バイオレンスだけどハートウォーミング…?映画『ボーダーライン』藤田玲インタビュー

12月16日(土)公開の映画『ボーダーライン』は、「ガチバン」「闇金ドッグス」など、日本の闇を描く≪AMG・アウトロームービー・ユニバース≫シリーズの最新作。



(C)2017「ボーダーライン」製作委員会


自動車整備工場で働きながら、怪しげなクーラーボックスの運び屋をしている少年院上がりの我妻アベルと、ヤクザに追われる彼の幼馴染・紅井レオとの再会から、物語が動き出します。

シネマズby松竹では、我妻アベルを演じる藤田玲さんにインタビュー。独特の空気をまとう今作について、主演目線のお話を伺いました。




──なかなかハードな作品ですが、脚本を読んでどんな印象を受けましたか?

自分がこの役を演じるんだ、という楽しみな気持ちとプレッシャーが、まず最初にありました。『牙狼<GARO>』など、アクション系の作品はこれまでもありましたけど、バイオレンスというのが新鮮で。しかも、壮絶な展開なので、アベルを演じきるためには、気持ちをちゃんとひとつひとつ紡いでいかないと、という思いでしたね。

内容に関しては、いろんな伏線があって、たとえば、お弁当のひじきを避けていることにも意味があって面白い。そういう細かいところも計算されている脚本で、できあがった映像を見たときに、「あ、繋がってる!」ってうれしくなりました。

──主演だけではなく、藤田さんのバンド「DUSTZ」の曲が主題歌なんですよね。

プロデューサーさんが「Border Line」という曲を聞いて、主題歌にしたいと言ってくださったので、より気合が入りました!

今作のために、編曲と歌詞のリライトをしたのですが、歌詞に関しては、アベルを生きてからじゃないと書けないだろうと思って、撮影が終わってから全部書いたんです。なので、アベルが言われた言葉を噛み砕いて取り入れていますし、アベルの心情的なところもうまく織り交ぜることができたと思います。

原曲となった「Border Line」を作ったのは中高学生のころで、当時なりの(ボーダーライン)が書かれた歌詞でした。アベルもこの映画のなかでひとつ何かを背負うわけですが、僕自身大人になって、経験を経たことで、今の「BORDERLINE -A side-」という曲に仕上がっています。

──旧車がたくさん登場するところも今作のひとつのポイントですが、夜景が見える広々とした道路を走るシーンが印象的でした。



(C)2017「ボーダーライン」製作委員会


日本ではなかなかできない走りもできる、すごくいいロケーションで、見つけるのが大変だったんじゃないかなと。旧車はマニュアル車だったのですが、僕は初めての車がマニュアルだったので、運転していて懐かしかったし、ギアの繋がり方とか、ひとつひとつに個性があって楽しかったですね。

でも、アベルは年中革ジャンを着ているので、冷房がついてない旧車での撮影はひと苦労でした(笑)。

──旧車がたくさん登場することもあってか、ノスタルジックな空気感に満ちていて。だからといって古い時代が舞台というわけではないので、不思議な作品だと思いました。

それはもう、スタッフさんの力です。ちょっとどんよりとした、作品のニュアンスにぴったりな天気に恵まれたというのもあると思います。曇っていて、ボーダーラインが明確にならないような色合いもそうですね。

登場人物の心情にあった雰囲気だったり、ロケーションを生かしたライティング、カメラワークだったりが素晴らしくて、作品の世界観を作っていると思います。



(C)2017「ボーダーライン」製作委員会


──その世界のなかに違和感なくアベルたちがいて、本当にそこに暮らしている人たちの物語を切り取ったように見えました。

監督が核になる部分は伝えてくださるのですが、あとはフリーに芝居をやらせてくださる方で。そういう環境のおかげで、僕はアベルとして生きることができたと思います。

──その世界を一緒に作り上げた、共演者の方とはどんなやりとりを?



(C)2017「ボーダーライン」製作委員会


紅井レオ役の荒井敦史くんとは面識があったので、すっと仲よくなって、一緒にご飯を食べたり、世間話や演技プランについて話したりしてました。フランクフルトを食べているシーンでは、撮影するたびに食べるので、お腹がいっぱいになってしまって「もう食べられないよ〜」なんてことも(笑)。休憩中は、そんなユーモアのある面白い人ですが、一方で、役と向き合う姿には刺激をもらいました。



(C)2017「ボーダーライン」製作委員会


アベルの弟分を演じた西川俊介くんは、劇中のように慕ってくれて、かわいかったです(笑)。彼は結構台詞も多くて大変そうでしたが、演技の相談にのったり、不安そうにしていたら声をかけたりして、一緒に過ごしました。



(C)2017「ボーダーライン」製作委員会


甲本雅裕さんは、「このシーン、こういう風にしようと思うんだよね」と、演技プランを提示してくださることが多かったです。それを受けて、アベルの気持ちはこういう風に持っていけるなとか、こういうタイミングでこう考えるよな、とか、クリエイティブな現場だったと思います。自然にアドリブを入れていらっしゃって、勉強させていただきましたし、気さくに話しかけてくださるので、お芝居以外の話も盛り上がりました。



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螢雪二朗さんは十何年も一緒に「牙狼<GARO>」をやっているので、この作品でも共演できてうれしかったです。人情味のあるおやじさんという役どころが本当にぴったりでしたし、「こういう映画がまだあるんだな」って螢さんもうれしそうでした。

──特に気に入っているシーンをあげるとすれば、どこですか?

