『グレイテスト・ショーマン』に秘められた現代へ送る“衝撃的なメッセージ”とは?



差別や偏見との対峙
人の心の光と影


バーナムは彼らを「みんなと違うから面白い」と、いわゆるオンリー・ワンの個性を持つ人々として讃えていきます。
(金子みすゞの詩の一節「みんなちがって、みんないい。」も彷彿させてくれますね)

現実のバーナムがどうだったかはさておき、少なくともこの映画の中のバーナムは目を輝かせながら、純粋に「面白いことを一緒にやろうじゃないか!」といった気概を感じさせ、ヒュー・ジャックマンの演技と個性と存在感もそれを見事に体現しています。

かくして始まる興行をミュージカル的レビューとして描いていくことも本作ならではの長所で、そのリズムとダイナミズムが見る者の心を明るく弾ませながら解放させてゆき、ひいては前向きでリベラルな想いを育ませてくれます。

一方で、それを不快な見世物として上から目線で批判するマスコミや、さらには彼らを激しくののしり迫害するレイシスト衆も登場してきます。

ここに至り、差別と偏見が本作の大きなテーマとして内包されていることに気づかされます。



(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation




現在、アメリカはもとより日本も含め世界中でレイシストのヘイト・スピーチなどが激増していますが、本作はエンタテインメントの形をとりながら、見事にそれに対するメッセージを放ち得ていると、私には思えました。

またこれこそが自由と平等を唱え続けるアメリカ映画のアメリカ映画たる所以でもあるでしょう。

人の心の闇ということでは、『グレイテスト・ショーマン』のバーナムも劇中、闇に誘われて団員たちの支持を失う瞬間が描かれます。

不思議なことに、それはバーナムがビジネスとしての成功をおさめ、貧困から脱出し、オペラ歌手ジェニー・リンドの芸術的歌声を耳にしたことから始まります。



(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation




つまり、まばゆく美しいアーティスティックな光が、皮肉にも彼の心に影を作り上げていく。

ここにも本作の人間ドラマとしてさりげなくも深いものを感じさせてくれますが、それ以上に唸らされるのは、そんなバーナムに失望した彼らが、次の瞬間それを払拭させるかのような反骨のレビューをダイナミックに繰り出しながら、あくまでも前向きな姿勢を貫いていくところでしょう。

このように『グレイテスト・ショーマン』は豪華絢爛たるミュージカル映画というジャンルを駆使して、挑戦と失敗を繰り返していく人間の光と影を前向きに捉えつつ、反骨精神をもって差別や偏見と対峙し、家族や仲間との愛を感動的に謳い上げた奇跡的なまでの傑作です。

こういった映画が作られ、またそれが多くの人々に支持されていく限り、まだまだ世界に希望は持てるでしょう。

優れたエンタテインメントは、いつも人の意識を啓蒙してくれるものです。

(文:増當竜也)

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