音楽は“キラキラ”を倍増させるのか?『覆面系ノイズ』と音楽系少女漫画
(C)2017「覆面系ノイズ」製作委員会 (C)福山リョウコ/白泉社・花とゆめ
累計200万部を突破する福山リョウコ原作の少女漫画を実写映画化した『覆面系ノイズ』が25日から公開される。
今年の春にはアニメ化もされた本作は、いわゆる〝キラキラ映画〟の部類に入る作品ではあるが、「学園」「恋愛」「青春」という3つの基本要素を描きながらも、それらすべてを「音楽」というエッセンスが覆い尽くす。
劇中で主人公たちが結成する覆面バンド「イノハリ」の楽曲や、MAN WITH THE MISSIONが全面提供して繰り出される登場楽曲の数々は、音楽ファンをも魅了していくことは間違いない。
<〜幻影は映画に乗って旅をする〜vol.53:音楽は“キラキラ”を倍増させるのか?『覆面系ノイズ』と音楽系少女漫画>
(C)2017「覆面系ノイズ」製作委員会 (C)福山リョウコ/白泉社・花とゆめ
幼馴染のモモが転校してから、感情の高ぶりを抑えるためにマスクが手放せないニノは、人を虜にする歌声の持ち主。高校生になったある日、転校先の高校で懐かしいメロディを耳にする。それは、モモがいなくなってしまった後に、浜辺で出会った少年・ユズが書いていたメロディだった。6年ぶりに再会したユズは、人気覆面バンドのメンバーとして活動し、ずっとニノのために曲を書き続けていたのである。
中条あやみ演じる主人公のニノと、ユズを演じる志尊淳、そしてモモ役の小関裕太。若手の実力派3人が織りなす三角関係がひとつの軸となりながらも、あくまでもそこには音楽を志す若者たちの群像が描かれていく。
“キラキラ”映画の鉄板テーマである恋愛よりも、明らかに「音楽青春映画」としてのテイストが強くなっているあたり、もしかするとこれは“キラキラ”映画ではないのかもしれない。
数年前に映画化された『BECK』に代表されるように、音楽に明け暮れる青春ドラマはこれまで数多く作り出されてきた。とりわけ、少女漫画と音楽青春ドラマの組み合わせといえば(傑作コミック「あなたとスキャンダル」を真っ先に思い浮かべてしまう筆者ではあるが)、2004年に映画化された矢沢あいの大ヒットコミック『NANA』が有名なところだろう。
しかし、少女漫画原作映画の走りだった同作は、やはり別格の作品。本作と同じように“キラキラ”したテイストを持ち合わせて、真っ向から音楽青春ドラマに挑んだ作品といえば、2011年に公開された『カノジョは嘘を愛しすぎてる』を置いて他にはないだろう。
小学館の「Cheese!」に連載されていた青木琴美の同名漫画を原作にし、2013年に公開された本作。大人気バンド“CRUDE PLAY”のサウンドクリエーターとして活動してする主人公の小笠原秋が、奇跡的な歌声を持つ女子高生・理子と出会い、正体を隠したまま付き合うことに。そんな中、理子の所属するバンドがCRUDEPLAYのプロデューサー・総一郎にスカウトされたことによって、2人の関係が揺れ動き始めるのだ。
この“カノ嘘”では、ヒロイン・理子を演じたのは、現在も歌手としても活躍する大原櫻子。彼女のデビュー作となった同作は、とにかくその抜群な歌唱センスに魅了される。それを引き合いに出すと、今回の『覆面系ノイズ』という作品での中条あやみはルックス抜群で演技も充分ではあるが、歌声が本当に周囲を魅了するものなのかという点に疑問を感じてしまう。
楽曲に強い魅力があるだけに、もしかすると正直な“キラキラ”映画として、恋愛要素をより強く見せてもよかったのではないだろうか、という気がしてならない。主人公たちの一方通行の片想いに、周囲のキャラクターたちの恋愛模様。これを主要素にして、音楽が重なったほうが、よりエモーショナルな仕上がりになったはずだ。
とくに、ニノの登場まで「イノハリ」のボーカルを務めていた深桜を演る真野恵里菜の魅力が抜群で、ハロプロ所属アイドルとして活躍していた彼女の歌声、そして女優転身後のベストワークとも言える演技。もっと彼女の芝居を観たかった、というのが正直なところだ。
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(文:久保田和馬)
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