『東京喰種 トーキョーグール』は“絶叫の貴公子” 窪田正孝の繊細さと狂いっぷりが満載!
(C)2017「東京喰種」製作委員会
ヤングジャンプで大ヒット連載中の人気漫画を、最新のCG技術と実力派の若手俳優陣で実写化した話題作、それがこの現在公開中の映画『東京喰種 トーキョーグール』だ!
今回鑑賞したのは、公開初日18時の回。今や女性に大人気の若手男優、窪田正孝の主演作だけに、きっと満員に違いないと思って行ったのだが・・・。意外や予想に反して場内は5割程度の入り。やはり、その内容の残酷さと予告編のインパクトが、女性観客の足を遠ざけてしまったのか?
何はともあれ、個人的に大好物のこの内容!期待大で鑑賞に臨んだその結果は、果たしてどうだったのか?
ストーリー
人の姿をしながらも、水とコーヒー以外で摂取できるのは人体のみという正体不明の怪人“喰種(グール)”が人間と同じように暮らしている東京。ごく普通の内気な大学生のカネキ(窪田正孝)は、ある日、事故で重傷を負い、事故のとき一緒にいた喰種の少女・リゼ(蒼井優)の臓器を移植されたことで半喰種となってしまう。自分が喰種化したことで苦悩するカネキは、以前から通い詰めていた喫茶店「あんていく」で働き始める。「あんていく」は喰種が集まる店で、そこで出会ったアルバイトの女子高生・トーカ(清水富美加)も喰種だった。カネキは喰種たちのことを深く知るにつれ、大切な仲間や友人とどう向き合うか葛藤する。そんな中、喰種を駆逐しようとする人間側の組織CCGの捜査官・亜門(鈴木伸之)と真戸(大泉洋)が現れ、人間と喰種の戦いが激化していくのだが……。
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窪田正孝が完全リミッター解除、気持ちいいほど叫び、狂う!
今回、敢えて原作未読で鑑賞に臨んだ本作だが、いやこれは面白かった!先日見た『パワーレンジャー』を越えるドラマ性と、単純に善と悪が判断出来ない深い内容、そして漫画のキャラクター達に見事に命を吹き込んだ俳優陣の演技!
確かに血が大量に流れたり、正直女性の方にはちょっと残酷過ぎる描写も登場するが、映画前半で見せる窪田正孝の草食系男子の弱さと、後半で遂に守るべき者のために闘うその雄姿とのギャップは、絶対に劇場で見て頂く価値あり!そう断言出来る。
(C)2017「東京喰種」製作委員会
本作での喰種側と人間側、実は両者それぞれの正義と生きる理由、そして守るべき物がある。
絶対的な善も悪も存在しない世界で、生存のために戦わなければならない、この両者。もはやお互いに理解し合えない彼らだが、実はお互いに同じ結論を抱いている。それは「この世界は間違っている!」ということだ。
人間をエサとして捕食しなければ生きられない喰種だが、そのためには人間の中に溶け込んで暮らさなければならないという現実。その中で、人間との間に友情を育む者や、人間を狩ることを拒否する者の存在が明らかになって行く。
そう、人間を捕食することに罪悪感を感じるのが、実は喰種と人間の中間種である主人公カネキだけで無いことが判明することで、喰種は全て敵だと考える人間側の方が、観客にはむしろ「悪者」の様に思えて来るのだ。
(C)2017「東京喰種」製作委員会
お互いを憎み戦う者同士が迷い悩み、善悪の境界線を綱渡りするかの様なその豊かなドラマ性にこそ、是非注目して鑑賞して頂きたい傑作!それがこの「東京喰種」だと言える。
もちろんドラマ部分以外も素晴らしく、特に見所なのは、「あなそれ」の鈴木伸之が演じる亜門と、窪田正孝が演じるカネキの対決シーン!
徐々に「喰種」へと変貌して行く過程で見せていた、弱く逃げ腰な姿とは180度違う、完全に覚醒し己の本能のまま狂った様に暴れ回るカネキのその姿。ここは窪田正孝が本当に気持ち良さそうに演じているので、是非劇場でご確認を!
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最後に
実は鑑賞中、そのアクションシーンの合成の感じから、個人的にテレビドラマ「ケータイ捜査官7」の頃を思い出してしまった本作。
冒頭から繰り返し登場する食事シーンの対比で、後の人間から喰種への変貌を予感させたり、ラストで目が直ったカネキと、逆に眼帯姿となった亜門との対比を初めとして、本作が長編映画初監督となる、萩原健太郎監督の演出は実に見事!
▲ 萩原健太郎監督(映画『東京喰種 トーキョーグール』×UUUMクリエイター試写より)
実は鑑賞後に2巻まで原作を読んだのだが、細かい所で映画なりの変更や省略があるものの、今回かなり原作に忠実に映画化されていることに驚かされた。大泉洋扮する真戸の背景を一切説明することなく、指輪と墓碑銘の2カットだけで、観客に全てを分からせる脚本の上手さなど、繰り返し鑑賞すればするほど、より細部に隠された部分に気が付いて深く楽しめる本作!何よりこの内容量で2時間以内に納めたことは、その省略の上手さも含めて充分評価に値するだろう。
(C)2017「東京喰種」製作委員会
実際、単純な正義と悪の対立では割り切れない深い内容と、喰種としてこの世に生を受け、その呪われた宿命に死ぬほど苦しみもがきながらも、自身の中の善悪の判断に従おうとする主人公達の姿には、冗談抜きで感動すら覚える程だ。
運命のいたずらとは言え、喰種と人間との中間の存在となってしまったカネキ。彼は喰種の本能と人間の理性との間で、地獄の苦しみと苦悩を味わうことになるのだが、それは同時に喰種と人間との相互理解への橋渡し役としての可能性を秘めている。
今回カネキを演じた窪田正孝の演技は、人間の理性と喰種の凶暴性の両面を見事に切り替えて演じており、その迫力と繊細さには圧倒される程!
様々な要因から続編製作は難しいかも知れないが、カネキやトーカたちのその後の物語が見たい!と思わせてくれる本作。
残念ながら、その内容の過激さから興業的には苦戦している様だが、是非多くの映画ファンに見て頂きたい傑作なので、全力でオススメ致します!
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(文:滝口アキラ)
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