映画コラム

REGULAR

2019年08月10日

『よこがお』はSNS社会を見つめ直すきっかけにも。筒井真理子の“皮膚感”まで表現した芝居に注目!

『よこがお』はSNS社会を見つめ直すきっかけにも。筒井真理子の“皮膚感”まで表現した芝居に注目!

■橋本淳の「おこがまシネマ」

どうも、橋本淳です。

39回目の更新、今回もよろしくお願いいたします。

多面的で複雑な現実を、ある一面から捉えることを当たり前にするのを気をつけなければと感じます。

昨今では、ネットニュースやSNSの普及でスマホあるいはパソコン上のことが(自分が目にした画面)が、全てだと思い込んでしまいがちだなぁと思う。私もふと我に返り、「いかんいかん」とさまざまな情報に目を通して、客観視をして全容を見なければ、ということがあるのです。

SNSが特にそうで、自分がフォローしている人のみの情報がタイムラインに並んでしまう。自分にとって不都合な情報や、不快なものはフォロー外にし排除していく、すると自分にとってのいい面しか向いていないものしか目にしなくなる。

そうしたことから、上記のような状況になっていってしまうのかなと感じます。フェイクニュースやある視点からだけの情報に惑わされずに、各面からの情報を得て、自分なりの目で見て判断出来るようにしなければなと、思います。

ということを思ったしまったのは、きっと、この映画を観たからです。

今回はこちらの映画をご紹介。

『よこがお』






映画『淵に立つ』で第69回カンヌ国際映画祭"ある視点"部門審査委員賞を受賞し、注目度の高い深田晃司監督の最新作。『淵に立つ』に出演した筒井真理子を主演に迎え、再びタッグを組んだ注目作です。

初めて訪れた美容院で、髪を染めるリサ(筒井真理子)。予約時に指名した美容師の和道(池松壮亮)から、「前にお会いしたことありましたっけ?」と尋ねられるも、リサは初めてだと答える。数日後、朝ゴミ出しをしている和道に声を掛けるリサ。家近いんですね、という会話から、さらには連絡先を聞き出す。リサは偶然を装い声を掛けたのだ。出勤する和道を見送った彼女が戻ったのは、窓から彼の家が見えるボロアパートの一室だった。

リサという名は偽名で、彼女の本当の名は市子。半年ほど前までは、訪問看護師として働いていた。献身的な仕事ぶりと、温厚で真面目で面倒見のいい彼女は、周りからも厚く信頼されていた。訪問先の大石家では、家族みんなと交流があった。特に無職で社会に馴染めない長女の基子(市川実日子)からは一層厚く信頼されており、基子の介護福祉士になる勉強をみたりしていた。そんななか、基子の妹サキ(小川未祐)が行方不明になってしまう。市子と基子とともに喫茶店で勉強し、塾に行き、その帰宅途中に失踪してしまった。そしてサキは無事に保護されるが、未成年者略取の容疑で、ある人物が逮捕させた。その人物との関係から、市子にこの事件への関与が疑われ、マスコミやSNSでねじ曲げられた情報が拡散されてしまう。さらには、予期せぬ裏切りもあり、市子の間違ったイメージが拡大していき、彼女は仕事も今までの人生も奪われ、結婚も予定していたが破談になってしまう、、、

すべてを無くした市子は、リサへと姿をかえた。彼女が心に誓った復讐とは、、、




これから鑑賞する方は知らないほうがいいかもしれませんが、

この作品は、過去・現在・4年後が、並行に語られていく。しかし過去だからと、"現在からの回想ではなく"。あくまで"並行"に。

その見事な構成が、序盤観るものに違和感や想像力や創造力を与えいく。深田監督は「お客さんとの想像力の綱引きだ、と思いながら映画を作っています」と語っていますが、それが見事にハマっています。3つの時間軸を、観客が感覚的な違和感から、その違いに気付いた瞬間ののめり込みの深度がすごいです。(わたしの実感ですが)

良作と言われる作品には印象深いシーンやカットが多い。もちろん、この作品にもそれが沢山あります。

個人的には市子と基子が公園で話しているシーンの基子が後ろからの照明で顔が真っ暗になるカット。(小津安二郎監督の映画『浮草』を参考にしているようです)

さらには、市子と基子がインターホン越しに話すシーンでのやり取り。そして言わずもがななラストシーン。

あのラストシーンの表情を作るために主演の筒井真理子さんは、気持ちや“皮膚感”を出すために、本番前の時間に台本を1ページ目から読んで、市子の気持ちの流れを旅してからシーンに望んだと語っています。(皮膚感までと侮るなかれ、本当に違うから驚きです。素晴らしい!)

そのエピソードを知ってから、思い返すと市子の肌感や纏っているカラーがシーンや時代に、よってまるで違うとこに気づきます。それほど筒井真理子さんと深田晃司監督は繊細に各シーンを紡いでいったことが画面から感じ取れます。

観客としては客観的に見ていながらも、現実に起こりうる恐怖を感じながらの鑑賞。さまざまな感情が観ているうちに渦巻いてくる。

是非、その目で、体験してみてください。

おススメです!

(文:橋本淳)

■このライターの記事をもっと読む

(C)2019「よこがお」製作委員会

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

RANKING

SPONSORD

PICK UP!