き残った女性の見た『終わりの風景』だという気持ちで撮りました。時代の変わり目に、何が犠牲になって、残った人たちがどう見てたかというのが、作品の根底にあるんです。男たちが死んでいく中で、女性をはじめ生き残った人間が『時代が変わっていくさま』を捉えた様子を見せたかったし、クローズドな空間にいた登場人物たちの周縁にいたであろう大人の存在に、最後にフッと触れたかったんです」
―― そういう意図が、あの結末に込められているんですね。納得です!
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