映画ビジネスコラム

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2017年06月01日

ポップコーンが映画館の定番になったワケ

ポップコーンが映画館の定番になったワケ



Photo via Visual Hunt



今回は映画にまつわるあれこれについて語ってまいります。まずは“映画とポップコーン”について。

1:映画館の定番はなんでポップコーンなの?


皆さんが映画館に入ったとき最初に気が付くものは何でしょう?人の込み具合?お客さんの話声?それともポップコーンの香り?

今の映画の原型が生まれたのはフランスですが、いわゆる今の映画館の平均値的なつくりのモノが生まれたのはアメリカです。大体100年前の話です。

今の日本映画館のサービスぶりに比べると他の国の映画館を見るとサービスの内容にはだいぶ差があるのですが、食べ物の定番がポップコーンというのは変わりません。

これは戦後、映画館のサービス内容が進駐軍に合わせたところから始まっているそうです。

じゃあ、なんでポップコーンなの?というと。

ものすごく簡単な話です。原価が安く、場所を取らず、保存が効くからです。

ポップコーンはポップ種といわれる種類のトウモロコシを乾燥させたものを炒り続けるとそれが破裂・膨張してスポンジのような“あの形”になります。

実際に私は映画館で働いていた時に一日中ポップコーンを作って過ごしたことがありますが、乾燥種大きめの“ハンドスコップ”二つ分も炒って破裂させ続けると、普通に一般家庭のお風呂桶がいっぱいになるぐらいのポップコーンが出来上がります。



Photo via Visual hunt



そんな具合なので一日中作り続けると、大きな保存用のビニール袋いっぱいのポップコーンに囲まれて自分の足の置き場がなくなるぐらいです。それを食べモノ売り場(コンセッション)のウォーマーに随時追加していくのですが、土・日・祝日になるとこれが圧倒いう間に消えていきます。“一日中かけてあんなに作ったのになぁ…”とちょっと虚無感に襲われることもありました。

健康志向などが進む世の中ですが、この高カロリー炭水化物の塊が映画館から消えることはありません。多少低カロリーの種を使ったり、炒るときのオイルをヘルシーなものに変えたりということはありますが、存在自体はおそらく永遠に不滅でしょう。

どの職種であっても関係なく商売の基本は安く仕入れて高く売ることで、実際にアメリカで普及したのも1930年代の大恐慌時代のことで、とにかく原価の安い文字通り手軽なスナック菓子を追い求めた結果、ポップコーンにたどり着きました。

今や、手軽に気軽にみられる映画のことを“ポップコーンシネマ”など表現したりするぐらいに、映画とポップコーンはひとくくりになりました。

続いて、映画の料金について。

2:映画料金ってホントにみんな1800円なの?




Photo credit: _Krikke_ via VisualHunt / CC BY-NC-ND



現在は一律で映画一般1,800円。昔は地域によって差があったりもしましたが、今はほぼほぼ固定です。違うところといえば名画座や特集上映会の時ぐらいでしょう。これが高いか安いかということは意見が分かれるところで永遠に答えが出ない話になってしまいますのでそれは飛ばしましょう。

ところで、どらだけの方が1,800円の通常料金で映画を見ているのでしょうか。

統計を見ると映画館の年間平均入場料金は実は1,300円ぐらいです。サービスデーやその他の割引を利用されることが多くあるので、実際には一般料金から500円ぐらい安くなっています。

数年前までは1,200円台でしたが、最近は3D、4D、IMAX、ライブビューイング、ODS など特別料金仕様の上映形態が増えたこともあって、少し値段が上がりました。

3:日本のパンフレット事情について




Photo credit: blondinrikard via Visual Hunt / CC BY



日本の映画館と海外の映画館とで比べてびっくりするのがグッズショップの充実度ではないでしょうか。

パンフレットの読みごたえはどんどん増す一方で、非常に良いものが増えてきています。

日本では映画に限らずお芝居やコンサート、プロレスの試合にもパンフレットがあります。ここまで充実している国はなかなかありません。

これは日本人独特の活字好き文化やコレクター気質(蒐集癖)があるからかもしれません。

映画関連グッズ自体は海外でも販売していますが、場所は映画館ではなくてホビーショップやトイザらスやディズニーストアだったりすることが多いです。

“劇場限定”、“数量限定”なんていう日本人の心に刺さる謳い文句までついていたりするので誘惑は増す一方ですね。

4:そもそも日本映画館っていくつぐらいあるの?