やっぱり、甲本さん演じる遠藤とのシーンは気に入ってますね。本当は似ているのに、それを口にするでもなく、でもなんとなく通じるものがある二人の関係性がいいなって思います。言葉も少ないし、わりとどうでもいいことを話していたりするけど、そのなかで心情が動くのが素敵だなって思いましたし、演じていて居心地がよかったです。



(C)2017「ボーダーライン」製作委員会


──アベルと遠藤の関係もそうですが、ガラがいいとは言えない訳アリな人たちが集まっている作品なのに、それぞれの根底にある優しさがじわじわ伝わってくる感じがありました。

いろんなものを抱えている登場人物たちが、信念を持って、必死に生きているからでしょうか。周りの人たちの優しさがあったから、人とのつながりというアベルがずっと拒否してきていたであろうボーダーラインを超えることができた、という、意外とハートウォーミングな一面もあると思います。

──藤田さんご自身からはにこやかで柔らかい印象を感じるのですが、無愛想なアベルを演じ続けるのは大変ではなかったですか?

芝居としての苦労は全然ないですが、カットがかかったら、ふわ〜っとしちゃいますね(笑)。これまで、よく笑ったり、ヘラヘラしているような役を演じることが多くて。「牙狼<GARO>」も主役がムッとしてる役どころだから、「セリフが少なくていいなぁ」って、ずっと思っていたんです(笑)。でも、アベルを演じてみて、セリフ以外で見せる芝居というものを実感しました(笑)。



(C)2017「ボーダーライン」製作委員会


──では、藤田さんにとってボーダーラインだと思うものはなんでしょう。

自分のボーダーライン、つまり、やれることの線引きって、みんなそれぞれあるものだと思います。それを超えるために、努力だったり、何かを捨てたりすることで、その先にしかない何かを手にすることができるんだと思います。僕の場合は、仕事や芝居におけるボーダーラインを超えたいと毎回思っています。なので、僕のボーダーラインは消し去りたいけど、永遠にある、自分が無意識に作ってしまう限界、のようなものですね。

──最後に見どころを教えてください。



(C)2017「ボーダーライン」製作委員会


日本ってカーアクションものが少ないと思うので、そういう意味ですごく珍しい作品だと思います。本当に車好きがワクワクするような名車が出てきていますし、拳のぶつかり合うアクションもあるので、ザ・男の子という道をたどってきた男性なら、絶対にかっこいいと思うはず。

そして、役者として同業者が見ても「この役いいな」と思う素敵なキャラクターを、素晴らしい俳優さんたちが演じている見応えのある作品なので、どのジャンルが好きな人にも見てもらいたいです!

藤田玲さんの近況は? 「喜」「怒」「哀」「楽」トーク


気になる藤田玲さんの近況について、喜怒哀楽のエピソードを教えてもらいました!

藤田玲さんの喜




この映画が発表になったこと! 最近、稽古ばかりしていたので、情報解禁されて、みんなが喜んでくれたことですね。

藤田玲さんの怒




僕、あんまり怒らないんですよね…。怒ったというより、納得できなかった話なんですが、よく行くピザのお店で、少し前にお気に入りのルッコラがのったピザを頼んだら、それがのっていなくて。

店員さんによると、ランチではルッコラをのせるのをやめたそうなんですが、「それはもう別のピザじゃん! 先に教えてよ〜」って思いました(笑)。

藤田玲さんの哀




車の窓のヘリにガムがついていたのに気づかずに窓を開閉したら、ガムがびろ〜んとガラスに伸びて…。そういうことをする人がいる世の中が哀しいです‼︎

藤田玲さんの楽




ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』で、ガブリエル・バリーさんという演出の方とお仕事をして、日本と海外の違いを感じたのが刺激的で楽しかったです。

演出家が絶対、ということはなくて、これはどうですか、と提案するかたちで進めてくれたり、時間も予定をすぎたら「もう一回やっていいですか?」ってみんなにちゃんと確認してくれたり。個々を尊重する姿勢やエンタメの捉え方の違いを感じました。




映画『ボーダーライン』は12月16日(土)より、シネマート新宿・心斎橋にて公開中。

(撮影:結城さやか、文:大谷和美)

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