山田悠介×BOYS AND MEN×室賀厚『復讐したい』の「復讐するは“映画”にあり」

■「キネマニア共和国」

2020年(東京オリンピック開催の年ですね)の近未来、さまざまな事件の被害者が、その犯人に復讐することを許される“復讐法”が制定されました……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街~vol.110》

もちろん山田悠介原作の映画『復讐したい』のお話です。
復讐したい


(C)山田悠介/幻冬舎/「復讐したい」製作委員会




殺人を合法化する
復讐法のシステムとは?


本作では、事件が起きて犯人が逮捕された後、事件の被害者や遺族などに裁判か復讐のどちらかの手段で犯罪者を裁く権利が与えられています。

復讐法にはいくつかルールがあります。

①復讐を実行する場所は太平洋上の孤島“蛇岩(じゃがん)島”。そこに復讐の遂行者と逮捕された受刑者を送り込む。

②制限時間は18時間。

③復讐者には武器と食料、GPSを支給。

④受刑者は丸腰で、位置情報を知らせる発信器を装着する義務がある。

⑤制限時間内は、誰が誰を殺しても罪に問われない。

⑥受刑者は立ち入り禁止区域に入ると、地雷が爆発する。

⑦時間内に復讐が果たされなければ、受刑者は無罪放免となる。

これまで『リアル鬼ごっこ』など奇抜な設定によるデスゲーム小説のヒット作を連打し、映画化作品も多数。2012年には“中高生が選ぶ一番好きな作家”にも選出された山田悠介ならではの世界観の許、本作ではそれまで復讐法に反対していた教師が身重の妻を殺されて復讐の選択をし、孤島に向かいます。

孤島には、彼以外にも一家を惨殺された女性、テロ被害者の会といった復讐者がいて、それぞれ行動を起こしていきますが、やがて思わぬアクシデントが発生していきます……。

復讐をエンタメ化し続けてきた
映画が説く戒め


本作は東海エリアで大人気の水野勝らイケメンユニット“BOYS AND MEN”のメンバーが総出演し、復讐者と犯罪者、そして復讐法の管理者に分かれてそれぞれ個性を発揮しています。

主人公の亡き妻と一家惨殺事件の犯人、二役のヒロインとして出演するのは『キカイダーREBOOT』や『映画みんな!エスパーだよ!』などで印象も鮮やかな高橋メアリージュン。今回もなかなかの熱演を示してくれています。

また、蛇岩島の責任者でもある法務省の役人役の岡田義徳がこれまでにないクールな佇まいで、見る者をおっと思わせてくれるものがあります。

そして監督は、95年に『SCORE』で一世を風靡して以来、『GUN CRAZY』シリーズや『デスマッチ』などなど徹底してアクション映画にこだわり、ジャパニーズ・エンタテインメントの道を開拓し続けいる室賀厚。

そもそも室賀監督が愛してやまない西部劇やマカロニ・ウエスタンは復讐をモチーフにしたものが多く、その点でも本作の監督にふさわしいものがありますが、その一方で彼が紡ぎ出すアクションは総じて熱く、たとえバイオレンス・タッチであってもどこか陽性のオーラを漂わせており、今回もどこかしら陰鬱なモードへ陥りがちな本作のテイストをエンタテインメントとして固持することにも成功しています。

ストーリーそのものはかなり意外性の連続で、原作未読の方のために深く記すことは避けますが、いずれにしても復讐がもたらすものが何であるかを、エンタメ活劇を通して巧みに示唆し得た本作を見ながら、旧約聖書の「復讐するは我にあり」という言葉を思い起こしてしまいました。

ここでの“我”を“自分”と勘違いしている人は昔も今も多いのですが、実のところは“神”という意味であり、つまり神以外は復讐を遂行してはいけないという戒めの言葉でもあるのです。

またこれまで映画は数々の復讐劇を量産し続けながら、観客に代わって復讐を遂行し、良くも悪くものカタルシスをもたらしてきました。

今、「復讐するは我にあり」の“我”とは、本作を含めた“映画”そのものまで意味しているのかもしれません。

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(文:増當竜也)

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