若手女優たちの魅力を引き出すための ホラー映画『劇場霊』
中田秀夫監督による
ホラーへの新しい挑戦
実際、今回の中田監督の演出は、彼がこれまで手掛けてきたホラー映画群とはかなり異なり、いわゆるショッカー的なものがほとんど見受けられないのも意外なほどです。
その一方、人形が人を襲うクライマックスは、あたかもトビー・フーパー監督の異色SFホラー『スペースバンパイア』(85)でも見ているかのようで、その意味ではニマニマしてしまうものもあるのですが、オカルト・ホラーというよりもモンスター・ホラー的なテイストが濃厚になっているのも意表を突かれた感じではあります。
(一方でこの人形、同日公開の深田晃司監督によるヒューマン映画『さようなら』に登場するアンドロイドとも何となく雰囲気が似ているので、両作の同日ハシゴ鑑賞はしないほうが得策かとは思います。特に『劇場霊』→『さようなら』の順は危険⁉)
もしかしたら中田監督は、今回は今までと異なるタッチのホラー映画にしたかったのかなという気もしてならないのですが、同時に島崎遥香をはじめとする若手女優たちに対する目線は、どこかアイドル映画的な慈愛を感じもします。
もともと日活撮影所で助監督を務めてきた中田監督は、映画撮影所が舞台というところに惹かれて『女優霊』演出の任を受けたところ、これが大評判となり、続く『リング』(98)の大ヒットで押しも押されぬホラー映画のヒットメーカーとして君臨してきているところはありますが、本来は女優そのものの資質を引き出すメロドラマ的志向の強い監督であると私は捉えております。
日活出身なだけあって、『女教師日記・禁じられた性』(95)や『(裏)ナンパ道』(96)といったエロス系オリジナル・ビデオ映画の佳作も手掛けていますし、『サディスティック&マゾヒステイック』(00)なる日活ロマンポルノおよび師匠である小沼勝監督に捧げたドキュメンタリー映画も手掛けています。
さらには手塚治虫の漫画を原作とするファンタジック・ラブストーリー『ガラスの脳』(00)は、もしかしたら今回の『劇場霊』のテイストに意外と一番近いのかもしれません。
そうこう考えていくと、『劇場霊』とはやはり、主演のぱるること島崎遥香をはじめ、出演する女優たちをいかに魅力的に描くかに最大の力点が置かれ、そのための“人形霊”であり、劇場での惨劇という設定が設けられているようにも思います。
その点、ぱるるファンならば彼女の愛らしき好演を堪能できることでしょうし、足立梨花の安定した上手さも買い。ただし個人的には『仮面ライダーオーズ/◯◯◯』(10~11)ヒロイン以降ずっと注目している高田里穂を、いじわるなスター役に据えているのは、ファンとしては許せない!(もっとも、いかにも往年の少女漫画的な設定ということでは、どこか微笑ましくもあり⁉)。
中田監督には罪滅ぼしとして、いつか高田里穂主演の映画をぜひ撮っていただきたいものです。
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(文:増當竜也)
『劇場霊』は2015年11月21日(土)より公開中!
公式サイト http://gekijourei.jp/
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