映画コラム

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2018年05月11日

シリーズ最新作も公開される恐怖の原点『悪魔のいけにえ』

シリーズ最新作も公開される恐怖の原点『悪魔のいけにえ』



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ウェス・クレイヴンにジョージ・A・ロメロなど、このところ立て続けにホラー映画の鬼才の死が報じられてますが、その中にはトビー・フーパーも含まれています。

一貫してホラーにこだわり、世界中を恐怖のどん底に陥れていったキング・オブ・ホラー。

その彼が最期に製作を手掛けた、シリーズの顔ともいえるレザーフェイスがいかにして誕生したかを描く『レザーフェイス 悪魔のいけにえ』がまもなく公開されますが、その前にシリーズ第1作であり、彼の原点でもある『悪魔のいけにえ』を復讐しておかない手はないでしょう!

『悪魔のいけにえ』が公開された
世界中の戸惑いとトラウマ化


トビー・フーパー監督の長編劇映画第1作『悪魔のいけにえ』は、1974年にアメリカで公開されました。

テキサス州に帰省した5人の若者たちが、その道中でひとりのヒッチハイカーを拾ったことから、やがて近隣に住む残虐殺人鬼一家のむごたらしいいけにえとなっていく惨劇を描いたこの作品、全米ではあまりにも残酷すぎるとして各州で上映禁止となり、学校などでは「決して見てはいけない」と指導されるほどの騒動になったとのことです。

日本では翌75年2月に公開されましたが、当時のマスコミの批評は芳しいものではなく、またホラーという言葉も定着してなかった時代(当時は恐怖映画という言い方が定例でした)、特に70年代前半は世界中でオカルト映画ブームが巻き起こっていたさなか、観客もドラキュラなどの怪物とは一線を画した猟奇殺人鬼レザーフェイスを中心とする狂気の一家を前にして、いったいこれをどう解釈したらよいものか大いにとまどったという声もよく聞かされたものです。

しかし、そういった観客の戸惑いはトラウマともなり、次第に口コミが広がっていき、やがて来る恐怖ならぬホラー映画ブームとともに『悪魔のいけにえ』はカルト映画として台頭していき、トビー・フーパー監督の名声も世界中に轟くことになっていくのでした。

『悪魔のいけにえ』をリスペクトするスティーヴン・スピルバーグは、『ポルターガイスト』(82)の監督に彼を起用して製作したほどです。

そして86年にはフーパー監督自身のメガホンで続編『悪魔のいけにえ2』が発表され、その後も他の監督で『悪魔のいけにえ3 レザーフェイス逆襲』(90)『悪魔のいけにえ レジェンド・オブ・レザーフェイス』(94)『飛びだす 悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲』(13)、そして最初に申した『レザーフェイス―悪魔のいけにえ―』(18)とシリーズ化されていきました。



映画館なら大音響で見たい!
TVならいっそ小さな音で!



実は今の目で第1作を見直しますと、意外なまでにあからさまなスプラッタ的残虐描写がほとんどないことに驚かされます。

現在ならCGなり特殊メイクなりでいくらでもド派手にそういったシーンを構築できることでしょうが、本作は製作費4000万円という低予算自主映画だったこともあり、そちらに金をかけようという姿勢はさほどありません。

しかしながら、本作の恐怖は、16ミリフィルム撮影のブロウアップによるザラザラに荒れた映像がもたらす真夏の灼熱の強調や、レザーフェイスの武器でもある電動のこぎりを振り回す脅威のパフォーマンス性とその轟音、さらには彼に襲われる若者たちの悲鳴、絶叫といった音の演出などによって、そのおぞましさを正視したくないと思いつつ、心奪われていくのです。

現在、本作は爆音上映のマストアイテムともなっていますが(5月19日から東京・立川シネマシティで『悪魔のいけにえ』と『飛びだす悪魔のいけにえ』、そして最新作『レザーフェイス』の3作品が“いけにえ極爆”上映される予定)、それも必然だなと唸らされます。

ただ、TVのモニターでご覧になるのであれば、むしろ音響を絞って鑑賞するのも一興ではないかと、個人的には思ったるすることもあります(もちろん集中して見られるように、部屋の電気は消して真っ暗にしておきましょう)。

本作の音響効果は心理的かつ生理的に感情をもたらす奇跡的なまでに秀逸な設計がなされていますので、劇場ではボリュームいっぱいの大音響で、自宅では耳をそばだてるほどの小さい音で画面に食い入る。そういった鑑賞法の相違を試しながら楽しんでみるのもいかがでしょうか。

[2018年5月11日現在、配信中のサービス]
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(文:増當竜也)

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