『こどもつかい』に学ぶ“悪役の魅力”とは?



(C)2017「こどもつかい」製作委員会


6月17日、本日より公開の『こどもつかい』は、聞いた者が3日後に死んでしまうという“こどもの呪い”の謎を追うホラー映画でありながら、痛烈なメッセージも込められた優れた作品でした。本作の魅力がどこにあるのか、たっぷりとご紹介します。

1:滝沢秀明が映画初主演にして初の悪役!
恐怖の対象だけど実はかわいい?


本作の何よりのアピールポイントは、なんと言っても滝沢秀明が主演であるということ!それも“悪役”として全編で大活躍するのです。

滝沢秀明が演じる“こどもつかい”は人かお化けか、現実に存在しているのかどうかもわからない、ミステリアスな存在として描かれています。その動きは道化師とこどもを併せ持つ人物像をイメージしており、実は饒舌(おしゃべり)なところもあるのです。

個人的なこのキャラクターの印象は、意外にも「かわいい!」ということでした。彼には“こども好きだからおどけて遊んでいる”かのような親しみやすい雰囲気があり、時々「あの滝沢秀明がこどもたちにいろいろ命令して遊んであげている!」と思ってしまうほどだったのです。いやいや、これは萌えるでしょ!

そのこどもつかいが遣わせているこどもたちが、“大人に怨みを持っている”ということもポイントです。白目になったこどもたちは見た目だけでも恐ろしいですし、こどもつかいのコミカルさはかえってその異常性を際立たせるという、いい意味でのギャップを作り出すことに成功しています。コミカルなキャラクターなのに安っぽくなっていないのは、滝沢秀明のカリスマ性と、衣装デザインなどのビジュアルが凝りに凝っているおかげでもあるのでしょう。

間違いなく言えるのは、「滝沢秀明ファンは必見!」ということ。彼が心から悪役を楽しく演じていることが伝わってきますし、何より唯一無二と言えるほどの“恐ろしいのに魅力的”なキャラクターに扮しているのですから。今まで滝沢秀明のファンだったという方も、彼の新たな一面を垣間見ることができるでしょう。

ちなみに、本作のプロジェクトは“舞台やドラマでの活躍がほとんどだった滝沢秀明が主演のホラー映画を作る”というとこから始まっており、清水崇監督もその試みに惹かれ、「今までにない新たなキャラクターを生み出したい」とオファーを承諾したのだとか。つまりは、元々“滝沢秀明の悪役ありき”の企画であり、滝沢秀明はその期待に見事に応えているのです。滝沢秀明にはこれからも、もっともっと悪役を演じてほしいですね。

さらに、事件の謎を追うカップルを演じていた、門脇麦と有岡大貴(Hey! Say! JUMP)も滝沢秀明に引けを取らない魅力でいっぱいでした。どちらも実年齢よりも少し幼く見える容姿が、ちょっぴりの“未熟さ”を見せるキャラクターにバッチリとハマっていますよ。




(C)2017「こどもつかい」製作委員会



2:実は大人が“学べる”テーマがあった!


本作の物語は“連続不審死事件を調べていくうちに、こどもたちが死んだ大人を怨んでいた理由が発覚していく”というものです。大局的には“児童虐待”を扱った作品と言っていいでしょう。

この物語が誠実なのは、児童虐待の一側面だけを捉えずに、“多角的”に描いていること。虐待はなぜ起こるのか?虐待の事実にどう向き合えばいいのか?虐待を止めるためにどうすればいいのか?など、大人にとって決して他人事とは言えないその問題について、さまざまな視点での問いかけがされているかのようなのです。

滝沢秀明演じる“こどもつかい”のイメージの1つにもなっている伝承「ハーメルンの笛吹き男」も、物語に深く関わっていくようになっていきます。それは実際に起こった行方不明事件を元にしているとされ、現在でもさまざまな憶測がされているのですが……本作で次第に明らかになる“起源となる事件”も「ハーメルンの笛吹き男」の1つの“説”に添っているかのようでした。

なお、主演の滝沢秀明も本作について「怖い映画であることは間違いないけど、ただ怖いだけでは終わっていない」「ちょっと視点を変えるだけで別な一面が見える」となどと、清水崇監督も「世代や性別によって“こどもつかい”に感じるものが違うはずなので、若い世代だけでなく中高年の大人の方にも観てほしい」などと語っています。中高生向けのホラーのように見えて……実は大人こそが学べるところがあるのかもしれませんよ。




(C)2017「こどもつかい」製作委員会



3:ホラー初心者にも、清水崇監督ファンにもおすすめ!


個人的に、本作はホラーが苦手という方にこそ観て欲しいです。前述の通り、大人こそが思うところのあるテーマが掲げられていますし、悪役がコミカルな演技をする滝沢秀明ということもあって、過剰にストレスを感じることもないはず。万人が楽しめる作品と言っていいでしょう。

ただし、本作が怖くない、ということは決してありません。白目になったこどもたちのビジュアルだけでなく、“起源となる事件”の真相、そして(ネタバレになるので詳しくは書けませんが)“ドアノブ”のシーンにも、心底ゾッとさせられました。『呪怨』や『ラビット・ホラー』などの作品で発揮された、“視点を変えると印象が違う”、“精神的に来る恐怖”という清水崇督節節が存分に発揮されているので、氏のファンにとっても満足できるでしょう。少しだけ、『トワイライト・ゾーン』(アメリカのテレビドラマシリーズ)を彷彿とさせるところもありますよ。

おまけ:『こどもつかい』と合わせて観て欲しい映画はこれだ!


最後に、『こどもつかい』が気に入った人に観て欲しい、またはこの作品が好きな人に『こどもつかい』をおすすめしたい、という2つの映画をご紹介します。

1:『輪廻』






『こどもつかい』と同じく清水崇監督による作品で、新人女優が無差別殺人を描いた映画に取り組んでいるうちに、不可解な現象に巻き込まれていくという内容です。作中に驚くべきトリックが仕込まれているので、“どんでん返し”系の映画が好きな人もきっと気にいるでしょう。

現在と過去が絡み合うという、複雑ながら直感的に理解しやすい構成などに『こどもつかい』との共通点を感じられるはず。こどもの扱いやテーマにも、似たところがありますよ。

2:『永遠のこどもたち』






こどもたちための施設の開園パーティーにて、突如として姿を消した息子を探し求めるという物語です。演出にはホラーらしいところがありますが、実は悲しくも美しい、人間ドラマとしての魅力が満載の作品でもありました。

『こどもつかい』とは、過去の出来事から謎を解くミステリーの要素、子への愛情が深く描かれていることが共通しています。こちらも、“親世代”の大人こそが思うところのある作品と言えるでしょう。

なお、『永遠のこどもたち』の監督による最新作『怪物はささやく』も現在公開中です。こちらも悩めるこどもの気持ちに寄り添いながらも、実は大人こそが気づきを得られる秀作でしたので、ぜひ劇場に足を運んでみてほしいです。

■このライターの記事をもっと読みたい方は、こちら

(文:ヒナタカ)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

RANKING

SPONSORD

PICK UP!