Photo credit: m4tik – 128db via Visualhunt.com / CC BY-NC



さて、終盤に差し掛かってきました。映画館のお話を。

日本にはいったいどのくらいの映画館があるのでしょうか?最近の統計の仕方だとこれをスクリーン数というもので表します。

それでいうと3500弱あります。日本で一番スクリーン数多かった1960年前後が7,000強ですから、最盛期の半分ぐらいまで増えてきています。

ただ、最盛期の頃は一つの映画館に一つのスクリーンというのが定番でしたが(つまり7,000軒ぐらいの映画館があった)、今は複合型映画館=シネマコンプレックス(通称:シネコン)が全体の9割になるので、映画館の建物数でいうと400軒強となっています。単純計算で行くと一つの都道府県に10軒弱で70スクリーン前後となります。

シネコンの定義はいろいろあるんですが、統一されたルールとしては5スクリーン以上で全席指定席・定員入れ替え制というものをクリアできているもののことを言います。

そんなシネコンの日本第一号は今のイオンシネマ海老名(旧ワーナー・マイカル海老名)とされています。誕生が1993年のことなので高々25年で、今や“映画館といえばシネコン”というのが当たり前になりました。

ちなみに、そのシネコン3軒を含めて全部で9軒の映画館がある新宿地区が日本最大の映画館密集地帯です。この一地区だけで40スクリーンを超えています。先ほど一都道府県で10軒弱で70スクリーン前後と言いましたので新宿地区の密集度合は伝わるでしょうか。

さて、この400軒強・3500スクリーンに一年を通してどのくらいの人(有料入場者)が見に来ているのでしょうか。

実は、これが社会現象になるような大ヒット作あってもなくてもあまり変動がなくて大体1.5~1.8億人前後です。単純計算でみれば日本の人口より少し多いぐらいなので、“映画館来場ノルマ”なるものが設定されていても年に一度、映画館に足を運べばノルマ達成です。

もちろん、一年に100回200回と映画館で映画を見られている猛者の方々もいらっしゃるので、逆に一年の中で一度も映画館に足を運ばれない方もたくさんいらっしゃるのが現状です。

ただ、年々、映画館でのその作品の成績・収入がその映画とその映画配給会社の命運を左右するようになってきていまして、とにかく劇場来場者を増やすというのは映画業界全体の課題です。なので、猛者の方々は是非“お一人様”ではなくてどなたかをご同伴されて見に来てほしいというのはあるかもしれません。


最後に: 一年にどのくらいの映画が映画館で上映されているの?


さてさて、映画館は増えていて、映画を見る人(映画人口何いう言い方もします)はあまり変わらないというなかで映画の公開本数は増える一方です。特に邦画が増えています。

この理由を簡単に言えば映画がフィルム撮影からデジタル撮影に移行したことで、長編映画を簡単に撮ることができるようになったからです。その数なんと1100本以上、基本的に週末公開なので、一年52週で割ると週に20本前後の新作映画どこかで公開されています。

そんな状況なので映画は作ったけど公開する場がなくて困るという事が多くなっています。その辺りの選定はだいぶ裏のお話になるのでまたの機会に。

ということで、マニアックな話が延々と続きましたが、何が言いたいかというと。

できるだけ映画館でいろんな映画を見てください。

そうしないといろんな映画が見られなくなってしまいます。そして気が付けば映画館自体もいなくなってしまうかもしれません。

(文:村松健太郎)

(出典:日本映画製作者連盟データーベースより)

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