「ドラゴンボール 」や「聖闘士星矢」に熱中!フランス人はこんな日本のアニメを見て育った
フランス人からすると、少し大げさかもしれませんが、地図上で日本は「世界の果て」にある国。一昔前であれば、エキゾチックで美しい文化のある国だけれど、同時に理解しがたい国といった風に捉えらていたそうです。しかし、筆者の世代(30代)のフランス人と話してみると、日本を訪れたことがないのに、日本という国に親しみを感じている人が多いことに驚きます。フランスと日本、文化の土台も違うのに、二国間で共有している特別な何かがあるよう。それは何なのか、紐解いていこうとすると、私たち日本人とフランス人には意外な共通点があることに気づきます。
それは日本のアニメを見て育ったこと。20代から40世代のフランス人が子どもだった頃は、アニメといえば日本のアニメが放映されていたのだそうです。それは私たち日本人が想像する以上に、当時フランスの子どもたちは日本のアニメに熱中していました。
フランス人はどのようなアニメを見て育ったのでしょうか。
日本のアニメがフランスで放映された背景とは
まずは、なぜ日本のアニメがフランスで放映されるようになったのか、その背景について見ていきましょう。フランス人歴史研究者で翻訳家のトリスタン・ブルネの『水曜日のアニメが待ち遠しい:フランス人から見た日本サブカルチャーの魅力を解き明かす』という本の中で、以下のように説明しています。
日本のアニメが初めてフランスのテレビで放送されたのが、1972年。「新ジャングル大帝 進めレオ!」が初めてフランスで放映された日本のアニメです。その後、1978年に放送が開始された「UFOロボ グレンダイザー」がかなり高い視聴率を叩き出し、70年代以降、フランスで大量に日本のアニメが放映されるようになったそうです。70年代には「UFOロボ グレンダイザー」や「マジンガーZ」などが、フランスの子どもたちの間で人気となりました。日本のアニメが放映された理由として、日本のアニメを輸入するのは、フランス国内でアニメを製作するより、かなり安価であったからという経済的な側面もあったのだそうです。
1980年代には、日本のアニメはほぼリアルタイムで放映されるほどの人気となりました。88年には「ドラゴンボール」、「うる星やつら」、「Dr.スランプ」、「北斗の拳」など、そして90年には「セーラームーン」や「らんま1/2」等が放送されるようになりました。日本のアニメを放送していたのが「クラブ・ドロテ」という番組で、なんと当時の視聴率は55から60パーセントを記録していたそうです。それほどまでに、日本のアニメはフランスの子どもたちに人気があったのだそうです。
日本のアニメがフランスで人気となった一方で、「日本のアニメは暴力的」、「社会へ悪影響をもたらす」、「日本のアニメはクリオリティが低い」などといった批判が多くおこなわれるようになりました。そうした風潮の中で、検閲で戦闘シーンなどの大幅なカットがされました。例えば、「ドラゴンボール」の戦いのシーンはカットされて放映され、96年には放送中止になりました。90年代以降は、このような風潮の中、日本のアニメは徐々にフランスで放映されなくなっていきました。
次にどのような日本のアニメがフランスで人気があったのか見ていきましょう。
圧倒的に人気、「ドラゴンボール」シリーズ
今回の記事のためにインタビューしたフランス人に圧倒的に人気だった日本のアニメといえば、「ドラゴンボール」。戦闘アニメの中でも、「ドラゴンボール」にはロマンがある!と、興奮気味に話してくれました。特に男性に人気があったようで、夢中になったフランス人は少なくはないようです。
「聖闘士星矢」はフランス人にとっては特別な作品
80年代が幼少期だったフランス人にとって「聖闘士星矢」は特別人気があった作品。ギリシャ神話がモチーフとなっているので、フランス人に受け入れられやすかったと言われています。幼少期「聖闘士星矢」の大ファンだったフランス人映画監督ルイ・レテリエは 映画『タイタンの戦い』を「聖闘士星矢」のオマージュとして制作したほどです。
フランスのアニメにはないスポーツものは人気
スポーツを題材にしたアニメって日本では結構ありますよね。しかし、フランスのアニメでは、スポーツをテーマにした青春もののアニメってあまりないのだそう。「キャプテン翼」、「スラムダンク」、「アタッカーYOU!」などがフランスで放映され、フランスのスポーツファンを惹きつけました。特に「キャプテン翼」は、フランスのサッカー選手のジダンも好きだったアニメとして有名です。また「キャプテン翼」は、繰り返しフランスのテレビでも放映されているので、何世代に渡っても人気の日本のアニメの一つです。
「シティーハンター」はフランスで実写映画化も
「シティーハンター」はフランスで人気のあったアニメの一つ。冴羽獠はフランスではNicky Larson/ニッキー・ラルソンという名前で親しまれ、そのままタイトルとなっています。実はフランスでは、フランス人俳優フィリップ・ラショー主演で、『シティーハンター』が2019年公開予定で実写化されることが発表されました。フィリップ・ラショーは子供の頃好きだったこのアニメを実写化することにすごく興奮していると、インタビューで答えています。さて、どのような映画になるのでしょうか。
女子に人気「美少女戦士セーラームーン」
フランスの20代から40代の女性が子どもだった頃見た日本のアニメで最も人気だったのは「美少女戦士セーラームーン」でした。その他に、「小公女セーラ」や「ベルサイユのばら」、「キャンディ・キャンディ」などが、女子の間で人気があったそうです。
その他人気だった日本のアニメ
フランスではその他に「ガッチャマン」、「機動戦士ガンダム」、「北斗の拳」、「キン肉マン」、「キャッツ・アイ」などが当時人気がありました。
現在放映中の日本のアニメ
70年代から90年代初頭に比べて、日本のアニメがフランスで放映されることは少なくなりましたが、現在でも日本のアニメはいくつか人気があるようです。「ポケモン」、「NARUTO-ナルト-」などが現在のフランスの子どもたちが好きな日本のアニメです。
さいごに
遠いフランスという国で、日本のアニメがこのように人気だったということは、興味深いこと。幼少期に夢中で見ていたアニメの話でフランス人と盛り上がるときは、育った環境も言語も違うのに、不思議と子どもの頃の大切な思い出の一部を共有しているような、そんな気分にさせられるのです。
参考文献
トリスタン・ブルネ(2015)『水曜日のアニメが待ち遠しい:フランス人から見た日本サブカルチャーの魅力を解き明かす』誠文堂新光社
(文:北川菜々子)
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