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2016-02-06

コラム

『いいにおいのする映画』は いい光に満ち溢れた映画

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■「キネマニア共和国」

音楽と映画をコラボさせた作品群を紹介して好評を博し続けているユニークなインディペンデント映画祭“MOOSIC LAB”2915年度においてグランプリ、観客賞、ベストミュージシャン賞(Vampillia)、最優秀女優賞(金子理江)、最優秀男優賞(吉村界人)、男優賞(micci the mistake)を受賞した話題作が公開となります……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街~vol.104》


酒井麻衣監督の『いいにおいのする映画』です!


いいにおいのする映画

(C)2015 Little Witch Production / MOOSIC LAB



少女と少年の再会を光で包みこむ
ダーク・ファンタジー


『いいにおいのする映画』は、夢見がちな少女レイ(金子理江)と、かつて離れ離れになった幼なじみの少年カイト(吉村界人)の再会の物語です。

カイトは父が属しているバンド“Vampillia”のメンバーと一緒にライヴハウスに住み込みながらPAや照明などのスタッフワークを請け負っています。

レイもまたVampillaのライヴに魅せられ、やがて照明技師を目指そうとします。

しかし、やがてカイトのある病気が再発し、レイはその病気に付き合い続けながら、カイトの両親がかつて作った歌を演奏させようとしますが……?

このように、本作はライヴハウスを舞台に、その中にあふれる光の洪水をバックにダーク・ファンタジーとしての青春ラブストーリーが奏でられていきます。

何をもってダーク・ファンタジーと呼ぶのかは、実際に見ていただければおわかりとして、関西を中心に活躍するVampilliaの風貌やライヴ風景など独創的な存在感を大いに映画のテイストと機能させながら、非常に瑞々しくも幻惑的なドラマが構築されています。

またひとり若く新しい才能!
酒井麻衣監督の登場


感性に訴えた作りゆえ、ストーリーの論理性などにこだわる向きには賛否を巻き起こすかもしれませんが、映像の流れに身を任すことを良しとする向きにはたまらない作品であるともいえるでしょう。

主演の金子理江はアイドルユニット“LADYBABY”のメンバー、友人役の中嶋春陽もジュネス☆プリンセスのメンバーと、総じて音楽畑のキャスティングの中、『百円の恋』や『ちはやふる』などに出演の吉村界人の好演も光ります。

監督の酒井麻衣は、京都造形芸術大学在学中に制作した『棒つきキャンディー』で映文連アワード2012部門優秀賞および山形国際ムービーフェスティバル審査員特別賞を受賞し、以降も『神隠しのキャラメル』『金の鍵』『笑門来福』とコンスタントに作品を発表し続けており(タイトルからして、非常にファンタジックですね)、本作では光と闇の魅惑の中に包まれた夢の世界を独自の感性で心地よく奏で得ています。

タイトルの“いいにおい”とは、私自身はある種“血生臭い”匂いのようにも嗅ぎ取れましたが、それも含めての“いいにおい”なのでしょう。

また、同時に本作の中でまばやく輝く光の描出は、まさに本作が“いい光に満ち溢れている映画”足り得てもいます。

ここ数年の若手女性監督の躍進は目覚ましいものがありますが、またひとり未来を期待したい才能が現れたなと実感させる『いいにおいのする映画』、オススメです。

■「キネマニア共和国」の連載をもっと読みたい方は、こちら

(文:増當竜也)